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【イベントレポート】グローバルノマド、福岡という選択ー海外移住者はなぜ福岡に集まるのか? Vol.4

7月28日、火曜の夜。天神のEngineer Cafeに、デジタルノマド、写真家、大学教員、デザイナー、経営者……立場も国籍もばらばらな人たちが集まりました。

実は開始直前、熊本地震の影響で、天神も大きく揺れました。
新幹線が止まり、熊本から駆けつけてくれるはずだった仲間は来られなくなりました。地下鉄も一時停まって、開催が危ぶまれる中ー

それでもこの夜、会場にはご縁のある方々が集まってくださいました。

そしてその2時間後には、誰も予想していなかったプロダクトが、この部屋で立ち上がっていました。

ゲスト・大瀬良亮さんの"Colive Fukuoka"

お迎えしたのは、株式会社遊行 代表/Colive Fukuoka 代表の大瀬良亮さん。

Colive Fukuokaは、デジタルノマドと福岡の関係をデザインする10日間のプログラム。昨年は57カ国から約500人が集まり、世界のノマドによる投票でグランプリに選ばれています。

出てきた数字も、私たちの"当たり前"をそっと揺さぶるものでした。

会員は、昨年10月の1,000名から、いまは1,620名。 昨年の参加者500名のうち、およそ4割が日本人。 ボランティアだけで50名以上。

「日本人が4割」には、こんな理由がありました。

海外のデジタルノマドを集めるプログラムは、 実はほとんど外国の人ばかりで、地域の人がいないんです。

でも、Colive Fukuokaでは、大瀬良さんやチームの尽力あって、「我が町にも来てくださいよ」と手を挙げる日本人が集まってくる。五島に来てよ、香川に来てよ、金沢に来てよ、と。

だから参加者アンケートで「来てよかったこと」の1位になるのが、「地域とのつながり」なのだそうです。

抹茶ウォーズ ──「困りごと」を"関わりしろ"にする

その地域とのつながりにも、「Authentic Connection」偽りのない本当の絆を大切にされている、という話にこの夜、一同釘付けになりました。

それは、抹茶ウォーズと題した、今年のコンテンツの紹介のお話でした。

いま世界は抹茶ブームです。アメリカのZ世代は、コーヒーより抹茶を飲んでいる。「じゃあ抹茶をつくっている人たちはウハウハでしょう」と、みんなが思う。
ところがどっこい。実は、全然儲かっていません。
なぜ? なぜなんだ、というところで、答えが知りたくなる。

観光プロモーションなら「おいしいですよ、人気ですよ。(ぜひ買ってください)」で終わるところを、あえてリアルな困っていることから開示する。

じゃあ、実際に福岡に来てください。 お茶の農家さんたちに来てもらうので、直接話を聞きましょう。

この話を聞いて、福岡に来ることを決めた参加者も少なくないそうです。

住む場所はもちろん、経済的にも自由を獲得した人が多い、という世界のデジタルノマド。彼らの「IKIGAIー生き甲斐」についても、本場の日本の足元から一緒に考えたい。

と、IKIGAI も冠の一つとなるColive Fukuokaのテーマ。

問いから始めて、ただの消費者的なさすらいではない、短い滞在であったとしても、そこで人と深くつながり、地域への貢献という人間的な関わりを持つ。

奇しくも、私たちがナシテフクオカで大切にしてきたことと、深いところで重なっていました。

共創。違いを競うのではなく、掛け算にすること。
契り。一度きりの交流で終わらせず、また戻ってこられる関係をつくること。
そして「関わりしろ」。私たちは毎回、参加者の皆さんに「ただ聞くだけのお客様ではなく、自分ならどう関われるかという目線で」とお願いしています。

大瀬良さんが抹茶の話でされていたのは、まさにそれを地域の側からやっている、ということでした。いいところだけを見せていたら、人は消費者のままです。 困りごとを開いた瞬間に、その人は関わる余地を得る。

質疑では、こんな問いも出ました。「この補助線の引き方は大瀬良さんならでは。スケールさせるには、大瀬良さんが10人必要なのでは?」

返ってきたのは、こんな言葉でした。

まさに、その学校をつくりたいなと思うレベルです。 地域おこし協力隊の方も、地域に行ったとて、自分で肌身で覚えていくしかない。 それってもったいない。もっと共有知をつくっていくべきだと思う。

では、いちばん簡単なメソッドは何か。

「悩みを相談してください」「悩みを持ってきてください」と、地域が言うこと。 それだけでも全然違います。すごく聞いてくれるんです。

実例として語られたのが、長崎の質屋さんの話でした。引き取った着物にシミ汚れがついていて売れない。困っている、とノマドに投げた。すると「法被にしたらいいじゃん」と返ってきた。

