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あんたら錬金術を何やと思っとるの①

初っ端から喧嘩腰な物言いで失礼いたしました。
「錬金術」とは一体何か。中世に行われた「金」を生み出す魔法のことなのか、あるいは漫画の世界の話なのか。

先日、私の師匠である霜月やよいさんが発信したEconomistと錬金術のツイート。この意味を理解するべく、今回は「錬金術」の扉を開けてみることにしました。


7階段の手すり

では始めましょう。

錬金術を理解しなければ、ツイートの意味が分かりません。学びは一段一段、階段を上るがごとく理解していくこと。皆んなが上れるように、このnoteが手すりの役割を担えたら幸い。

「錬金術」と聞くと文系の人は尻込みする。なんとなく錬金術=理系なイメージだからかもしれません。

現存する最古の文献によれば、錬金術と占星術は一度失った楽園を再び獲得できるよう神が啓示した学問であるとみなされていました。

錬金術の教義に精通していたカルデア人、フェニキア人、バビロニア人たちは、ギリシア・ローマでこの学問を発展させましたが、その母型はエジプトの学問です。エジプトの地はその昔、黒い土地という意味の「ケム」と呼ばれていました。錬金術のアルケミー(alchemy)、化学のケミストリー(chemistry)はいずれも「エジプトの学問体系」という意味を持ち、土地の名「ケム」からきています。

では錬金術の起源はエジプトかと言われると、これは回答が難しく、エジプトに持ち込まれた学問ではないかとの見方ですが、未だはっきりとしません。

錬金術は、化学、医学、哲学、心理学、また宗教など枝葉を伸ばすことになりますが、こうした専門分野ができるにつれ、時代とともに衰退した学問のような扱いに変わっていきます。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

では、錬金術を理解する上で大事なポイントを5つ説明します。

エメラルド・タブレット

その1。錬金術を語る際に必ず出てくるエメラルド・タブレット。

「エメラルド・タブレット」

神話上の人物である錬金術師ヘルメス・トリスメギストスが、エメラルド板に12の錬金術の奥義を記したものが「エメラルド・タブレット」です。

ちなみに、
ヘルメス・トリスメギストスとは、「ギリシア神話のヘルメス神」と「古代エジプト神話のトト神」の威光を併せ持ち、これら神話の神と同一視された人物。舌を噛みそうなこの名前は「三重に偉大なるもの」という意味があります。

そんな偉大なる錬金術師が記した内容を以下に置きます。あなたの頭の中ではどのようなイメージが浮かぶでしょうか。

1. これは偽りのない真実、確実にして、この上なく神聖なことである
2. 唯一なるものの奇跡を成し遂げるにあたっては、下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし
3. 万物が一者から一者の瞑想によって生まれるがごとく、万物はこの唯一なるものから適応によって生じる
4. 太陽が父であり、月がその母である
5. 風はそれを己が体内に運び、大地が育む
6. これが全世界の完成の原理である
7. その力は大地に向けられるとき、完全なものとなる
8. 地上から天上へと昇り、再び地上へと降りて、上なるものの力と下なるものの力を取り集めよ。こうして汝は全世界の栄光を手にいれ、全ての暗闇は汝から離れ去るだろう
9. 火から土を、粗雑なるものから精妙なるものを、ゆっくりと巧みに分離せよ
10. これはあらゆる力の中でも最強の力である。なぜなら、それは全ての精妙なるものに打ち勝ち、全ての固体に浸透するからである
11. 世界はそのように創造された
12. 驚くべき適応はこのようにして起こる。こうして私は全世界の哲学の三つの部分を持つがゆえに、ヘルメス・トリスメギストスと呼ばれる

私が太陽の働きについて述べることは、以上である

「ALCHEMY & MYSTICISM」より引用

特に難解な言葉ではないけども、曖昧模糊としていて何かモヤモヤする文章に感じることと思います。人によっては化学的に、または哲学的に感じることでしょう。

錬金術といえば、この「曖昧な言葉」と「謎に満ちた図象」が多いのですが、これは精霊が文法的な拘束によって束縛されていると考える、バビロニアの影響とされています。神がアダムとモーゼに示したprisca sapientia(神聖な知識)は、俗衆が悪用しないように保存される必要があったため、正確な言語表現を避け、またエジプトのヒエログリフの再生という考えにもとづいて象徴的で難解な図象という「絵文字」にしたわけです。

