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花菖蒲 前編

あらすじ
 いつものように、あいつから散歩に誘われた私は、いつものようについていく。歩きながら、思考の海にはまっていく私。これまで何度もめぐり、そして終わりももう、見えている。何が、見えているのだろう。何を、考えているのだろう。あいつは、どうするのだろう、かーー
創作大賞2025  オールカテゴリ部門


 ぱたり と雨がやんだと思ったら、しばらくしてあいつがきた。

 ふぅ 読みかけの本にしおりを挟み、ベッドから立ち上がる。部屋を出て、階段を静かに降りると、うがいをしてから玄関に向かった。そうして扉を開けた瞬間に見えたのは想像通り、待ち構えていたようなあいつのにこり顔。あいかわらずの、ゆるい憂え顔。ひどく中途半端な、かなしい笑顔。何を思っているのだろう、か。どんなふうに感じているのだろう、か。一瞬、目を閉じると、私は手を ひらひら 振りながら、多少ぶっきらぼうにたずねてみる。表情はいっそう深くなり、ますます混同していくように、思う。

「いや、なに。せっかく雨が上がったから、散歩でも、と思ってね」

 そぅ 興味なさそうに答えると、あいつはいっそう深くなった表情のまま首をかしげるように傾けた。私もそれに返す。条件反射のなれ合い。あいつはまた元の表情に戻る。ため息をつきかけて、代わりに歩き出す。並んでついてくる。何の迷いもなかった。

 雨上がりは適度な冷気をその身にはらんで、それに対をなすかのように日差しはひどい。矛盾を包んでいくように、空気はあいまいなものだ。もう日は沈みかかっているし、雲はまだ多少厚かった。傘を持っていったほうがいいかもしれない、なんて考えが頭をよぎったが、戻りはしなかった。降ったら降ったで濡れればいい。それは私の言葉ではないけれど。

「苗の中途半端な感じは、雨上がりだとなおさら映えるね」

 いまいち抑揚のない、けれど感傷的にも思える声。ちらちら 顔を盗み見るように視線だけ傾ける。あいつは前を向いている。たいして見ているわけでもなさそうで、大きな反応を示しているわけでもなさそうだった。すぐに視線を戻して どうでもいいだろう と、心の中でつぶやいた。ふっと 気がついて、思わず、勢いよくあいつの姿を見ようとしてしまう。もしかしたら、待っていたのかもしれない。けれど、完全に機会を見失ってしまった。

 それを押し隠すように、反対側に首を向ける。湖面のような畑が見える。地面にぽっかりとくぼんだいくつもの轍はそれぞれU字を描いた川になっていて、なるほど、田んぼと違って透明感が際立っていた…… ふぅ 勢いあまって、あいつの顔が少し、見える。田んぼを見ていた。

 濡れたアスファルトは特に不便さを感じるわけでもなく、雲の映し出された水たまりを見下ろしながら、それを適当に避けた。はしゃぐわけでもなく、あいつはわざわざ飛び越している、ときもある。ぴょん とっ 跳ねながら、着地点を間違えたのか失敗したのか、はたまたわざとなのか、二回に一回は水たまりをゆらした。私はそのたびごとに口を挟むようなまねはしなかった。特に被害は受けなかったし、気にするほどのことでもなかった。ただそのたびごとに前に出るあいつに追いつくために、少し早足になるだけ。ただ、それだけだった。

 ぴしゃり ぴしゃり 遠くで車が水をはねている。人はだめでも、水はいいんだね。そのとき私は、どんな言葉で一蹴しただろうか。それとも、今みたいに、何も言うことはなかっただろうか。ささやくような声は空気を震わせることもなく届いてくる。いつ、どこで、誰が、届けてくれるのか。あいつは――どうなのだろう。あえて、それを確認することはしなかった。ただ、隣にいるだけ。速度も変わらず、距離も適度に。……何回、思ったことだろう。ぴちゃ 水たまりを踏みつける。人はだめでも――また遠くで車が水をはねた。