1ヶ月プログラムの初日に相談して、1ヶ月後の閉会式で、全部が法被になって戻ってきた。そしてアイデアを出したノマド自身が、最初のお客さんとして買った。

この夜、参加者の皆さんが「体温が上がった」と赤い付箋に書いてくださったのも、ほとんどがこの話でした。

地元の企業の方が、やり場のない悩みを、アイデアを持っている人に相談できる。そのパイプがあること自体がすごくいいなと思って。 そもそもやり方がわからない、何をしたらいいかわからない。スタートラインに立つ以前の問題を抱えてらっしゃる人が、すごく多いんです。

インバウンド向けのカメラマンとして活動されている方の言葉です。

ワークショップ ── 私たちも、やってみた

後半はワークショップです。

正直にお伝えすると、この日、後半に使える時間は1時間ほど。その中で、生成AIを使ったアウトプットをする!という無茶に思えるゴール設定のワークショップでした笑。

「リアルな声を元にした共創」という話を聞いたのだから、自分たちでもやってみよう、と。

お話を聞きながら、自分の体温が上がったことを赤い付箋に、下がったこと・疑問を青い付箋に書き出す。そして自己紹介と一緒に、その付箋を読み上げてもらう。

ラーメン屋で修業しながら柔術に通い、山笠を走りながら撮影する人。同時通訳の実務経験から、AI翻訳のデータベース構築まで手がけた人。先週、津屋崎の山笠を担いで肩が痛い人。佐賀で個展を開くデザイナー。

「肩書きよりも、この場との"関わりしろ"を意識してください」とお願いしたからか、普段にない深い相互理解の話題が、次々に出てきました。

次に、黄色い付箋
自分の名前を書いて、「今日このメンバーで話したい」と思う話題に直感で貼っていただくーすると、貼り終わったとき、話題は自然にふたつに分かれていました。

「地域の課題から始める」と、「AI時代の、人間ならでは」

そして、こうお願いしました。

絶対にこれが一番だよね、とかじゃなくていい。 このメンバーならでは、この場ならではの「勢いと勘」で、ここをちょっと掘ってみようってやりきってみてください。 そのポイントに対して、試しにここまで作ってみようよ、と意思決定する。 しかも、実際に作ってみる。

正解じゃなくていい。でも決める。そして実際に作る。

残り時間は、30分でした。

最後の30分で起きたこと

「AI時代の、人間ならでは」を選んだテーブルの話をします。

出発点は、意外なところからでした。DX系のお仕事をされている方の一言です。

僕は、できるだけAIに任せて人を減らそうという仕事をしています。 でも逆に言うと、残すところはもう明確なんです。

「じゃあ、その"明確"を言葉にしません?」とお聞きすると、出てきたのが「ナラティブ」「ストーリー」でした。「うちはこういう会社だから、これをやるべきだよね」という合意形成は、データから逆算してつくれるものではない、と。

そこに写真家の方が重ねます。

感情って、よくも悪くも言語化してこなかったんです。 その時の雰囲気に閉じ込めたりする。逆に、言語化するとぼやけたりする。 写真はその場を切り取るけど、周りの情報も全部閉じ込めてしまう。

さらに、ゲストのお話に接続していきます。お茶の葉を刈る音、匂い。説明せずに、体で感じるもの。 「体験しないと伝わりません」で終わらせないために、どうするか。

そこで出てきたのが、オノマトペでした。

しとしと。しんしん。プカプカ。カプカプ。どんぶらこ。

宮沢賢治は「カプカプ浮かぶ」と書きます。プカプカではなく、カプカプ。

──この違いを、説明できますか。

そして、こんな逸話も共有されました。ロマンス詐欺の相手に「桃が流れてきました。なんて言いますか」と聞いたら、「どんぶらこ」と答えられなかったから、日本人ではないと分かった──。

同じ雨を見て、僕はザーザーだと思う。でもあなたはシトシトだと思う。 その齟齬こそが、味わうべきものなんじゃないか。

ここで「じゃあ、AIで作ってみましょう」となりました。投げたのは、こんな一文です。

オノマトペと体験を組み合わせたシステムをつくりたい。 自分が体験したいオノマトペを選んで体験して、最後に自分のオノマトペをシェアできる。 二人以上で参加する体験ツアーに使えるもの。 世界のノマドの人が使えるシステムだと嬉しいです。

すると、ものの数分で実際に動くプロトタイプが立ち上がっていました。

オノマトペを選ぶと、画面の見え方が変わります。「キラキラ」は瞬きをするかのように。「ふわふわ」はゆっくり浮かぶように。そして一つ「オノマトペ」を選ぶと、おすすめの体験ミッションが生成される。