「大地が育む」

トリマ・プリマ

その2。神話には太陽や月を擬人化し名前を付けて登場させます。例えば、「太陽」を古代エジプト神話では「ラー」、ギリシア神話では「アポロン」、インド神話では「スーリヤ」のように。

錬金術でも同じく名前を付けて、呼ばれているものがあります。それがトリマ・プリマ(三元質)と呼ばれるこの3つ。

・硫黄
・水銀
・塩

これらは「ラー」「アポロン」「スーリヤ」のように、錬金術の中で使用される名前であり、あなたが学校でお勉強したものとは別物です。そのため、「哲学の硫黄」「哲学の水銀」「哲学の塩」と呼ばれることもあります。

この「硫黄」「水銀」「塩」がただの名前だとしたら、元となるものは何でしょうか。

それは「魂」「精神(スピリット)」「肉体」のこと。

ややこしいですが、このトリマ・プリマも象徴画の中では様々な人・動物・聖獣などで描かれます。それぞれの本質と象徴はいくつかありますので、その一部をご覧ください。

魂は、万物が独自に持つ本質。能動的で種を発生させる。
=硫黄、太陽、雄鹿、赤いライオン、(浄化前)赤い男、(浄化後)赤い王

精神(スピリット)は、普遍的な原質。受動的で生命の力がある。
=水銀、月、万物の母、(精錬前)ドラゴン、蛇、緑のライオン、(精錬後)白い王妃、白いライオン、ユニコーン、自然の中の処女性

肉体は、第三原質。魂とスピリットの橋渡し役、または火付け役。
=塩、結合体、子供

植物の場合、
植物は肉体であり、植物を発酵させたアルコールは精神/スピリット/スピリッツ(そんなお酒もありますね)であり、植物から抽出される精油は魂と考えます。

ハーブでチンキや蒸留水を作る人はピンときますか。

太陽と月の結婚

その3。これは錬金術を行う上で、必要な工程を擬人化した物語です。

先ほどのトリマ・プリマの象徴を思い出しながら、錬金術の工程とその象徴画を見てみましょう。

すべての生命の本質は、愛と闘争という二極の力が衝突することによって生じます。この二つの力は、溶解と凝固、分解と結合、蒸留と濃縮、収縮と拡張という二つの過程に相当します。

「魂」は能動的であり、その強い力は世界を支配しようと動き、「精神」は受動的で、この世界が幸福であるようにと願っています。この絵は攻撃的な赤い男(魂)が、白い女(精神)に対し猛り狂う熱情をぶつけていますが、白い女は従順に従わず、赤い男に抵抗を示しています。

両者の闘争は、2匹の争い合う雄犬雌犬であったり、2羽の戦う鷲で描かれ、いずれも両者は相打ち状態で死に至ることとなります。それは、愛と憎しみの関係は何も生み出すことなく導くことを象徴しています。

平和的な調和を達成するには、「魂」と「精神」を上昇させ、かつ浄化させる必要あります。種(肉体)が地に落ち、哲学的な水銀が外殻を分解すると、そこには純化した魂があり、精錬された精神と結合し、新たな芽が生まれます。
赤い王(魂)と白い王妃(精神)が婚礼の床で共に過ごし、調和し昇華していく様が描かれます。

この結合による子が超越的な両性具有の子であり、精神が吹き込まれた太陽の赤い子供となります。これは精神的に昇華された魂とも言えます。
太陽(硫黄)と月(水銀)は結合し、月は子を孕み、やがて形になり、水銀を含む水から生まれ出ることで表現されます。

難解な象徴画が少し見えてきたんではないでしょうか?

物質はただ合わせるだけではなく、浄化させる必要があること。浄化された物質同士を合わせることで、新たな物質が生まれる。それは二つのパワーを得た最上のものであるということ。
そんな物語であったことが理解できましたか?

詩人であり画家であるウィリアム・ブレイクは男性原理を時間と結びつけ、女性原理を空間と結びつけて描き、錬金術師パラケルススは、油性の可燃物である硫黄と揮発性のある水銀を塩の仲介によって結びつけ、植物や金属を基礎とした医薬、霊的な魔術、カバラ、およびキリスト教的神秘主義の分野の自然神秘的概念を構築しました。

この物語は「太陽と月の結婚」、「黎明のはじまり」、薔薇十字団の「化学の結婚」など様々な形で描かれ、また執筆されました。

フォーシスターズ

その4。「四元素」もまた錬金術には欠かせない知識です。理系な言葉を使用すると脳みそが嫌がりますので、勝手な見出しにしています(意味はありません)。

地、水、空気、火のこれらの元素は「万物の四つの根源」と呼ばれています。これもまた錬金術では、化学における元素や同じ名前を持つ一般の物質とも別物になります。切り離して考えてくださいね。

