#10| 管理人さん、お金に困ってるんじゃないかな
認知症の母と、MCIの父。
海を超えて遠距離介護をしています。
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フランスからの遠距離介護
マンションの管理人とすれ違った。
また帰ってきてるんだね。
この前、
財布を忘れてきてね、
お母さんに千円借りたのよ。
翌日返しに行ったら、
貸したこと覚えてなくてね。
びっくりした。
そう言った。
数日後、
母が言った。
あの管理人さん、
お金に困ってるんじゃないかな。
なんでそう思うの、
と聞くと、
お財布を忘れてきたって言って、
よくお金を借りにくるのよ。
ちゃんと返してもらってる?
そう聞くと、
母は言った。
うーん、
もうよくわかんない。
よくあることだから。
ある日、
フランスから、
母とビデオ通話をしていると、
インターホンが鳴った。
母は言った。
「あ、はい。
ちょっと待ってくださいね」
そう言って、
鞄を探し始めた。
どうしたの、
と聞くと、
母は言った。
「管理人さんがね、
また財布忘れてきちゃったんだって。
貸してあげるの」
私は、
インターホン越しに聞こえるよう、
大きな声で言った。
「お母さん、
さっき、お金が足りないから、
下ろしに行かなきゃって
言ってたでしょ。
お父さんと一緒に、
下ろしに行ってきな」
母は言った。
「え、そうだった?」
それから、
インターホンに向かって言った。
「あ、ごめんなさい。娘が来ててね」
受話器越しに、
管理人の声が聞こえた。
「あっ、お財布、こんなところに入ってた。
僕の勘違いでした。
すみません」
すぐに、
会話が途切れた。
母は言った。
「よかった。困ってたみたいだから」
通話を終えたあと、
アレクサアプリから、
「管理人さんに、
お金を貸さないようにしよう」
と、リマインダーを設定した。
翌朝、
リマインダーを聞いた母が言った。
「お願いだから、やめて。
管理人さんに聞こえたら、
失礼でしょ」
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