 横断歩道を渡ると、役場までの道に入った。ぐるり その道を示しているように佇む桜並木の下は、濡れた跡がだいぶ目立っている。葉の傘は十分に機能していなかったのだろう、むしろ、今ではその役割を放棄していまだにまばらな雨を降らしてでもいるように、水滴が滴り落ちていた。こういうのを二面性と言うのだろうね、それは、どうなのだろう、か。あいつはわざわざその下を歩いている。それでも、私は文句を言うこともなく、一人離れて避けることもなく、そうして会話をすることもなく並んで歩いた。当たるも八卦当たらぬも八卦、なんて、占いのようだ。そんなことを気にしても仕方ない。

 あいつは滴り落ちる水滴をものともせず、顔を上に向けて歩いている。何を、見ているのだろう。何が、見えているのだろう。葉の裏の空。私もためしに見上げてみる。暗い。暗緑の空……あいつには、何が、何か、見えているのだろう――

 ――香りは、すでに、ここからでも、十分だった。肌をなでるような風は鼻に触れると香りを置き去りにしていった。反射的に鼻を拭うと同時に視線を戻す。……ここからでもしっかりと見える。あいつは、どうなのだろう。この香りに何か思うことはあるのだろうか。あいかわらず、顔を上に向けている。香りには気づいているのだろうか。顔を見ているだけでは、わからなかった。

 グラウンド側の歩道に渡ると、先ほどまでそこを歩いていた私たちを車がひいていった。残像は水に変わって飛んでいく。私はその姿を目で追っていって、何があるわけでもなかった。車は遠くへと消えていく。横たわる体は一瞬にして崩れ落ち、あたりへ飛び散っていく。ふと、あいつの気配がなくなった、と思ったら

 より強い気配が背後から漂い、意識を強制的に持っていった。それはまるで、紫の衣をまとい、狐の尾をうねらせながら威嚇する妖が待ち構えているようで、重い空気がまとわりついてくる。私は息を落とし、振り向いた。……そこには、もちろん不穏な光景は一切ない。ただ妖しげな色が艶やかさと気品、美しさをたたえているだけだった。そこから漂う香りは、さながら桃源郷への誘いのようなものだろうか。思わず、息を落とす。葉は水滴を落とす。ぴちゃり コンクリートに水が滴っている。香りは落ちることなく鼻の下にとどまっている。拭っても、拭っても、変わらずに、残る。うんざりする。

 あまりにもきつい刺激を私が好まないためか、妖術にかかることなく、どこまでいっても心奪われることがなかった。名所として毎年多くの人が通っていることは知っている。きっと多くの人を魅了し、より美しさを保つため誘っているのだろう。実際にたくさんの人が通っている姿をよく見ている。さぞかし妖も鼻高々だと、思う。けれど、私にはどうしてもいいものだとは思わなかった。決してこの香りが嫌いなわけではない。むしろ、好ましいとも思う。ただ、あまりにも強すぎるのだ。あいつは何にも感じていないのだろうか。それとも、妖術にすっかりかかっているのだろうか。それこそ毎年どころではなく、あいつはここによく通っている。……それがわかっていてなお付き合う私も、あいつからしたら心奪われているように、感じているだろうか。それとも、何も感じていないように思えるだろうか。どちらにせよ、もしかしたら私は、この妖ではなくあいつが放つ「何か」の妖術に、かかっているのかも、しれない。

 しかし、今は周りに誰もいなかった。雨上がりが間もないからだろうか、夕方のこの時間帯がだろうか、それとも、その両方か。その他にどんな理由があるかわからないけれど、私たちはこの空間を独占していた。それゆえなのか。妖が躍起になって、私たちを誘おうとしているのは。

