自己紹介【逸話0 】Little Town LEGACY #0【現場が遊び場だった少年は、なぜ「なんでも屋」になったのか。】
この作品について
『Little Town LEGACY』は、一人の職人の人生を描く連作短編です。
「逸話」は過去、「実録」は現在を描いています。時系列は前後しますが、それぞれの出来事がやがて一本の物語へとつながっていきます。
⸻
あらすじ
現場で遊ぶことが、少年にとっては当たり前の日常でした。
父の背中を追いかけながら職人の世界に触れ、道具の音や仕事への向き合い方を自然と見て育ちます。
板金塗装職人だった父の背中から仕事への姿勢を学び、父の師匠からは一切の妥協を許さない職人としての心構えを教わりました。さらに一人の経営者との出会いが、技術だけでは語れない責任や信頼、仕事の本当の意味を知る大きな転機となります。
順風満帆だったわけではありません。遠回りをし、失敗を重ね、多くの人に支えられながら、一歩ずつ今の自分へと歩んできました。
現在も自分自身を「完成した職人」ではなく、「学び続ける見習い」だと考えています。
そうした経験の先で生まれたのが、「なんでも屋プリンス」というスタイルです。それは何でも引き受けるという意味ではなく、困っている人の前で簡単に諦めず、これまで培ってきた技術や経験、人とのつながりを生かしながら、一つひとつの問題に向き合っていくという考え方です。
この物語には、ミズアカ・ダンシングや黒カビDJなど、少し変わったキャラクターたちも登場します。しかし、そのモデルはすべて実際の施工現場で向き合ってきた出来事です。住まいに刻まれた時間や思い出、人と人とのつながりを大切にしながら、現実と少しの想像を織り交ぜて描いていきます。
⸻
「なんでも屋って、何をする人なんですか?」
この質問を、私は何度もいただいてきました。
家の修理?
庭の手入れ?
車のドレスアップ?
調査依頼?
リフォーム?
どれも正解です。
でも、どれも正解ではありません。
私は、**「なんでも屋プリンス」**です。
この名前には、私が歩んできた人生そのものが詰まっています。
⸻
現場が、私の遊び場でした。
私の父は、もともと板金塗装職人でした。
その後、リフォームの世界へ進み、
大工。
サイディング。
エクステリア。
建具工。
塗装。
住まいに関わるさまざまな技術を身につけながら、現場で生きてきた職人です。
そんな父のもとで育った私にとって、現場は特別な場所ではありませんでした。
3歳頃には足場がアスレチック。
小学生になる頃には、工具に触れ、材料の切れ端で物を作って遊んでいました。
今なら驚かれるような環境かもしれません。
でも、当時の私にとっては、それが日常でした。
休日に公園へ行ったり、キャッチボールをしたり…。
そんな「よくある父と子」の思い出は、あまりありません。
その代わり、父の背中を見て育ちました。
父は多くを語る人ではありませんでした。
でも、一つだけ今でも忘れられない言葉があります。
「同じ人間がやってるなら、自分にもできないことはない。」
子どもの頃は、その意味がよく分かりませんでした。
でも、現場を重ねるたびに、その言葉は少しずつ私の中で大きくなっていきました。
⸻
もう一人の師匠。
父には師匠がいました。
そして、その方は私にとっても大切な師匠です。
板金塗装一筋で生きてきた、まさに昭和気質の職人。
父とは正反対のタイプでした。
仕事への向き合い方。
道具を大切にすること。
妥協しないこと。
職人としての覚悟。
厳しさの中にある優しさ。
その背中から、技術以上に大切なことを教えていただきました。
……正直に言うと、かなり怒られました。
今なら、
「それは時代的にアウトですよ(笑)」
と言われるようなこともあったと思います。
でも、不思議と恨んだことは一度もありません。
あの厳しさがあったからこそ、
今でも仕事をごまかしたくない自分がいます。
⸻
私の人生を変えてくれた、もう一人の恩人。
現場で技術を学んだ私に、まったく違う世界を見せてくださった方がいます。
一人の経営者です。
その方は、私を単なる働き手としてではなく、一人の責任者として育ててくださいました。
会社の中に、それぞれが責任を持って動く、小さな会社のような組織。
