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【逸話1.5 】 Little Town LEGACY #4昭和の職人、最初の一喝

逸話1.5  昭和の職人、最初の一喝(修業編)

最初は弟子がお馴染みの掃除からスタート

お母さんに掃除を習いました。

何ら変わりない清掃でした。

それからヤッさんの手元で

色々な工具を

取っては渡し、取っては渡し

ちゃんと見習いらしい作業をしました。

一ヶ月が過ぎた頃、昼食中に

ヤッさんが

「ご飯少な過ぎだろ」と

「朝飯食ってきたのか?」と

体が細すぎだの

色々、話しをしました。

ヤッさんが明日来たら

これを朝から振れっと

大ハンマーを渡してきました。

かなり重たかったのを覚えています。

それと今からパテをやる

そう言って、

工場のゴミ置き場から、

交換して捨てられるはずだった車のバンパーを持ってきました。

バンパーの汚れを掃除して

ヒートガンで温め、裏から凹みを

押し戻し、手で触る、

それをただただ繰り返して

水研ぎ

その後、パテを練り、

バンパーに塗る、時間を置き乾かす

そして削る、そして手で触る、

また削る、手で触る

それを繰り返す。

俺は、ただひたすら作業を見つめる。

作業が終わり、ヤッさんは

「明日から朝、ハンマーを振れ。」

「その後、パテだ。」

そう言うと、

何事もなかったように、

お客さんの板金修理へ戻っていきました。

俺は次の日、

言われたとおり、

朝からハンマーを振り続けた。

自分にはかなり重く、

苦痛な作業だった。

「これ、本当に意味あるのか?」

当時の俺は、

正直そう思っていた。

武士が中庭で、

木刀を振り続ける。

そんな光景を思い浮かべるような毎日だった。

その素振りが終わると、

事故で交換され、捨てられるはずだったバンパーを、

ヤッさんがゴミ置き場から持ってくる。

昨日、

ヤッさんがやっていたように、

俺も作業を進める。

その都度、

ヤッさんに見せに行く。

「もう一度。」

その一言が返ってくる。

俺には、

できるはずもなかった。

またやり直す。

見せに行く。

「もう一度。」

それを何度も繰り返した。

最後は、

ヤッさんが手を入れながら、

「触ってみろ。」

とだけ言った。

俺は言われるまま、

バンパーに手を当てた。

それからようやく、

パテを塗る。

削る。

見せる。

ヤッさんが手を加える。

また塗る。

また削る。

ひたすら、

それの繰り返しだった。

気づけば外は暗くなり、

夕方を過ぎていました。

慣れない作業で、

家へ帰ればすぐ眠る。

遊びに行く余裕もありませんでした。

朝はハンマー。

昼はヤッさんの手元。

空いた時間は、捨てられたバンパー。

そんな毎日が、

半年ほど続きました。

ある日。

いつものように、

ヤッさんがバンパーを持ってくる。

俺は、

いつものように作業へ入る。

いつものように、

工程を繰り返す。

そして夕方。

いつものように、

仕上げたバンパーを、

ヤッさんのところへ持って行った。

ヤッさんは、

バンパーを手で触り、

俺の方を見て言った。

「お前、何やってるんだ!」

工場に響く怒鳴り声。

それから、

少しトーンを落として、

「今まで何を見てきた。」

「お前は父親と違って不器用だ。」

「お前の父親なら、

もう、とっくに心得てるぞ。」

……

その言葉が、

胸に突き刺さった。

しばらく沈黙が流れたあと、

ヤッさんは、

「今日はもう上がっていい。」

そう言った。

俺は何も喋らず、

帰路に就いた。

俺は喋れなかったのか。

喋らなかったのか。

自分ができない怒り。

親父と比べられた悔しさ。

頭の中は、

そのことでいっぱいだった。

人と比べられたことが、

悔しかったわけじゃない。

親父と比べられたことが、

一番こたえた。

今でもそうだが、

この世界で尊敬し、

憧れているのは、

自分の父親だ。

今だから断言できる。

あの頃の私は、

父親を尊敬しながら、

心のどこかで、

ライバル視していた。

ただ、

自分ができないことが、

悔しかった。

その気持ちだけは、

今でも鮮明に覚えている。

まだ遊びに、

車に夢中だった

二十歳になる少し前。

秋の日だった。

その日。

俺は、


左手を無くした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回

逸話1.5後編 はじめて死を予感した日

あの日、俺は生まれてはじめて、

死を意識した。

それは、一瞬で、すべてを変えた。

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