 コンクリートの歩道からグラウンド側の歩道へ足を踏み入れる。水を吸った土のやわらかさを ぐにょり 感じて数歩、あいつより遅れる。散りばめられた藁や枯草のようなものが歩くたびに引っついてくる。坂のほうは滑りそうで怖い。そうして――

 広がっているラベンダーを前に、あいつは立ち止った。

 思わず、私も同じタイミングで立ち止まる。あいつはそのまま、動かない。あたりを見渡しているわけでもなく、ただ、正面を向いている。視界には、あいつの背中と――

 こうしてラベンダーを見ながらくるくる回る人形のような心地になるのは、頭の中にはもうこの場からの全景がすでに映し出されているから、だろうか。それとも、何かの催眠なのか。あちらこちらにかわいらしく一本、一本 ちょこん 座りこんでいるわけではなく、一つの株にそろう姿は巨大な生きもののようにも見える。それが群れをなしているのだ。それは、もしかしたら、紫の――大地そのものなのかもしれない。

 蜂たちがラベンダーにぶら下がっては飛び上がり、また別の一本にぶら下がる。なんだか重力を感じていないみたいだ、空気に重みがないように見えてしまう。それでも、この肌に触れる空気はこんなにも浮遊感があるようには思えない。

「香りが……やはり強いね。雨上がりは」

「そうね、……」

 ためらって、結局、口をつぐんだ。あいつはまだ後ろ姿。どんな表情をしているのだろう、何を見ているのだろう。少しも、動く気配もない。打ちひしがれているようにも、何かを待っているようにも、見えなくもないし、見えるとも言えない。それはたんに、私の妄想だ。想像してみて、そう断言してみても、いいのかもしれない。けれど、それはあくまで、私の妄想にすぎない。……結局、そうなんだ。あいつは、いったい……。あぁ、でも、きっと。私も、同じだろう。はたから見たら、きっと。他人の視線なんて、そんなものだ。

 ふわり やわらかくなでる風が鼻腔をかすめて鮮明すぎる土とラベンダーの香りを残していく。雨に浄化された空気がすべてを無に戻している、のだろうか。案外、雨上がり、というのは、重要な要素なのかもしれない。この、あまりに鮮明で、生々しい香りも、その影響なのだろう。そうして、香りの刺激を感じているうちに食しているような錯覚に陥るのは、どんな変化が起きたから、なのだろう。何気なく、唇をなめとる。舌で残り香を味わうような、不可思議な感覚。うまく説明のできない、よくわからない感覚――首を軽く振る。これ以上は、何も考えなかった……。

 ようやく、あいつが動き出した――と思ったら、またすぐに立ち止まる。ほんの少しの距離、それでも歩くたびに、土のやわらかさが感触を残していく。私もまた、あいつの少し後ろで立ち止まる。咲き広がるラベンダー、誰もいない空間、雨上がりの静寂。それでも貸し切り気分に浸れないのは、なんだろう。視界を、何かが横切る。

 誘われるがままに目で追っていくと、小さな、小さな、白いちょうちょが、そこにいた。ひらひら 華麗に飛んでいる――よりはむしろ千鳥足のようにも思えるのは、私の見え方、なのだろうか。判然としない、不明瞭な、感じ。蜂と交わって……いや、交わることなく、お互いに何の興味も示さないままあたりを飛び回ったり、ラベンダーに止まったり、している。干渉することも、なく。お互いに、それぞれに。私は視線だけを ちらちら 動かしながらそれを見ていた。そうして ふいに 視線が止まったと思ったら、あいつを見ていた。いつの間にかしゃがみ、ラベンダーに手を伸ばしていた。私はあいつを見下ろす形でその動きを見つめる。指先をかすかにひっかけ、ラベンダーがゆれる。その先にはちょうちょが飛んでいたが、あいつはきっと、気づいていないだろう。そっと 触れて、触れて、おもむろにあいつは立ち上がった。すっと 振り向いて私を見る。また、あの顔だ。

