【設計:安藤忠雄】石川県西田幾多郎記念哲学館:金沢観光に追加すべき名スポット
【#294、約4,200文字、写真約75枚】
初めて石川県西田幾多郎記念哲学館に行き、安藤忠雄による建築や、常設展を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
新しい発見が多く、わざわざ訪れる価値がありました。それは主に、1)安藤忠雄による「無」を表現した特別感のある建築、2)西田幾多郎や哲学について興味をもつきっかけを掴めたためです。アクセスは難ありですが、ゆっくり楽しみたいときは、約2時間は必要だと思いました。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
場所:石川県西田幾多郎記念哲学館
休館日:月曜日
開館時間: 9:00~17:00
住所:石川県かほく市内日角井1
アクセス:宇野気駅から徒歩約20分
入場料(一般):300円
事前予約:ー
所要時間:約1時間
撮影:展示室以外は撮影可能
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

金沢に1泊2日、アート旅を計画した際、2日目に訪問しました。訪問のきっかけは、1)前日に、西田幾多郎と親交の深かった鈴木大拙館に行ったこと、2)安藤忠雄の建築に興味があったことによります。
▶︎ アクセス

西田幾多郎哲学記念館(以下、哲学記念館)は、金沢より北に約20km。金沢駅から宇野気駅まで電車で約30分、そこからさらに徒歩約20分です。
注意点は、金沢駅から往復の電車本数が非常に少ないこと(日中は、1時間に約1本)。帰りの電車の時間をしっかり頭に入れておかないと、旅行の計画が大きく狂うことになります。



午後ティオレンジ(自販機限定)はおいしかった


かほく市にある、かほっくる、七塚中央公園は、子どもが大喜びしそうな場所だと思いました。
「かほく市」と、ひらがなで表記する理由は、河北(かわきた)と誤読されたり、河北新報社(仙台)などと誤解される可能性があるためだそうです。なお、かほく市は、2004年に河北郡高松町、宇ノ気町、七塚町が合併し、旧郡名の河北を採用したことが由来しています。










記載されている「寸心」は、西田幾多郎が金沢郊外の臥竜山に参禅した際、雪門禅師から「寸心居士」と授けられたことが由来です。
▶︎ 石川県西田幾多郎記念哲学館とは?

石川県西田幾多郎記念哲学館は、かほく市が管理運営する、日本で唯一の「哲学の博物館」です(2002年にオープン)。特徴は、安藤忠雄の設計による、思索のための空間です(英称:Ishikawa NISHIDA KITARO Museum of Philosophy)。
アクセスが悪いのか、コンセプト自体に集客が難しいのか、私が訪問した日曜日、お客さんはほぼいませんでした。なお、ロッカーはありません。
鎌倉には西田幾多郎博士記念館があります(学習院が所有)。見学は誰でも可能。学習院の関係者は、ゼミなどの名目で宿泊もできます。
▶︎ 安藤忠雄による設計

設計は安藤忠雄が担当。哲学記念館の構想が上がった際、西田幾多郎の思想を体験できる“空間そのものが哲学”のような建物をめざしました。そのコンセプトと親和性の高い安藤忠雄が選ばれたそうです。
この建物のテーマを「考えること」と安藤氏は語っています。哲学という学問にとって最も大切なこと、それは「考えること」です。建物の中は複雑で、まるで迷路のように入り組んでいます。建物を歩く中で迷いながら、自ら「考えながら」 次に進む道を選び出すのです。
安藤忠雄は20代の頃に、西田幾多郎の本もよく読んだそうです(内容はまったくわからなかった、とのこと)。そんな馴染みから、この設計は実現したようです。

✔️ 外観

外観、内観から安藤忠雄味が炸裂。見ただけで安藤忠雄とわかるのは、マーケティング的にも良い個性をもっているな、と改めて思いました。






シネコンもユニクロも入っている

✔️ 1階

1階は、受付、図書館、ショップなどがあります。中央には、丸い吹き抜け空間(ホワイエ)があり、日中は太陽光が美しく降り注ぎます。






安藤忠雄の建築で特徴的な「セパ穴」。この図書館では、その穴に残ったセパレーターを実用的にフックとして使用していました。


✔️ 地下1階

地下1階には、ホワイエ、303名を収容できる哲学ホールなどがあります。中央にあるすり鉢状の円形空間は、哲学のモチーフ(円環)を表現しており、心地よいリズムを生んでいます。


コンクリートは無機質です。まさに、無を追求する「哲学」、「考えること」に向いている素材だと思いました。建物によって、西田幾多郎の考え方がより補強されています。そういう意味で、建物は重要だと再認識できました。建物は、館自体のメッセージを、生かしも殺しもしてしまいます。



当日、ホワイエには透明の椅子が2脚あるのみでした。日によっては、イベント空間として利用されているようです。







鈴木大拙館のコンセプトも同じく「無」です。2館を訪問することで、谷口吉生と安藤忠雄の表現方法の違いを楽しめまました。
✔️ 5階

5階には展望ラウンジがあります。









✔️ 2階

2階には、喫茶テオリアがあります。テオリアとは、古代ギリシャ語で「見ること、眺めること」の意味。クリームソーダを飲みたかったですが、帰りの電車の時間を考えて諦めました。
▶︎ 西田幾多郎とは?

