【noteでBL】雨の駅前スーパーマーケット【3000字小説】
※こちらは企画参加作品です。
皆様こんにちは、四四田です。
素敵企画 #noteでBL 5回目の参加、今回もよろしくお願いいたします。
四四田の参加は5回目ですが、企画自体はなんと記念すべき10回目とのこと。
二桁!おめでとうございます!
今回のお題は、
「雨の日の恋」「ルマンド」「ダンボール」でした。
なみさん、今回も参加させていただきありがとうございます!!
今回、実は白状しますと、昨日時点でまだ書き始められてなくてですね。
茫漠としていたイメージをまとめられたのがついさっき、という出来たてホヤホヤぶりです。
登場人物中の約一名がめちゃくちゃ喋りますが、まさか彼がそんな喋るやつだと思ってなくて書きながらさらに方向が変わっていくという……。
どうにか間に合ってよかったです。
あと結局書かなかったんですが、
雨の日にルマンドのダンボールに入れられた猫を拾うヤンキーに恋をする生徒会長
のイメージがずっとぬぐえなくて大変でした。結局書かなかったんですが。
よくある「お前も一人か……」とか呟く感じの……乱暴者の優しいとこ見ちゃってギャップで恋する系の……。あまりにもあるあるネタっぽすぎて書いてて照れてしまいそうで書けませんでした……。
本文は3,000字。
多分最初に浮かんだイメージの余波で僕にしては珍しく学生くんたちです。
(いや、最近は珍しくもないかもしれない)
※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
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幼馴染は、雨の日の恋をしているらしい。
「いやなんで雨の日限定」
「相手が雨の日しか来ねえんだもん」
そう言いながら、幼馴染の佐野明は淡々とスナック菓子をスーパーのお菓子売場に陳列していく。
「てか、キヨはいつまでいんの」
バイト中の彼にしてみれば、さぞや僕の存在は邪魔だろうが、僕とて、好んで邪魔をしているわけじゃない。数か月後に控えた高校の文化祭に使う資材として、一番近所のスーパーマーケットに、ダンボールを譲ってもらえるよう事前のお願いをしておく、というのが歴代、文化祭実行委員の仕事のひとつなのだ。
「ごめんごめん話しかけて。邪魔だよね」
アポイントは取っておいたのだけれど、店長の業務関連の電話が長引いてしまっているとかで、待たされている。
社員さんは、店長の手が空くのを待ちたいとお願いした僕に、明のいる場所を教えてくれた。同じ学校というわけでもないのに、なぜか幼馴染であることを把握されている。
僕としては有難い配慮なのだけれど、アルバイトが業務時間中に知り合いと喋ってていいのか、心配になる。まあ、社員さんが連れて来てくれてるくらいだから良いのかもしれないけれど。
「でも、店長さん待ってる間ヒマっていうとアレだけど。なんか黙って隅に立ってるのもなんかさあ」
「普通にスーパーん中見てまわってりゃいいじゃん」
淡々と、淡々と、台車に乗せたダンボールから、在庫を手際よく補充していく彼の手つきは、洗練されていて美しい。本人に言ったら引かれそうなので、口に出しては言わないけれど。
綺麗に陳列が終わって空になったダンボールを、少々乱暴に足で踏もうとした明は、
「あ、これももしかすると使うわけか」
と、丁寧に畳もうとしてくれる。
「あ、いや。今日はまだ流石にもらわないからいいよ。もらうってなったらもっと人連れてくるし、そんな気を使わないで」
「いやでも、文化祭で使うんなら綺麗なほうが都合いいだろ。しばらくの間はなるべく綺麗にとっとくようにするわ」
当たり前のように言う明の気遣いに、ひそかに感心していると、店内に流れていた電子的なビートルズが、中途半端なところで止まった。
代わりに流れてきたのは、童謡だ。
子ども合唱団が「ぴっちぴっちちゃぷちゃぷらんらんらん」と歌っている。
「あ、雨だわ、行かなきゃ」
「え、仕事中でも雨の人探しに行くの?」
「雨の人て……」
訝しそうな顔をしていた明は、僕の言わんとしたことを理解すると、心底呆れたような顔をした。
「バッカちげえわ。雨降ってきたら、カサ袋出したりとか、入口マットずらしたりとか、いろいろ業務があんだよ」
「あーこれ、雨降って来たって合図か。でも、雨の日に来る人を待ってるん、だよね。雨降ってよかった、じゃん」
