【逸話1 】Little Town LEGACY #2【宿す職人の魂】
逸話1 宿す職人の魂(運命の出会い・転機)
私がいつものように夜中をプラプラしていた頃の話です。
無職ではなく、今でいうフリーター。
……いや、そんな立派なものではありませんでした。
その日暮らしのお金を稼いでは、その日の夜には一文なし。
そんな生活を送っていた頃の物語です。
今では、こういう働き方も少なくなりましたが、当時は普通にありました。
友達が、会社が倒産して次の就職先までの繋ぎとして見つけてきた登録型の仕事でした。
私は無職でプラプラしていたので声をかけてくれました。
もちろん友達は二か月後、大きな会社へ就職していきました。
私は、そのままのらりくらり。
働いたその日に給料がもらえる仕組みだったので、夜には全部使い、朝には財布の中は空っぽ。
そんな毎日を繰り返していました。
その仕事の良かったところは、毎日働く場所も、仕事内容も違うことでした。
たまに四日連続で同じ現場になることもありましたが、今でいう派遣とは少し違います。
前日に電話があり、
明日向かう場所。
仕事内容。
働く時間。
そして日当。
それを聞いて、自分が嫌なら断ることもできました。
不思議と私は、一度も断ったことがありません。
自分で言うのもなんですが、人より状況判断や適応能力、手先だけは器用だったので、どこの現場へ行っても困ることはありませんでした。
仕事内容も、その日に覚えられる程度のものが多く、難しいと感じた記憶もあまりありません。
ただ一つだけ。
派遣先で使い物にならないと判断されると、その現場から次は呼ばれません。
実際、登録していても電話が鳴らない人もいました。
あっても、皆が嫌がるような過酷な現場ばかりでした。
逆に私は、派遣先で
「うちで社員として働かないか。」
そう声を掛けていただくことが何度もありました。
今思えば、本当に恐れ多いことです。
でも当時の私は、その言葉の重みなんて何も分かっていませんでした。
そんな日々を過ごしていた、ある日のことです。
仕事を終え、いつものように遊びへ向かっていました。
遊びに行くことしか頭になかった私は、ふとよそ見をしてしまいます。
気が付いた時には、前の車は止まっていました。
ドン。
追突です。
完全に私が悪い事故でした。
それなのに、謝ることもできませんでした。
「こんなところで急に止まるなよ。」
そんな自己中心的なことを考えていた自分を、今でも思い出します。
車は何とか走れる状態でした。
私は親父に電話をしました。
修理できるところはないかと聞くと、
「昔からの知り合いがおる。」
そう言って、一軒の小さな板金工場を教えてくれました。
住所を片手に、自宅から五十分ほどの修理工場へ向かいました。
正確に言えば、その工場へ行くのは初めてではありません。
小さい頃、親父に連れられて何度か遊びに行ったことがありました。
でも覚えているのは、工場で飼われていたワンちゃんと遊んだ記憶だけ。
そこで待っていたのが、
私の師匠となる人。
板金塗装職人、
ヤッさんでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回
逸話1 後編 宿す職人の魂(運命の出会い・転機)
あの日の一言は、
今でも忘れることができません。