「紫に彩る野原の風を受け香り際立つ雨どけの空」

 ふいに紡がれた言葉はすぐに意味を結ぶことなく、それでもバラバラになる前に自然と脳内に響いているうちに少しずつ形になっていく。その調べを読み解く前に首をかしげてみせると、あいつは格別得意気な表情をすることもなく、再度同じ言葉を口にする。私はその口元を見つめたまま音を唇で幾度か作り、反芻する。だんだんと、語りかけてくる。

「……雨どけの空、雨溶けの、空、ね。雨の溶けた空気、っていうこと?」

 静かに、うなずく。

「雨の溶けた空気と、雨の退いた空を、かけてみた」

 あぁ 雨退けの空 ね。

 ようやくつながった言葉に、そのよしあしなどがわかるわけでもなく、ただ、再びささやくように聞こえてくる。そうして、何とはなく、情景も思い浮かんでくる。

「そうなると、紫に彩る野原、はラベンダーのこと? さすがに、それはわかる人はいないんじゃない?」

 本当に考えているのか定かではない ぼぅ とした顔で軽く見上げている。それもまた、私の見え方であって、悩んでいるのだろうか、考えているのだろうか。……どうしても、私には、そうは見えなかった。

 少しして、あいつは私を見つめて、時が過ぎる。

「まあ、ね。そうかもしれない。ただ、少なくとも君にはわかったのだろう? それでいいんじゃないかな」

 いつものあいつの顔を見つめ返しながら そう とだけ言う。相変わらずの、顔。私たちの間をちょうちょが横切る――思わず、目で追っている――さなか、あいつも同じように追っていたのだろう、か。蝶々ではすぐに思い浮かばないな、と独り言のようなつぶやきが聞こえたかと思うと、私の反応を待つことなく反転して歩き出した。

 ラベンダーは道々に広がっているわけでもなく、先の道を示してくれているわけでもなく、ただ、圧倒的な存在感を持って佇んでいる。見ていようと、見ていなかろうと、そこにいるのがわかるほど。とらえて、はなさない。五感を支配されているような気配すら感じる。あいつは、どう感じているのだろう。ふぅ 一息ついて、しっかりと前を見る。先を見る。足元はやわらかくも、大地はたしかに、そこにいてくれた。

 いつも悩むけれど、この形状も、土手、と呼んでいいのだろうか。グラウンドを ぐるり 囲むように上下二段の歩道が続いている。いや、歩道、と呼んでいいのだろうか。反対側の水路に続く道は舗装もされていて、途中からランニングコースにもなっている。そのくすんだ赤い道は、頼りがいのある反発があり、歩きやすいし、走りやすい。しかし、このグラウンド側は、道も坂も境目のない草や土で、とても歩きやすいとは言えなかったし、歩道、というよりは行く人が歩道と信じているだけの、ひとつの場所であった。

 下段より下――グラウンドは、湖と化していた。坂も途中で沈んでいるほどの水がたまり、静けさが増している。

 気まぐれなのか、そうではないのか、あいつはわざわざ先へは進まずに水路側のほうへ降りていった。あやめを見に行こう。どこまで行くのか不安もあったが、さすがに向こう側までは行かないだろう。いつぞやか、しっかりと言葉にして見に行ったときも、そうだった。期待通り、水路わきの道を少し歩いただけであった。ここからでも、いくつか咲いているのが見える。……たぶん、そうに違いない。

「あそこまで行けば、たしか五十種くらいは見られたけどね。まあ、ここでも十分かな」

「今からあんなところまで行く気にはならないわ」

 胸をなでおろしながら、果てしなく続いているくすんだ赤い道を遠くまで眺める。息を吐いて、水路側に目をやると、あやめが数本、咲いている。群生しているわけではないけれど、少し目を遠くにやれば ぽつり さらに咲いているのが見える。