左から地、水、空気、火
錬金術の作業の四つの段階であり、四つの強さの火を表す

上図の女性たちが乗っている丸い石をご覧ください。この四元素は三角形で象徴され、上昇する火と空気は上向きの三角形、下降する水と地は下向きの三角形を示し、四元素は一つのまとまりとして「十」で表されています。

それぞれの元素は、二つの対照的な性質を分かち持っています。例えば、水の中には空気があり、アルコール(水)の中には火があるといった関係です。

地(土)、水、空気(風)、火と性質の関係

四元素は、プリマ・マテリア(精錬された物質)が乾燥・寒さ・湿気・熱という四つの特質と結合し、変容することで形成されます。こうした性質を操作することによって、元素の基本的な構成を変化させ、それによって変容を引き起こすことが可能であると考えられました。

七つの惑星

その5。冒頭でも書きましたが、錬金術と占星術は立派な学問であり、天空の七つの惑星は錬金術師にとって聖なる存在でありました。

惑星の記号は、太陽☀️と月🌒、そして四大元素➕で構成されている

明るい天体である太陽、月、金星はそれぞれ、金、銀、銅があてられました。ゆっくりと運行する土星は鉛、燃えているように赤い火星は鉄、動きの速い水星は流体の水銀に、そして木星は雷のように音を立てる錫があてられています。

なぜ木星が雷と結びつけられるかというと、木星のジュピターは古代ローマ神話のユピテルより名付けられています。ギリシア神話だとゼウスであり、宇宙を破壊するほどの「雷」を武器としています。そこから錫が割り当てられたのでしょう。

錬金術師は、七つの惑星は地上の万物と共鳴し影響を与えると考えており、作業前には惑星の位置を計算し、術を行う最適な日時を決めて実行していました。

太陽と月の結婚

古代の哲学者たちは、世界が完全な調和によって構成されている、すなわち、地上から星々の天まで、完全なオクターブであると想定していた。

A.キルヒャー「宇宙の音楽」

七つの惑星は音楽とも結びつけられました。
ピタゴラス理論によれば、ミクロコスモスの霊魂とマクロコスモスの宇宙は共に、理想的な割合に基づいて組み立てられていて、それは音の連続によって表現できるとあります。

天の音階における個々の惑星の音程は、その公転周期から導かれており、公転周期の違いは、音の感覚に対応すると考えらました。

モノコード(一弦琴)は全体の中心から宇宙のすべての生命の調和をもたらす内的な原則である

そして最後に、グノーシス主義の宇宙論を。
光の霊魂は七つの領域を通って地上に下ります(誕生します)。地上に下りるまでの過程で、金星では不遠慮さ、水星では欲深さ、火星では怒り、木星では虚栄心などの性質を帯び、否定的な特性を刻印され、物質という汚れた層(肉体)を身に纏わされることになります。

死後、地上の肉体はタルタロスすなわち冥界に留まり、霊魂は上昇し元の場所に戻っていこうとしますが、これまた七つの惑星によって妨害されます。この七段階に及ぶ浄化の道を開くためには、正確な知識(グノーシス)が必要となります。

最後の段階にいるのがサトゥルヌス、英語ではサターンであり、時間と空間を創造した神である。また彼は楽園を守護していた蛇でもある。

続きます

錬金術を理解するためのポイントを説明したところで、結構な長さになってしまいました。

エメラルド板の解釈は多岐に渡り、それは化学にも哲学にも応用されました。まるで聖書のように。

錬金術は衰退した学問でもなく、漫画の中の話でもありません。現代では、大型加速器でもって原子核を溶融させ、元素の変容に成功しています。錬金術は今なお進化し続けられています。

CERN

この数年で世界は変わりました。

ただ時間に身を任せるだけではなく、その目で世界の変容が見えるように知識を得ましょう。皆様の一助となりましたら嬉しい限りです。

次は、錬金術とこの世界のお話を。
ではまた。

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naruh_at この記事が少しでも智慧の理解に役立てましたら、お気持ちをご検討ください。いただいたお気持ちは次の執筆のために大事に使わせていただきます。多くのかたが興味を持ち理解を深める手段となるような記事を目指して頑張ります。