木漏れ日を探し、光が割れる場所に並んで立つ。

ふたり一組で、実際にその場所を探しに行く。体験のあとに、名前と出身地と選んだ感覚を残す。そして最後に「分かちあう」──ポルトガルの人は、この言葉をどう受け取ったのか。日本人同士でも、答えは違う。

「これ、30分でできたとは思えない。」

制作の途中で、こんな言葉も出ていました。

こういう使い方、AIしたことないんで、めっちゃ面白い。 作りたいものを考えること自体が、結構むずいんですよね。 ここは結局、人間ならではじゃないですか。

そして、10月のColive Fukuokaへ

会の最後に、大瀬良さんがこんな言葉をくださいました。

僕らは割と限られたリソースのなかで、根を詰めて作品をつくっている感覚なんですけど、 こうやっていつもと違う分野の人と話をすることで、 別の視点から、自分たちがやっていることが見られる。自分の地域が見られる。
Colive Fukuokaでは、国籍も言語も文化も全部超えてこういうことをやっていきたいと思っていたので、すごくイメージが湧きました。
ぜひ10月は、みんなでファシリテートする側で一緒に動けたらいいなと、ワクワクしました。

ゲストとしてお招きした方が、その日のうちに「次はファシリテーター側で」と言ってくださる。そして——

10月1日から10日のColive Fukuoka 2026のなかで、ナシテフクオカとして体験ワークショップを主催させていただけることになりました。

世界57カ国からノマドが集まる10日間。あの30分から生まれたものを、そこで実際に使ってもらえることになります。

正直、私たち自身がいちばん驚いています。

「勢いと勘でいい、でも実際に作ってみよう」と言って始めたことが、その日のうちに次の場所を見つけてしまった。困りごとを開いた人のところに人が集まるという話を聞いた夜に、それが自分たちの身にも起きたということかもしれません。

内容はこれから詰めていきます。またこの場で報告させてください。


ナシテフクオカ × Colive Fukuoka、コラボ続々

そして8月7日は、Colive Fukuokaさんとのコラボ第一弾。英語メインの回を開きます。

バンクーバー在住のシリアルアントレプレナー・工藤博樹さんをお迎えします。複数の事業を立ち上げてきた起業家で、「福岡と海外を、事業でどうつなぐか」を実践者の目線で聞ける夜になります。

英語がメインですが、身構えなくて大丈夫です。

AIもありますし、日英どちらもわかるメンバーがサポートします。何より、参加者の多くも英語が母語ではありません。完璧な英語より、伝えたいことがあるかどうか。大瀬良さんも駆けつけてくださるので、ぜひご一緒しましょう!

※ナシテフクオカでは、さらにイベント続々。
8月31日はベルリン特集、9月19日はアフリカ(モザンビーク・エチオピア・チュニジア)特集と続きます。

Video Podcastでも、大瀬良さんのお話を

イベントに先立って、ポッドキャスト「ナシテ福岡ラジオ」でも2本お届けしています。

【#09】なぜ福岡が、世界のノマドに選ばれたのか Colive Fukuokaとは何か。住吉神社・能楽殿という会場選びに込められた哲学、ノマドフェス発祥の地・ブルガリア/バンスコとの繋がり、そしてナシテフクオカとの偶然のご縁まで。

【#10】ゲスト・大瀬良亮さんご本人が登場 2026年のキーワードは「Authenticity」──AIが偽物を量産する時代に、価値が上がるもの。"抹茶ウォーズ"の背景。電通で首相官邸のSNSを担当していた大瀬良さんが、なぜ「旅のデザイナー」になったのか。被爆三世として、長崎という故郷から世界を見つめてきた原点。

この2本を聴いてからアーカイブを観ていただくと、話がぐっと立体的になるはずです。


当日ご参加いただけなかった方へ

イベントのアーカイブ動画は、ナシテフクオカのメルマガにご登録いただいた方へお届けしています。

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 https://www.vida-academy.jp/r/mxDp3ENmF15q/register?mtid=i6rMSg5QRlQN


この夜わかったことを、最後にもう一度。

福岡が世界のノマドに選ばれている理由は、魅力を上手に見せているからだけではなさそうです。

困っていることを開示できるから。
それに対して「じゃあ、こうしたら?」と誰かが手を出せるから。
そして手を出した人が、いつのまにか当事者になっているから。

長崎の質屋さんの着物が法被になったのも、あの夜30分でプロトタイプが立ち上がったのも、たぶん同じことが起きています。

福岡から世界へ。越境の実験は、まだ始まったばかりです。





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