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和歌・短歌・俳句の日英翻訳(1) 「あをによし 奈良のみやこは 咲く花の にほふがごとく いまさかりなり」

あをによし 奈良のみやこは 咲く花の にほふがごとく いまさかりなり


萬葉集の巻三の328番目、小野老(おのの おゆ)が詠んだ歌です。原文は万葉仮名で書かれており、次のとおりです。

青丹吉 寧楽乃京師者 咲花乃 薫如 今盛有

以下、用いられている表現について解説します。

「あをによし」は、奈良の枕詞です。

「あおに」=「青丹」とは、宮殿の青瓦(緑青)と丹塗りの柱のことのようです。当時としては、この世でいちばん華やかな色使いだったことでしょう。

当時の奈良の都の人口は20万~10万と推定されています。

10人に1人が役人でした。文字どおり政治都市として大盛況だったと思われます。

「咲く花」ですが、桜だという説と、すべての花だという説があるようです。

「にほふ」という語は、この時代には赤色が鮮やかに映えることを意味しますが、そのほか他の色についても用います。

その後、香りにも用いるようになったそうです。

同じ日本語であっても、時代がかわれば意味もかわります。翻訳でもっとも気をつけなければならないポイントのひとつです。

作者の小野老は、大伴旅人配下の役人です。

この歌は、天平元年(729)に小野老が大宰府に着任した時の宴席で披露したものとされています。

奈良で生まれた歌という印象が強いのですが、じつは大宰府でつくられました。

さて、英訳です。ここでは、リービ秀雄の『英語で読む万葉集』(岩波新書)の訳をご紹介します。

The capital at Nara

beautiful in green earth

flourishes now

like the luster

of the flowers in bloom

同書でリービは、「今盛りなり」の訳語に、花と同じ語源を持つflourishを選んだと述べています。

こうした工夫は、翻訳という作業のなかでもっとも楽しいところのひとつです。

☆☆☆

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