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【noteでBL】引率ゆりかもめ【3000字小説】


まえがき

皆様ごきげんよう、四四田です。
毎月参加させていただいている企画、noteでBL。
1月は正月休みとなっている分、
その過去お題が、解放されていました。


四四田がすっかり実家だと思って甘えてくつろいでいるnoteでBLですが、参加させていただくようになったのは去年の第6段から。
その前のお題には間に合っておらず、参加しておりませんでした。

そんなわけで、この解放時期にちょっと過去お題に挑戦したい!!
と思っていたのにすっかり1月も終わりそう。
あわてて過去お題からまずは第1弾をお借りします!!

第1弾
「コミケ」「ビックリマンチョコ」「スマホ」

来月から、noteでBLはさらなる進化を遂げます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

なので、ちょっと今後の記事の体裁も、調整というか練習したくて、
まずはジャンルを決めて、あらすじを書いてみるところから。
やってみよう~

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ジャンル

日常ほのぼの

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あらすじ

40代の美丈夫、国民的俳優・片桐ツトムに、ひょんなことから懐かれてしまった若き大道具、笹田。
呼んでもいないのに勝手にやって来て、部屋に上がり込む片桐に、徐々にほだされつつあるけれど、自分ではまだ認められない。

今日も目が覚めたら、当たり前の顔をして片桐がいた。
なんでも「豊洲市場の海鮮丼を食べに行くのを、笹田が引率する約束をした」という話だが……

約束を覚えてはいないものの、笹田は片桐を連れて、年末のゆりかもめに乗り込んだ。
片桐が手にしたガイドマップに載る、海鮮丼を目指して。

意図の読めない片桐。
立場と年齢の差を自分に言い聞かせながら、結局は世話を焼いてしまう笹田。
二人の、恋にならない瀬戸際の日常。

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『引率ゆりかもめ』


「なんだか随分人が多いんだね」
国民的有名俳優・片桐ツトムはひそひそ声で言った。

普段はマイペースなこの人にも、周りに気を使う、という感性があったのかと、うっかり感動しかけて首を振る。
ダメだ。感動してどうする。基準が甘くなっている。

「笹田君?」
コテン、と音がつきそうな首の角度だ。
手には東京観光のガイドマップが握られていて、完全に年末のおのぼりさんの風情でいる。
分厚いセル縁の伊達メガネと、キャスケット、使い捨てマスクに、ぐるぐると巻いた大きめのマフラーは、あやしいと言えばあやしいのだけれど、ポヤポヤと浮世離れした雰囲気が、東京に慣れていない風を装えていると言えなくもない。
持ち前の演技力、ではなく。これが彼の“素”ではあるのだけれど。

付箋が貼られているのは、本日の目的地である豊洲市場のページだ。どうしても食べに行きたい海鮮丼があるとかなんとか。
年末はもう閉まっているんじゃないかと思ったのだが、なんと今日が年内最後の営業日であるらしい。
ポヤポヤしている割に食い意地が張っていて、そういう情報だけはやたらしっかり頭に入っている人だ。

それにしても、片桐さんが「どうしても行きたい」からといって、なんだって自分が駆り出されることになったかの流れを、全く覚えていない。

いつのまにか家の中に片桐さんがいたのはまあ、百歩譲ってよくあることだから良いとして。
いや本当は良くはない、良くはないけれど。

とにかく、寝起きドッキリ。何故か目が覚めたら彼がいた。
当たり前の顔をして「おはよう」なんて俺に言って、台所でコーヒーを淹れていた。自分の分だけ。

片桐さんの話によると、ゆうべ彼が持ち込んだビックリマンチョコで、今日の引率をすると手を打ったらしい、俺が。

仕事納めの日に転がり込んできた酔っ払いの言い分を信じていいものかの判断がつかない程度には、昨日はこちらも酔っ払っていたのだと思う。
幸いにして二日酔いにはならずにすんだ。なっていたら海鮮丼なんて、どんなに美味かろうが付き合えない。

とはいえ記憶が無いのだから、もちろん褒められた話ではない。
まったくもって覚えちゃいないというのに、俺の部屋のテーブルの上には、さんざ食べ散らかされたビックリマンチョコと、やたら丁寧に並べられた戦利品らしきシールが並んでいたのは事実ではある。
ていうか、何個買ってきたんだビックリマンチョコ。

本調子、とはさすがに言い難い、多少なりとぼんやりとした頭で、片桐さんの問いかけに返事をする。

「あー、コミケに行く人たちじゃないですかね」
「コミケって?」
首が反対側に倒れる。

また、“コテン”という音が聞こえた気がする。
んなわけはない。

四十をとっくに過ぎたおっさんが、上目遣いで首をかしげているのが可愛く思えるのは、この人の顔面が良いせいで、俺の心持ちのせいだとは思いたくない。その顔面も今はろくに見えないのだが。