そんな環境で仕事を任せていただきました。
「現場だけ見ていても、本当の世界は見えない。」
人が動く理由。
お金の流れ。
信頼の積み重ね。
仕事の裏側。
それまで見えていた世界が、少しずつ違って見えるようになりました。
「この世界って、そういう仕組みだったのか。」
そんなことを何度も考えるようになりました。
それまで見えていた景色が、大きく変わりました。
⸻
人生そのものが師匠でした。
私は、多くの人に育てていただきました。
父。
師匠。
経営者。
そして、お客様や人生の先輩方。
私には、一つの考えがあります。
人生では、年齢は関係ありません。
年下の方でも、その人から学ぶことがあれば、その人は私の先輩です。
そして、職人の技術も、年数だけでは測れないと思っています。
「職人歴20年」という言葉を耳にすることがあります。
もちろん、長く続けることは簡単ではありません。
でも、技術は、ただ月日が流れただけでは身につきません。
どれだけ現場と向き合ったか。
どれだけ考え、失敗し、工夫し、学び続けてきたか。
技術は、時間が育てるものではありません。
本気で向き合った時間が、少しずつ育ててくれるものだと、私は教わってきました。
でも、私は真っすぐここまで来たわけではありません。
回り道もしました。
それでも、その時間があったからこそ、今こうして父や師匠の言葉の意味が少しずつ分かるようになりました。
うまくいったこと。
失敗したこと。
悔しかったこと。
現場で出会った人たち。
お客様からいただいた言葉。
その一つひとつが、今の私をつくっています。
だから私は今でも、自分を一人前だとは思っていません。
今もなお、学び続ける見習いです。
父から受け継いだ技術。
師匠から受け継いだ職人魂。
経営者から教わった責任。
人生の先輩方から教わった知恵。
そのすべてを工具箱に詰め込んで、今日も現場へ向かっています。
⸻
なぜ「なんでも屋」と名乗るのか。
私は、この名前に誇りを持っています。
それは、
何でも引き受けるという意味ではありません。
何でもできると名乗るつもりもありません。
困っている人の前で、
「それは私の仕事ではありません。」
と簡単に線を引きたくない。
自分が今まで学んできた技術。
経験。
知識。
そして、人とのつながり。
そのすべてを使って、お客様にとって一番良い方法を考える。
それが、私の考える「なんでも屋」です。
⸻
このnoteを書いている理由。
私の記事では、
ミズアカ・ダンシングが踊ります。
黒カビDJがフロアを支配します。
物置はダンジョンになります。
門は番長になります。
初めて読んだ方は、
「何だこれは?」
と思うかもしれません。
でも、そのモデルはすべて実際の現場です。
私は長年現場に立つ中で気付きました。
汚れや壊れた物は、
ただの汚れでも、
ただの故障でもありません。
そこには、その家で暮らしてきた時間があります。
家族の思い出があります。
積み重ねてきた人生があります。
だから私は、
施工写真だけでは伝えきれない現場の物語を、少しだけ想像の力を借りて描いています。
⸻
最後に。
父から子へ。
師匠から弟子へ。
人から人へ。
受け継がれてきた技術や想いは、一人で抱えるものではありません。
私も、多くの人に育てていただきました。
今度は私が、それを次の誰かへつないでいく番だと思っています。
父や師匠、そして人生の先輩方から教えていただいたことを、現場で、そしてこのnoteを通して少しずつ伝えていけたらと思っています。
施工事例だけではありません。
職人として歩んできた人生。
現場で学んだこと。
受け継いできた想い。
そして、住まいに眠る小さな物語を記録していく場所です。
もしこの記事を読んで、
「続きを読んでみたい。」
そう思っていただけたなら、とても嬉しいです。
これから始まる物語を、楽しんでいただけたら幸いです。
ようこそ。
なんでも屋プリンスの世界へ。
⸻
次回
逸話0.5 Little Town LEGACY「少年の心を失う」
いくつもの人生の道標に立たされた少年は、
迷い、
見失い、
前へ進むことができなくなっていた。
遠回りだと思っていた人生が、
想像をはるかに超える人生を動かし始めることなど、
まだ知る由もなかった。

