#28| 実家じまい① 誰も住まない家に、年間50万円消えた
認知症の母とMCIの父。
海を超えた遠距離介護を続けています。
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フランスからの遠距離介護
4年前、父が言った。
来年、兄貴が帰ってきて一緒に住むと言っとる。
お前はフランスだし、このマンションは、あいつが引き継ぐからな。
それなら、名義を変えて、管理も任せた方がいい。
父はうなずいた。
兄は答えた。
帰ったらやる。
ところが、
仕事が見つからない。
忙しい。
母の在宅介護は自信がない。
理由だけが変わっていった。
いつ帰ってくるのかわからないまま、
3年が過ぎた。
そして、
両親はケアハウスへ入居した。
父は兄に言った。
俺たちは施設に入るから、
家はもうお前のものだ。
早く帰ってこい。
空き家にしておくのはよくない。
もうすぐ帰る。
兄はそう言い続けた。
私は兄へメールを送った。
引き継ぐつもりなら、名義変更をしてほしい。
もう何年も前から伝えている。
管理費と固定資産税くらいは負担してほしい。
マンションの駐車場も、
もう使っていないのだから解約しようと思う。
返信はなかった。
父から聞いた。
駐車場は解約するな。
管理費は自分で負担する。
そう兄が言っていると。
私は父に聞いた。
「兄は車を持っているの?」
父は言った。
「聞いたことないな。」
「俺の車を引き継ぐつもりなんじゃないか。」
管理会社へは、
兄が引き継ぐ予定なので、
今後の連絡は兄へするよう伝えた。
数日後、
管理会社からメールが届いた。
マンションの駐車場は、
住民の方だけにお貸ししています。
空き待ちの方がいるので、
住んでいないのであれば解約していただけませんか。
私はそのメールを兄へ転送した。
返信はなかった。
その後も、
点検の立ち会いや問題が起きるたびに、
管理会社からの連絡は私のところへ来た。
春の帰省で、
窓を開けて風を通した。
夏に帰ると、
部屋の空気は重かった。
壁には、うっすらとカビが広がっていた。
管理費。
修繕積立費。
固定資産税。
駐車場代。
光熱費基本料。
誰も住んでいない家に、
年間およそ50万円が消えていった。
私は帰省しても、
両親の施設のゲストルームに泊まっていた。
実家に寄るのは、
空き家の点検をするためだけだった。
兄が引き継ぐはずだった家を、
フランスに住む私が管理していた。
父の物忘れと混乱は、
少しずつ増えていった。
認知症になると、
家が売れなくなる。
そんな話を聞いた。
父の判断能力は、
待ってくれない。
家は売りに出すことにした。
住みたいのなら、
売れる前に帰ってくればいい。
売れてから名古屋に帰ってくることになったら、
兄の都合にあう住宅を買えばいい。
その時、資金援助してあげる。
たかし(仮名)にそう言えば反対はしないんじゃない?
父は言った。
そりゃそうだ。
その方がいい。
ところが兄は言った。
それなら、
今後一切名古屋には帰ることはない。
父は言った。
向こうの生活の方がいいなら、
別に無理に帰ってくる必要はないのにな。
私は父に言った。
今後一切名古屋に帰らないっていうのは、
もう家族と縁を切る、
そういう意味だと思うよ。
父は笑って言った。
そんなはずはないだろう。
そのうちわかるよ。
私はそう言った。
フランスから空き家の管理をするのは、
無理だった。
お前とは縁を切る、
そう言った兄のために。
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