まぁ……それはさておくとして。

あるいはシンプルにこっちの体調不良だ。まだ酒が残っているのかもしれない。


「ええと、そういう長く続いたイベントがあるんです」
「なんか、聞いたことあるかもしれない」
「有名なイベントですからね」
「そうなんだ」
片桐さんはキラキラした目でこちらを見つめてくる。

キラキラってなんだその修飾語は。

来年の抱負は今決めた。
酒は控えめにすること。
あと、片桐さんをホイホイ家に入れないこと。できるかどうかは今から不安だけれど。

年末のゆりかもめの中。
コミケ会場に、今まさに向かわんとする歴戦の猛者たちの只中で、全くの素人相手に説明をするのは、気を使ってしまって難しい。一緒にいる相手が、全国的に顔の売れている俳優だとなおのことだ。
まあ、今この車両の中にいる乗客には、あまり認識されないかもしれないけれど、なんてことを思って車窓に目をやった途端、デカデカとした看板が目に入った。

年明け早々に始まるドラマの広告だ。
真ん中に映っているのはーー、

隣にいる男だ。

ドクン、と心臓が跳ねた。

「あー、このドラマ、」
開きかけた口を、手で押さえて黙らせる。
心臓は今もってバクバクしている。
そうだった。この辺は大手テレビ局もある界隈だった。
ああ焦った。
ていうか、ドラマ主演してたのか。そういえばなんかそんなようなことも言ってた気もするけど、話半分で聞いていなかった。

「ふぁにすんのさ」
モゴモゴとくぐもった声がする。
「電車の中ですし、静かにしましょう」
不満そうなジト目が向けられる。
ふるふると頭を振られて手を離す。プハ、と息をついた片桐さんはすねた調子で言った。

「コミケがなんなのか教えてもらってない」
「コミケのことは、あとで説明しますから」
「ええ、気になるのに」
「気になるなら自分のスマホで調べてください」
「おじさんにそれは難易度高いよ」
そんなことはない。
片桐さんが特にうといだけで、彼と同世代のおじさんたちはスマホなんて当たり前に使って、立派にデジタル社会を生き抜いている。

ああでも、この人にそんなことを求めても無駄だけれど。
「っていうか、今更ですけど、なんで俺らゆりかもめに乗ってるんですか」
「え、最寄駅ってゆりかもめの駅なんでしょ」
「いやそうじゃなくて、行き方の問題というか」

端的に言えば、自前の車とか。
公共交通機関を使うにしても、電車じゃなくてタクシーにするとか。とにかく移動手段には、もっと人に会わないようにするとかして、気をつけてもらいたい。そうでないと、こちらの神経がもたないのだけれど、片桐さんは気にしていない。

そりゃそうだ。
俺のあのガバガバセキュリティのアパートに身一つで現れるような人だった。この人に人並みの危機管理能力を求めてはいけないのだ。

「マネージャーさんに車出してもらえばよかったのに」
「マネージャーは昨日で仕事納め。プライベートにまで付き合わせてらんないよ。うちの事務所、ホワイト企業だから」

そのプライベートに付き合わされている俺は?
と思うのだが。

「笹田君は俺のスタッフじゃないじゃない」
と、片桐さんは見透かしたような顔で言った。
思考を読まれた気がして驚いていると、片桐さんは、ふふふと小さく笑った。

「まあ、それはそうですけど」
じゃあ何なのか、と突っ込んだら負けな気がして聞こうにも聞けない。聞きたくない。
三日月形に細くなっていく片桐さんの視線から目を逸らす。

「楽しみだなー、降りるのは次の駅だっけ?」
「まだです、勝手に降りようとしないでください。豊洲って言ってんだから豊洲でしょうが」

ぷくっと片桐さんの頬がふくらむ。
もう、あのこちらの背筋に嫌な感覚が走るような目つきはしていなくて、ホッとする。
「じゃあちゃんと引率してよ」
「じゃあちゃんと引率されてください」
俺はヒョイと片桐さんの手からガイドマップを取り上げた。

「海鮮丼食った後はどうするんですか?」
「後?」
片桐さんは虚をつかれたようなポカンとした顔をしている。この人相手に初めて主導権を取れた気がして、俺は思わず笑ってしまった。

この人が、闇雲にフラフラしているわけではないことはわかっている。忙しい時間を縫うようにして手に入れた年の瀬の貴重な休日を、なんで俺なんかと過ごしたいのかは知らないし、知りたくもないのだけれど。

それでも。
「他に行きたいとこがあるんなら、今日くらいちゃんと引率してあげます」
何しろ、そう約束をしたらしいので。大量のビックリマンチョコと引き換えに。

※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

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