財宝や超能力よりも大切なものとは?ー芥川龍之介の『杜子春』③
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1月第2作目には芥川龍之介の『杜子春』を取り上げます。
芥川龍之介は数多くの短編小説を書かれています。
芥川作品のなかでも『杜子春』は、『蜘蛛の糸』とともに国語教材として、よく親しまれてきました。
『杜子春』ー人間にとって、財宝や超能力よりも大切なものとは?

『杜子春』は唐代の小説『杜子春伝』をもとに創作した童話です。
芥川龍之介の手腕により、原作の『杜子春伝』と比べて、『杜子春』はより人間味に溢れ、子供の読みやすい教訓話へとアレンジされています。
日本人としてもぜひ知っておきたい、教養ストーリーの一つ。
ぜひご一読ください。
芥川龍之介(1892~1927)
東京府(東京都)生まれ。
東京帝国大学(現東京大学)文学部英文科卒。在学中に短編『鼻』を執筆し、夏目漱石に絶賛される。
大学卒業後、英語教師を経て作家となる。
古典を題材とした短編小説が多い。
三十歳前後から体調を崩しがちになり、三十五歳で睡眠薬自殺。
死後、友人の菊池寛によって芥川賞が設立される。
以降、芥川賞は純文学系の新人作家の登竜門となる。
代表作品:『杜子春』『羅生門』『トロッコ』『河童』など。
【書き出し】
ある春の日暮れです。
唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。
若者は、名は杜子春といって、元は金持の息子でしたが、今は財産を費い尽くして、その日の暮らしにも困るくらい、憐れな身分になっているのです。
【名言】
「何、贅沢に飽きたのじゃありません。人間というものに愛想がつきたのです」
「もしお前が黙っていたら、おれは即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ」
※あらすじのは第1回目・第2回目の記事をご覧ください。
【解説】
芥川龍之といえば、夏目漱石、森鴎外に続く日本の代表的小説家です。
和洋漢の古今にわたる広い教養を持っており、原典となる説話を元に、大衆向けに分かりやすく新解釈した作品も多数発表しています。
『杜子春』のモデルは唐代の小説『杜子春伝』ですが、芥川龍之介の鮮やかな手腕により、児童向けの教訓話としても読めるよう、アレンジされています。
さてさて、『杜子春』のストーリーにより、子供たち(および大人)が学べる教訓・教養の数々を、ご紹介しましょう。
〈成金編〉―人生の教訓
・思わぬ大金、よきせぬ成功には気を付けよ
杜子春は金持ちの息子でしたが、放蕩癖があり、お金を使い果たしてしまったところに仙人に出会います。
不憫に思った仙人が黄金のありかを教えたところで、結局大金持ちになった途端、散財して、元の一文無しに戻ってしまう場面も印象的です。
まるで、宝くじで1億円当たった人が急に散財して、元の木阿弥になってしまうような。
人は身分不相応な富を手に入れると、よほどの自制心がない限り、どうしてもパーッと使いたくなってしまいます。
結果的にすぐに富を失ってしまい、元通りになってしまうものです。
・成功した時だけ寄って来る「にわか友人」は本当の友人ではない
成功した時には、今まで友人でもなかったような人たちが急に寄ってきて、甘い汁を吸おうとしてきます。
その後、放蕩生活により、いつの間にか富がなくなると、にわか友人たちは再び去って行ってしまう。
こんなの、本当の友人じゃないですよね。
杜子春の前半のエピソードから学べる教訓は以下のような感じでしょうか。⇓⇓
・思わぬ大金が入ったり、予期せぬ成功をした場合には、得たお金を全部使ってしまおうとせず、自分の身の丈に合った範囲で、計画的に富を使用していくことが大切である。
・急に成功した際に寄って来るにわか友人を信用するべからず。
〈仙人修行編〉―人生の教養
・明かされる「仙人の世界」や「地獄の世界」
杜子春をお金持ちにさせた老人は、実は峨眉山に住む鉄冠子という名の仙人であることが明かされます。
仙人といえば、修行を重ねることで超能力を体得する伝説的存在。
杜子春にも仙人への憧れがあり、弟子入りして仙人修行することを欲します。
ただ、仙人になるには、一定の精神修行の期間が必要だと言われています。
また、杜子春は仙人修行の一環で命を落とした結果、地獄へも旅し、畜生道や地獄の鬼・閻魔大王などの伝説的な存在とも対峙していきます。
・お題をクリア(修行)しないと仙人になれない
仙人は「これから多くの魔性をお前を惑わせるが、決して声を出してはいけない。一言でも口を利けば、仙人にはなれない」と念押して、修行がスタート。
虎や白蛇に襲われた時も、
大嵐や火柱が落ちても、
新将に突き殺されても、
閻魔大王の前であらゆる地獄の責め苦にあっても、
「仙人になるため」と固く決意した杜子春は、言葉を発しません。
このように、
・大きな称号を得るために、主人公がお題を解決する。
・ゴールに至るまでに、様々な試練に遭う。
というストーリーは、読者も感情移入しながら、つい応援してしまうハラハラ・ドキドキなストーリー。
古今東西さまざまな物語でよく使われてきた王道ストーリーでもあります。
○仙人修行編の教訓―財宝よりも超能力獲得よりも大切なものとは?
どんな艱難辛苦に見舞われても、約束した通り、「一言も言葉を発さない」を貫く杜子春。
しかし、畜生道に堕ちた両親の姿を見たとき、心がゆらぎます。
たとえ動物に変わってしまっても、大切な両親に変わりはありません。
鬼たちにムチ打たれても、「自分はどうなってもいいから、子供には幸せになってほしい」と願う親の気持ち。
そんな真っ直ぐな愛を感じられたなら、「お母さん!」と声をあげて、仙人修行のための約束を放棄してしまうのも納得です。
むしろ、「お母さん」を無視して黙っているような感覚の持ち主だったら、仙人修行はおろか、命さ絵も断ってしまおうと考えていたというから、恐ろしい――!
このようなエピソードから、
財宝や超能力よりも大切なものは……
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