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【風まかせ文芸部】夜明け【1000字小説】&コングラボード報告

「夜明けって見たことがないんだよねえ」
と船の中で唐突に相棒が言い出した。

いやいやそんなことはなかろう、と思うけれど、いったんこういう思い込みを口にした彼に、正論をぶつけてもこじれるだけだ。
俺は口をついて出そうになる否定の言葉を飲み込んだ。

「ほら、俺って地下街育ちだから」
あげく、それを言われると弱い。
また、こっちがそれを言われると弱いのもわかってて言うので、うちのわがまま姫は(と言っても男だが)はタチが悪い。

手元には、先だっての仕事の時に手に入った紙製の本がある。大方そこに何か書いてあったのだろう。夜明けの美しさであるとか何か。
俺が仕事でまともな報酬を受け取り損なうと怒るくせに、対価が紙製の本だと何も言わない。いそいそと自分の部屋に持ち去って返ってこない。おかげで彼の私室は、どんどん本で埋まってきている。そろそろどこかで整理してもらわないとそのうち船が重みで傾きかねない。

だから、いい機会かもしれない。
「夜明け見に一回降りるか」

ずっと宇宙空間を船で移動し続けるばかりの俺たちのような運送屋は、恒星が地平線から現れて、その土地一体の明度を一気に変えてしまう、夜明けという時間を体験する機会がなかなか無いのは事実だ。
だから、夜明けを見たい、と思うならどこかに降りなくてはならないわけで。
そうやって考え始めたら、悪く無い思いつきの気がしてきた。荷物の問題もあることを思えば、一石二鳥にできそうだ。

「降りるって、どこに? 近くの星?」
「近くは、ない。俺の家がある」
「家? この船じゃなくて?」
「譲ってもらった家があるんだよ」
「地面に立ってるってこと?」
「そー」
「そんなんあんの!?」
キンキンした声をあげられて思わず耳を塞いだ。
そういえば言ったことがなかったかもしれない。
家はある。しばらく放置してしまっているけれど。
きっと彼が気にいるだろう家が。
随分帰っていないから、まずは掃除からだろうか。

「おまえ結構秘密主義だよな」
憮然とした顔を浮かべられて、首をすくめた。そんなつもりはないのだけれど。
実際の家を見せたら、また「秘密主義だ」と怒られそうだけれど、それでもきっと喜ぶだろうから言うのはやめておく。
あの家には、立派な書庫がある。
きっと相棒は喜ぶだろう。
ついでに船の上の本を置いてってくれたらいいのだけれど、かえって持ち込まれたらどうしようという懸念が頭をかすめつつ、俺は懐かしい故郷へと船を向けた。



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iさん#風まかせ文芸部 に参加させていただきました。
今回のお題は「夜明け」でした。

楽しい企画をありがとうございます。
今後も参加させていただきたいです。


この二人は、

こちらの二人と同一人物だったりします。

なお、上記「火星馬券」では、ありがたいことにコングラボードをいただいたのですが、

このコングラボードいただいてありがとうございましたの報告記事にも、
本日、

コングラボードをいただくという無限ループが地味に起きまして、お礼の報告記事のさらなる報告記事というのもなんだかなと思い、
こちらで御礼申し上げます。

ありがとうございます!!
SF難しいけど好きです。
勉強しながら書けたらいいな。

※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

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