【実録】Little Town LEGACY #11 バスルームディスコを占拠した「ミズアカ・ダンシング」と、黒カビDJ最後のフィーバーナイト
そのバスルームでは、
今宵もパーティーが開かれていた。
LIVEバスで駆けつけ。
毎日ゲリラ開催。
勝手に集まり、
勝手に盛り上がり、
勝手に居座る迷惑な連中。
その中心にいたのが――
ミズアカ・ダンシング。
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蛇口の周りを拠点にする伝説のダンサーである。
白く輝く衣装をまとい、
浴室中をキラキラに見せる……
わけではない。
実際には、
輝きを奪い、
くすませ、
住人を困らせる迷惑な存在だった。
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そしてステージ中央には、
もう一人の主役がいた。
黒カビDJ。
浴室の隅に巨大なDJブースを築き、
湿気をエネルギーに音楽を流し続ける。
ズン…
ズンズン…
ズン…
その重低音に合わせ、
ミズアカ・ダンシングは踊る。
床で踊る。
壁で踊る。
鏡の前で踊る。
蛇口の上で回転する。
年月をかけて巨大なブースと化した結果、
浴室は完全にディスコ会場へと変貌していた。
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住人も抵抗した。
洗剤を使った。
ブラシを使った。
スポンジで挑んだ。
しかし、
ミズアカ・ダンシングは踊り続ける。
黒カビDJは曲を止めない。
「まだまだフィーバータイムだ!」
そんな声が聞こえてきそうな状態だった。
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そこで出動したのが、
ブレイキンは踊れないが、
風を切りながら駆けつけた、
なんでも屋プリンス。
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浴室の扉の前。
小さな黒カビの門番が、
まるで黒服のように立ちはだかる。
私は足を止めた。
「Where your big homie at?!」
門番は固まる。
その奥から、
ズン……
ズンズン……
ズン……
黒カビDJの重低音が響き始めた。
今夜が、
最後のフィーバーナイトになる。
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その時だった。
ステージ中央にスポットライトが落ちる。
マイクを握ったMCが叫ぶ。
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「今夜も始まるぜぇぇぇ!!」
「バスルームディスコ・ゲリラナイト!!」
観衆のボルテージは一気に最高潮へ。
「Put your hands up!!」
「Put your hands up!!」
⸻
「青コーナー!!」
「蛇口を拠点に舞い続ける伝説のダンサー!!」
「ミズアカ・ダンシングーーー!!」
ミズアカ・ダンシングが床を滑る。
壁を蹴る。
鏡の前でスピンを決める。
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黒カビDJがレコードを回す。
ズン……
ズンズン……
ズン……
⸻
MCはさらに叫ぶ。
「もっと声出せぇぇぇ!!」
「まだまだこんなもんじゃねぇだろぉぉ!!」
「Put your hands up!!」
「Put your hands up!!」
観衆のボルテージは最高潮。
その瞬間だった。
浴室の扉が静かに開く。
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ギィ……
⸻
会場の空気が変わる。
DJの手が止まる。
ミズアカ・ダンシングの足も止まる。
MCだけが小さくつぶやいた。
「……おい。」
「まさか。」
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静寂。
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MCは再びマイクを握る。
深く息を吸い込む。
会場中が静まり返る。
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「……乱入者だぁぁぁ!!」
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どよめく観衆。
黒カビDJが息をのむ。
ミズアカ・ダンシングの動きが止まる。
誰も口を開かない。
聞こえるのは、
蛇口から落ちる一滴の水だけ。
ポタ……
ポタ……
⸻
MCはゆっくりマイクを口元へ運ぶ。
一拍。
会場中の視線が、
赤コーナーへ集まる。
そして叫ぶ。
「赤コーナーーー!!」
「職人の匠の魂を武器に!!」
「現場を渡り歩くフィクサー!!」
「依頼があればどこへでも現れる!!」
「なんでも屋プリンスーーーー!!!」
⸻
歓声ではなく、
静まり返る浴室。
誰もが悟った。
今夜のフィーバーは、
ここで終わる。
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まず狙うのはDJブース。
黒カビDJの本拠地だ。
専用洗浄を行う。
少しずつ。
丁寧に。
確実に。
すると、
黒いブースが崩れ始める。
「な、なにぃ!?」
黒カビDJ動揺。
「騒ぐな。」
「近所迷惑だ。」
音楽が止まり始める。
ズン…
ズ…
……
静寂。
DJブース陥落。
⸻
続いてミズアカ・ダンシング。
頼みの音楽を失いながらも、
最後まで踊ろうとする。
しかし職人の技は止まらない。
長年積み上げた白い衣装が剥がれ落ちる。
床のダンスフロアが消える。
鏡のミラーボウルが閉鎖される。
蛇口の特設会場も解体される。
そしてついに――
フィーバー終了。
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浴室に残ったのは、
本来の姿を取り戻した空間だった。
蛇口は輝き、
床は清潔感を取り戻し、
鏡ははっきりと景色を映している。
黒カビDJはいない。
ミズアカ・ダンシングもいない。
静かな浴室。
それこそが、
住人がずっと望んでいた日常だった。
こうして、
とある住宅で開催されていた
史上最も迷惑なディスコイベントは幕を閉じた。
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でも私は知っている。
奴らは完全には滅びない。
湿気と油断があれば、
どこにでも現れる。
遠くから聞こえる。
I'll be back.
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そして今夜も、
どこかの浴室で、
黒カビDJがレコードを回し、
ミズアカ・ダンシングが踊っているのかもしれない。
That's when—
Prince, the ultimate fixer, gets to work.
私たちの仕事は、
お風呂を洗うことだけじゃない。
暮らしの中に潜む、
「病みを」
一つずつ取り除いていくこと。
それが、
なんでも屋プリンスの仕事だ。
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次の討伐依頼を待ちながら、
今日も私は、
モンスター図鑑を更新している。
今回の討伐対象。
ミズアカ・ダンシング。
黒カビDJ。
討伐完了。
モンスター図鑑 No.002 更新。
だが――
次の依頼は、
もう始まっている。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


