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第31回 日本緩和医療学会学術大会 「こえをきき、ともにつくる」参加記

 「第31回 日本緩和医療学会学術大会」が、2026年6月19日〜20日に博多で開催されました。今回、私はプログラム委員のひとりとして企画段階から関わらせてもらい、ほとんどお役に立てないながらもちょっとだけアイデアを出させてもらったりしていました。
 そして当日は2日間ともフル参加してきたのですが、これが本当にとんでもなくオススメしたい内容だったので、noteで参加記を書くことにしました。 
 少し長くなりますが、皆さまと共有させてください。

※ この学会大会は8月31日までオンデマンド配信されており、プログラムの大半が今からでも視聴可能です。
学会の会員ではない方でも視聴できますので、ぜひ
こちらから登録の上でご覧ください。(ちょっと高いですが価値はあると思います!)

緩和医療学会の大会長が小児科医?


 今回の大会がとても画期的だったのは、私も仲良くしてもらっている余谷暢之先生が、学会史上初めて小児科医として大会長を務められたこと。
 「緩和医療」という言葉自体、どちらかというと成人・高齢者のがんの緩和ケアのイメージが強いもので、実際にその分野を中心として発展してきた歴史があります。しかし近年、がん以外の病気の方への緩和ケアの必要性に理解が深まり、さらには少数集団である子どもや思春期・若年成人などのがんの緩和ケア、あるいは難病や身体障害などに起因する症状への緩和ケア、言葉でコミュニケーションを取ることが難しい知的発達症のある方への緩和ケア・・などにも注目され始めるようになってきました。
 一方で、小児科医療では命に関わる病を抱える子どもや、さまざまな苦痛を日常的に感じている子どもたちに向き合いながらも、子どもの症状緩和というアプローチはそれほど注目されてきませんでした。しかし、小児がん患者への緩和ケアの重要性が広く啓発されてきたことや、増える重症心身障害児者や医療的ケア児者への対応に普段からの症状緩和が大切であることなどから、近年ちょっとずつ「緩和医療」への関心を向ける小児科領域の専門職も増えてきています。

 そんな時代に、小児科専門医で緩和医療専門医でもある余谷先生が大会長を務められ、2日間ぶっ通しで1つの会場を小児関連の企画で埋めるという、とんでもないチャレンジングなプログラムを組みました。
 そして、会場の進行係は子どもが務め、アナウンスのたびごとに会場に拍手が沸くという、これまでにない温かい雰囲気の中で、緩和医療畑の方と小児科畑の方が一緒になって議論を展開していきました。
 2日間の会場には、メインテーマである「こえをきき、ともにつくる」という余谷先生の言葉が、やさしく、しかし力強く浸透していたように感じます。

なんぴろオススメセッション

① 基調講演「身寄りのない人の医療の現状と意思決定」
  (国立成育医療センター・山縣然大朗先生)

 何をおいてもこれをまず聴いてほしい!!
 少子高齢化の進む今、緩和ケアに限らず様々な医療の場面で身寄りのない方へ対応する機会が増えてきています。そしてこれは成人領域の医療現場にとどまらず、重症心身障害児者や医療的ケア児者に関わりを持つ小児科領域においても、成人期に保護者亡き後の彼らをどのように支えるかという議論から目を背けるわけにはいきません
 講演の中では成年後見制度に関しても非常に整理されており、私自身が全く理解できていなかったことも思い知りました・・。
 私自身、独居の高齢者の方や、親亡き後の重症心身障害児者の在宅医療に携わる中で、意思決定支援の課題は非常に大きいものであることを痛感しています。そしてこれまでは主に医療と介護の領域でこの課題を議論してこられましたが、今後は福祉現場でより深刻な問題になっていくと予想していています。
 この基調講演は、幅広い職種の多くの方にぜひ一度聴いていただきたく、またその中で紹介されたガイドライン事例集は、もっと周知していく必要があると感じました。

② シンポジウム11 AYA世代、特に10代20代の患者とのかかわりについて考える

 このシンポジウムには、いつもお世話になっている岸和田市の出水クリニック院長・出水明先生をはじめ、看護師、MSWの3名の方が登壇されました。
 出水先生が紹介された3症例は、それぞれに特徴的な背景を持ち、異なる経過に伴走された患者さんで、子どもと大人の間の微妙な年代を揺れ動く患者さんとご家族への関わりの難しさを、とても示唆深く伝えてくれるものでした。AYA世代は十数年であっても、それぞれの人生中で考えや感性を培っていて、年齢という区切りでシンプルに切り分けることなく、ともに考え続けることの大切さを、改めて学ばせていただきました。