西田幾多郎は、日本で最初の哲学書『善の研究』を出版し、初めて哲学者として文化勲章を受賞したすごい人です。

私は、大学受験で暗記した時から、哲学記念館に来るまで、西田「いくたろう」と読んでいました。正くは「きたろう」でした。
西田幾多郎は、1870年、かほく市生まれ。高校を中退しつつも、帝国大学文学科大学哲学科選科に入学。その後、中学や高校、学習院で教師や教授を経て、京都帝国大学文学科大学助教授(後に教授、名誉教授)となります。定年後、鎌倉と京都の二重生活を行い、鎌倉で亡くなりました(75歳)。


同じ石川県には、禅を世界に広めた哲学者・鈴木大拙がいます。2人は高校の同級生で、生涯の親友だったそうです。哲学記念館の展示でも、鈴木大拙の言葉が多く引用されていました。
金沢市から離れた場所に哲学記念館を建てた理由は、ここが西田幾多郎の生まれだからです。なお、京都には「哲学の道」があります。京都の大学生にとっては、代表的なデートコースの1つだと思います。桜や用水路を見ながら、ブラブラ歩くのは楽しいです。近くには銀閣寺や南禅寺もあります。

▶︎ 常設展 感想

展示室は、1階「哲学へのいざない」、2階「西田幾多郎の世界」、地下1階「西田幾多郎の書」の3フロア構成。
地下に展示室があることは、全く気づきませんでした。そこには「空の庭」という、地下から空にだけ開かれた、四角い何もない思索の空間があるようです。地中美術館の吹き抜けのような雰囲気なのでしょうか。丸いホワイエと対を成す空間らしく、行けず残念です。

哲学とは、知ることを愛する、自ら迷い考え、真実を求めることで、一言で言えないそうです。西田幾多郎は、日本と西洋(プラトン、アリストテレス、デカルト、ライプニッツなど)の考えを合わせ、自己が自覚する時、世界が自覚すると閃いたとのこと。

私は、哲学に関する本を何冊も読んできました。読んでいるうちに何か得るものがあるだろうと、粘り強く続けていますが、まだ得るものは少ないです。大抵の本は文章が非常に難解で、目で追うだけでも時間がかかります。文庫クセジュは、新書サイズ(文庫と言いながら)でも、読むのに1週間くらいかかります。
比較的わかりやすかったのが、齋藤孝の『使う哲学』。アートを見て感動することに哲学を紐付けており、共感する部分が多かったです。
1階は、円、井戸、窓から哲学を学ぶ仕掛けになっています。オブジェや映像、音声、タブレットなど、子どもでも馴染みやすいようになっています。

円の書といえば、出光美術館で見た仙厓を思い出します。
人は何のために生きるのか?エヴァンゲリオンでは、人との折衝を恐れず、「オタクよ、外へ出ろ」と説きました。

私も中学生の時「この人生は何のためにあるのか」不思議に思いました。私は架空の世界に存在しており、実体がないのでは?科学や数学は合理的だが、それはみんなが思うからで、絶対ではない。こことは違う真理がある世界が存在するのでは?自分が死んだら、次はそこに行くのでは?と。
もしくは、私は劇の中に生きており、誰か大勢に見られているのでは?とも思ったことがあります。まさに『トゥルーマン・ショー』の世界です(きっと同じことを考える人は、世界中にたくさんいるのでしょう)。
正直、哲学記念館で断片的に知っても、哲学の1%を知るための扉の前に立ったに過ぎません。哲学は、自分で考え続けることが「答え」かなと思います。せっかくなので、西田幾多郎についての本を買いました。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?私は電車の都合上、約1時間しか滞在できなかったため、消化不良になりました。しかし、安藤忠雄の圧倒的なスケール、西田幾多郎の思想を表現した空間は「来てよかった」と思えました。展示は読ませる内容が多いため、時間に余裕をもって訪問した方がいいと思います。西田幾多郎がどのような人物なのか知れただけでも良かったです。
▶︎ 今日の美術館飯


いいなと思ったら応援しよう!
Thank you for your support!