僕としては精いっぱい気を使ったつもりなのだけれど、的外れだったらしく、明は不機嫌そうな苦虫を噛みつぶしたような顔をする。
童謡の雨降りは、きっちり二周分流れると、また元のビートルズに戻った。
さすがに邪魔だからついてくるなと言われて、お菓子コーナーにそのまましゃがみこんで、売り場をぼんやりと眺める。
昔、お互いの家に遊びに行くとこういうお菓子が出てきたものだな、と少し懐かしくなる。最近は、一緒に過ごす時間はめっきりとなくなった。
明の家に行くと、ブルボンのお菓子が出てくる。
お菓子自体の名前というより、メーカー名で覚えてるのが面白いのだけれど。おかげで、あの赤いマークと明の家を結び付けて覚えてしまって、テレビでCMが流れる度に「あきちゃんの家のお菓子」と指さしていたらしい。家族はいまだにその話をしてくる。
「ごめんねー、お待たせしました。ええと、キヨくんだよね」
と、頭の上から声がした。
見上げると、人好きのする笑みを浮かべた眼鏡の店長が立っている。それはいいのだが、まだ名乗ってもいないのに、なぜあだ名で呼ばれるのかと不思議だ。構わないのだけれど。
「あ、藤枝高校の清岡と言います。本日はお時間をいただいて」
「いやあ、電話が長引いてしまってお待たせしてごめんね。事前アポを取ってくれてたのに」
「お忙しいところをお邪魔して」
「全然! 普段ならこの時間は暇なんだよ。今日はたまたま。あーじゃあ、売り場で話すのもなんだから、事務所に来てもらおうかな。待たせたお詫びにお茶菓子でも出すよ。藤枝さんとこの生徒さんたちには、よく利用していただいてるし、お付き合いも長いからね。メーカーさんが置いて行ってくれたサンプルなんだけど、なんでも新作だとかでねえ。好きなんでしょうルマンド」
こちらが口を挟む暇もないほどペラペラとおしゃべりをする店長に驚いた。
というか。
「なんで僕がルマンドが好きって」
「ああそれは佐野くんがよく話してくれるからだけど、あれ、ルマンドじゃなかった? バームロールのほうだっけ!」
どっちもブルボンのお菓子だ。
お門違いな慌て方をする店長さんを、こちらも慌てて押しとどめる。
「いや、ルマンド……で合ってます。まあ、子どもの頃の話なので、最近食べてないんですけど」
「そうなんだー。美味しいよねあれ。僕なんか今でも食べるなあ。それでもし時間があるみたいだったら佐野くんのこと待っててあげてよ」
「いやそれはあまりにお邪魔では」
「大丈夫大丈夫。普段はキヨくんは塾で忙しくてなかなか会う暇がないんでしょ? しかも晴れてる日は、健康管理のために隣駅の塾まで歩くようにしてるんだって?」
「そ、そんなことまで……」
なんだか思っているよりも、ずいぶん色んな話をしているようで、ポカンとしてしまう。進学した学校も違う幼馴染の噂を、アルバイト先の店長に把握されるレベルまで普通は話すものだろうか。
「藤枝高校さんは文武両道だって聞くけど、その通りの子なんだなあって思ってたんだ。ただ、ここは駅前だからね。雨でも降らないと君が電車使わないからって言って、普段は佐野くんがえらく寂しそうなのがねえ、あ、これお茶ね。で、これが新作ルマンドよかったらどうぞ。ええとまあ、毎年のことだから、全然電話一本でも構わないんだけど、わざわざ来てくれてありがとうね」
よくもこんなに口が回るものだというマシンガントークの要所要所で、聞き捨てならない話をされている気がするのだけれど、何しろこちらが喋る暇がない。
ようやっと発生したこちらのターン。なのに、あまりにまくしたてられたのと、聞いたことに動揺して、何を言おうとしたのかが頭から抜け落ちた。
「雨でも降らないと僕が電車を使わないって佐野は寂しそうなんですか」
文化祭のダンボールの話をしにきたのに僕は何を言ってるんだろうか。
幸い、店長に気にした様子はない。
「うちは駅前だから、藤枝さんとこの生徒さんたちは電車の待ち時間つぶすのに、よく入ってくるからね。キヨくんもそうしてるでしょう」
また、当たり前のようにあだ名で呼ばれる。
「あき……佐野は雨の日に僕のこと待ってるんですか?」
「そりゃあもう、忠犬ハチ公のよう、あ、やべ」
饒舌だった店長が焦った視線の先には、いかにも怒っているという顔をした社員さんと、真っ赤な顔で固まっている明がいた。
その顔を見れば、いかに鈍い僕でも雨の日の恋の相手が誰なのかを、そしてなんでさっき明が不機嫌になったかを理解した。
BGMのように、社員さんが店長に向かって小言を言っているけれど、急展開で長い片思いが実る予感に、僕はそれどころじゃなくなった。