 あいつの視力ではもしかしたら、先のほうにあやめは見えないかもしれない……あいつは、しゃがみながら、水路向こうのあやめに目がいっていた。

「あの――川向うに咲いているのは、あやめだろうか。それとも、花菖蒲、だろうか」

 じっと、見つめながら……それは、私に問いかけているのだろう、か。

 濃い紫。純白。筋の走る薄紫の中に黄色い模様。薄いピンク。ここまで違うと、全部が違う種類に思える。あやめ、花菖蒲、その他にも似たような花がいくつもあったような気がする。こんなにも似ていて――それどころか同じように見えて、別の存在である、ということ。……そんなの、当たり前のようにも、思える。それこそ、あやめ、や、花菖蒲、と言っているだけで、本当はまったく別の名前なのかもしれない。人間、であって、あいつ、や、私、で別の名前であるのと同じように。花――あやめ(花菖蒲)、で、あるだけで。それなのに、こんなにも種類がある。それなら、私たちも同じ、なのだろうか。人間、と、名乗っているだけで、まったく別の特徴のある、別の存在、なのだろう、か。わざわざ、学物的に名称をわけるだけの。

 首を振る。大きく息を吸い、長く吐く。ただ、黙り、心の声さえ排除して、その花を見続けた。ふと、

 あいつは、ここが川に見えているのだろうか。そんなことが頭によぎる。水路……、川…… ふぅ もう、どっちでもいい。

 そう、そんなこと、知っても知らなくても、どうでもよかった。花、水、を見ていることに変わりはない。それは街中を歩いている名も知らぬ人を見ているようなものだ。きっと、向こう側からしても、私たちを知っていることはないだろう。同じことだ。それで、いい。

 私は、そう あやめ を 見ていた。それだけで、十分だ。

 あいつは きっと 違うのだろう。

 あやめから目を離し、あいつの顔を覗く。

 また、あの、微笑に似た、表情。じっと 考えているような そうでもないような 顔。たしかに……いつもの、あいつの、顔。それでも、私はこの顔を見ていると、無性に切なくなる、そんなときがある。私から、何をするわけでもない。何か、働きかけるわけでもない。ただ、勝手に、そう思い、思い、思っている、だけ。私の、本当に、勝手な、感情。無理に、目をそらすこともない。あいつも、あやめを見続けている。あやめは、どうなのだろう――

 もし、私の想像通りなのだとしたら、誰も、彼も、ただ……ただ――孤独なだけの、何物でもない、ひとつの 存在 なのだろう。

 なんて、そんなこと――

 あいつは、まだ、動こうとしない。こうしてただ見下ろしながら見守っているだけの私は、なんて薄情なんだろう、と思う。手を差し伸べることもしない。声をかけることもしない。待っている。待っている、だけ。あいつが、自分から何かするのを。それこそあいつの影と添うように、そばにいるだけ。こんな関係で、いいのだろうか。

 私には、ただ笑いあっているだけの関係に耐えられそうもなかったし、それならむしろ、孤独でよかった。……そう、むしろ、私には、この関係こそ上等なものに思える。少なくとも、私はそれで、満足していた。孤独とは大勢の中で初めて感じるもの。あの、あやめも、そうなのだろう。きっと、そうだ。自ら付き添っているわけでもなく、離れているわけでもなく、自分の仲間なのかもわからずにひとくくりにされている、こと。そのほうが、耐えられるものではない。私は、あの、あやめに、憐れを感じた。

 それもすべて、詭弁、なのだろうか。単に、私の見え方、であって、たいしたものではないのだろうか。それこそ、こんなふうな関係こそさみしいものであって、やりきれない、のだろうか。そんなことない、と思いながら、相変わらず、ただ見下している、私。隣に寄り添うわけでもなく、何をするわけでもない。寄り添えてさえ、いないように思える。

「悪いね、行こうか」

 にこやかな表情を浮かべながら、そんな言葉をくれる。私はそれにこたえた。あいつが歩き出すと、私も後ろをついていく。無性に、やるせない。


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ふみ いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。