 2番目の演者・京都府立医科大学附属病院看護部の竹之内直子氏からは、AYA世代の患者さんとの対話についてのお話がありました。成人として一人前になるのに時間がかかるようになってきた時代の変遷に伴い、青年期から成人期への移行期である20代を含めた時期を「成人形成期」とする考え方の紹介があり、これは「AYA世代」というまとめ方をする現状と一致しているようでした。この時期にある患者さんとのコミュニケーションでは、深刻なことを深刻と捉えているように見えなかったり、本心はどうなのか分かりづらいというような、支援者としての関わりの難しさを感じることが多くありますが、必要なときに必要とされることをできるよう、適切な距離感を意識する他職種チームでのアプローチの大切さを、事例を通じて紹介されました。

 最後の演者・国立がん研究センター東病院MSWの坂本はと恵氏は、AYA世代の患者さんとご家族の生活支援についてお話しされました。サポーティブケアセンターでの相談内容として仕事や経済的なことに関するものが多いこと、治療終了から約5年ほど経過した患者さんでも長く続く身体の辛さなどで就労継続が難しかったり、就労できていても他者との比較やキャリアを中断せざるを得なくなったりすることから、情緒面のQOL低下は特にAYA世代で顕著であること、などのお話がありました。

 総合討論では、小児科領域、成人診療領域の両者から幅広い質問や意見があり、こういうコラボでディスカッションできる場ができたことは、今回の学会の大きな成果だったと思います。これもオンデマンド配信で余すところなく聴けますのでぜひ!!

③パネルディスカッション12 重症心身障害児者と緩和ケア

 そして最後にご紹介するのが、私自身が座長兼演者を務めさせていただいたパネルディスカッションです。・・と言いつつ、私の立ち位置はほとんど演者側に振ってしまったため、共同座長の聖隷三方原病院緩和支持治療科・森雅紀先生には多大なご負担をかけてしまいました・・。
 3人の演者のうち、私はトップバッターとして、在宅医療の現場でこれまで経験してきた重症心身障害児者の緩和ケアニーズ、在宅看取りの実際、そして近年増えているグループホームの現状と、そこで緩和ケアを行う上での制度的な課題、など総論的な話題についてお話しさせていただきました。
 2番目の演者・旭川荘療育・医療センター看護師の仁宮真紀氏からは、重症心身障害児者の生活が常に何らかの症状と隣り合わせであること、症状の訴えが言語的に困難であること、そして症状を読み取ろうという姿勢をもとにした寄り添いや看護のあり方そのものがまさに緩和ケアと呼ばれるにふさわしい取り組みであること、など広く看護師の視点からのお話がありました。
 3番目の演者は、多摩南部地域病院緩和ケア科で成人の緩和ケア医として勤務しつつ、近隣の重症心身障害児者施設の緩和ケアに携わっているという異色の経験を持つ、奥山隆二先生でした。言語による意思表示が困難な方が癌に罹患するケースの増加や、保護者の高齢化といった背景のもと、倫理的な課題の検討も含めた重症心身障害児者施設での定期的な緩和ケアカンファレンスの取り組みと、そこから見えてくる現在から未来に向けた課題を整理してくださいました。
 このセッションも、総合討論では多くの質問やご意見をいただくことができ、終了後も座長・演者が出席者の方に質問攻めに合うという、とても嬉しい盛り上がりを見せました。重症心身障害児者というと、成人領域でも小児科領域でも患者全体の中では少数派になってしまいますが、時代の変化とともに誰しも彼らの診療に関わる可能性が高まっています。さまざまな課題があり、まだ未開の分野に近いかもしれないこの領域について、現在地の確認を行えたこと、また悩みつつも関心を向ける方が増えているのを知れたことで、今回企画して本当に良かったなと思いました。

・・まだまだ他にもいっぱいセッションがあります。
ぜひ皆さん、オンデマンド配信をご覧くださいね!!

https://www.jspm31.org/ondemando.html


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なんぴろ〜(医)輝優会かがやきクリニック 院長 南條浩輝〜【在宅医療・小児在宅医療】 最後まで読んでいただきありがとうございます! これらの記事は啓発目的に無料で公開を継続していますが、作成には結構時間がかかります(汗) もし応援いただける方がいましたら本当に嬉しいです。