【逸話0.5 】Little Town LEGACY #1 【少年の心を失う】
高校を卒業し、私は就職しました。
今思えば、かなり大きな会社でした。
当時の私には、その価値がまったく分かっていませんでした。
結局、入社して半年で退職します。
半年で何が分かるんだ。
今なら、会社側の立場も分かります。
そして、あの頃の若かった自分の気持ちも分かります。
でも、あの頃の私は違いました。
ただ遊びたかった。
それだけでした。
子どもの頃から、わが家には一つの当たり前がありました。
休みの日は、親父の仕事を手伝うこと。
中学生になる頃には、それが当たり前になっていました。
夏休み。
冬休み。
みんなが遊んでいる長期休みも、私には仕事がありました。
今思えば、それだけ仕事が途切れなかったということです。
本当にありがたいことだったのだと思います。
もちろん、お手伝いのお小遣いももらっていました。
……驚くくらい少なかったですが(笑)。
当時は、
「こんなに働いたのに、これだけ?」
そう思っていました。
でも今なら分かります。
今思えば、親父は意図的に、お金を稼ぐ大変さと、お金の価値を教えてくれていたのでしょう。
その頃の私は、そんな親父の思いにも気づきませんでした。
むしろ反発していました。
「もう仕事なんてしたくない。」
「遊びたい。」
そんな気持ちが、高校を卒業した頃、一気に爆発したのかもしれません。
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高校時代も、よく遊びました。
朝帰りは当たり前。
学校へは寝に行くような毎日。
そして夜になると、また遊びに出かける。
就職してからも、その生活は変わりませんでした。
でも、仕事は学校とは違います。
当然、そんな生活が通用するはずもありません。
今思えば、本当に会社には迷惑をかけてしまいました。
あの頃の会社には、申し訳なかったと思っています。
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会社を辞めてからの私は、
さらに何もしなくなりました。
今で言うなら、
ニート。
フリーターですらありません。
朝まで遊び、
昼過ぎまで寝て、
夕方に起き、
夜になると街を徘徊する。
毎日が、その繰り返しでした。
今思い返しても、
かなり痛い青年だったと思います。
ただ一つだけ。
神に誓って言えることがあります。
人を傷つけるようなことだけは、一度もしていません。
そこだけは、自分の中で最後まで守っていました。
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私が若かった頃は、
まだ「不良」と呼ばれる人たちも珍しくない時代でした。
でも、私は少し違いました。
誰かとケンカをしたいわけでもない。
悪さをしたいわけでもない。
いや、少しは悪いこともしてたかもしれません。
ただ、何となく毎日を過ごしていました。
夢もなく。
目標もなく。
時間だけが流れていく。
そんな毎日でした。
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今だから思います。
あの頃、失っていたのは時間ではありませんでした。
子どもの頃、
父の現場で夢中になっていた自分。
材料の切れ端で物を作ることが楽しかった自分。
「同じ人間がやっているなら、自分にもできないことはない。」
父の言葉を、素直に信じていた自分。
その頃の私は、
いつの間にか、その”少年の心”をどこかへ置いてきてしまっていました。
だから、この話のタイトルを
「少年の心を失う」
にしました。
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でも、人生は不思議なものです。
遠回りした時間があったからこそ、
これから出会う人の言葉が、心に深く刺さりました。
普通は、道を外さなくても気づける人がたくさんいるのだと思います。
私は、きっと経験しないと分からない人間だったのでしょう。
遠回りばかりしてきました。
でも今は、その遠回りにも意味があったと思っています。
この頃の私は、まだ知りませんでした。
自宅から車で五十分ほど離れた、小さな板金工場で待っていた出会いが、
この先の人生を大きく変えることになるなんて。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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次回
逸話1 宿る職人の魂(運命の出会い・転機)
あの日、私は一人の職人と再会する。
その出会いが、
止まっていた私の人生を、静かに動かし始めました。

