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ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』ー信ずるもののために戦う③

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今月は、アメリカのノーベル文学賞受賞者、ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』を取り上げます。

1930年代後半に起きたスペイン内戦に、自身が参入した経験をもとに書き上げた作品です。

戦争をテーマとしたヘミングウェイ作品のなかでも、主人公が愛する国の自由のために命を懸ける、誇り高い作品です。



『誰がために鐘は鳴る』―信ずるもののために戦うことの尊厳を書いた長編大作


アーネスト・ヘミングウェイ(1899~1961)

20世紀のアメリカを代表する小説家。
高校卒業後、地方新聞の記者となり、力強い文体と現場主義の基礎を習得する。
第一次世界大戦に赤十字要員として従軍。
戦後、フリー記者時代に小説を書き始める。
スペイン内戦と第二次世界大戦に従軍記者として参加。
1954年、ノーベル文学賞を受賞。
晩年は航空機事故の後遺症による躁うつ病に苦しみ、猟銃による自殺。


【書き出し】


彼は褐色の松葉の散りしいた林のなかで、組み合わせた腕に顎をのせて腹ばいになっていた。

頭上の高い松の梢を風が吹きわたっていた。

〈――大久保康雄 訳『誰がために鐘は鳴る(上)』(新潮文庫)より〉



※あらすじの前編・後編はこちらです⇓⇓



【解説】

・『誰がために鐘は鳴る』の題名に込められた意味


『誰がために鐘は鳴る』の題名は、イギリスの詩人・神学者ジョン・ダンの説教の一節、

「ゆえに問うなかれ、誰がために鐘は鳴るやと そは汝がために鳴るなれば」

に由来しています。

個人は人類の一部であり、他の人の弔鐘(死者を悼んで打ち鳴らす鐘)はあなたのためにも鳴っているのだ
という意味です。

スペイン内戦で戦い、誇り高く散っていった者への弔いと慰め、そして祈りが込められているのだと思います。



・スペイン内戦下でのわずか4日間の戦いと恋が、900ページ超えの大作に!

主人公のロバート・ジョーダンは、アメリカ人の身ながら、愛する国スペインの内戦に、共和政府軍の義勇兵として参加します。

物語はロバートの任されたミッションである「鉄橋の爆破」に至るまでと、作戦決行のために合流した現地のゲリラ隊で出会ったマリアとの恋を中心に描かれます。

実は、作品内で描かれるのは、ロバートが敵の進軍を防ぐために鉄橋を爆破するまでのわずか四日間。

それを、日本語訳で九百ページ超(文庫本二巻分)の小説に仕上げたヘミングウェイの手腕に驚かされます。



・ロバート死すとも愛と自由は死せず?

たとえ自分の死が無駄になろうとも、愛する国の「自由」を守るため、命懸けの作戦を遂行するロバート。

その結果、任務は成功するも、自身は重傷を負ってしまいます。

もはや死は逃れられないと悟ったロバートは、最愛の人マリアにこう語りかけます。

二人のうち一人がいるかぎり、二人は一緒にいるんだ

彼女を逃がしたロバートは戦地に残り、敵の進軍を食い止めるべく、最後まで戦い抜く道を選びます。



・愛する者を守り、信念を貫くために戦う……戦士の死生観

死に直面したロバートの心境は晴れやかで、マリアを生きて逃がすことができたことを喜び、

「この世界は美しく、そのために戦うに値するものだ」

と自分に語りかけます。

死を悲しむのではなく、むしろ愛するもの、信ずるもののために命を懸けたことに誇りを持ち、討ち死にしていくのです。

戦争はもちろん最悪の事態です。

しかし、行動派の作家として豊富な戦争体験を持つヘミングウェイは、次のような言葉を遺しています。

ひとたび戦争を始めたら、せねばならないことが一つだけある。勝たねばならないのだ。敗北は、戦争で起こりうるどんなことにも増して最悪の事態をもたらすからだ



・最後の場面は世界的スケールの傑作

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