5才からはじめるプリンセス入門③|第二章 情報の集め方(小鳥は使えないので別の方法)
前章で、小鳥はしゃべらない、という重要な事実を確認しました。
念のため、もう一度書いておきます。
小鳥は、しゃべりません。
絵本では、しゃべります。おとぎ話でも、しゃべります。
なんなら歌って踊って、お城の掃除まで手伝ってくれます。
しかし現実の小鳥は、朝の4時から窓の外で絶叫するだけの生きものです。
このことを、5才のうちに理解しておくと、あとが楽です。
さて、小鳥が使えないとなると、情報はどこから集めるか。
答えは、お城の中にいる、しゃべる人たちです。
ざっくり分けると、こうなります。
① 侍女(じじょ) あなたの身の回りの世話をする人。いちばん近くにいる。いちばん多くを知っている。いちばん、おしゃべりが好き(重要)。
② 料理人 厨房は、お城でいちばん情報が集まる場所です。なぜか。食材を届けに来る人、お皿を運ぶ人、毒味をする人(います)、全員が通るからです。
③ 庭師 庭にいます。静かです。でも、実は、いちばん多くの「人が見られたくない場面」を見ています。こわいです。
④ 大臣(だいじん) しゃべりません。しゃべるとクビになるからです。でも、表情と、目線と、咳払いで、多くを語ります(読み取れるようになるのは7才編です)。
ここで、5才のあなたが使える最強の武器を紹介します。
「ねぇねぇ、おしえて?」
これです。
大人は、5才に弱いです。
とくに、まっすぐな目で「ねぇねぇ、おしえて?」と言われると、
だいたいの秘密をしゃべります。
なぜか。
5才は、情報を持っていても使えないと思われているからです。
覚えておいてください。
「使えないと思われている」は、最強のポジションです。
王子さまに直接聞いても、教えてくれません。
お父さま(国王)に聞いても、「大人になったらわかる」と言われます。
でも、侍女に「ねぇねぇ、となりの国の王子さまって、どんな人なの?」と聞くと、侍女はこう言います。
「あらまぁ、お姫さまったら、そんなこと気にしなくていいのよ。あの国の王子さまなんて、まだ6才なのに、もう犬を3匹飼っていて、乗馬も下手で、ピーマンが食べられなくて、このあいだは池にはまって大臣に叱られて……」
ぜんぶ、しゃべってくれます。
侍女のおしゃべりの中には、重要な情報が、山ほど含まれています。
たとえばさっきの話から、5才のあなたが読み取るべきはこうです。
まだ6才 → 自分と近い年齢。対話の余地あり。
犬を3匹 → 生きものを飼える環境と性格。悪くない。
乗馬が下手 → 運動が苦手。コンプレックス候補。
ピーマンが食べられない → 味覚が子ども。好き嫌いが残っている。
池にはまって叱られた → 好奇心がある。監視されている。
これだけの情報が、侍女ひとりから、5分で集まります。
小鳥の絶叫を30分聞いても、ゼロだったのに。
ただし、注意点があります。
情報は、集めたぶんだけ、裏を取らなくてはいけません。
侍女の話は、侍女が見た世界です。
料理人の話は、料理人が見た世界です。
庭師の話は、庭師が見た世界です(しかも、こわい)。
それぞれの話は、一部だけ、本当です。
だから、こうします。
同じ人について、最低3人から話を聞く。
これを、お城のプリンセス調査法、通称「三方聞き(さんぽうぎき)」と呼びます(いま、わたしがそう呼ぶことにしました)。
3人の話が一致している部分は、ほぼ事実です。
3人の話が食い違っている部分は、そこに誰かの思惑が混じっています。
5才には、ちょっとむずかしいかもしれません。
でも、大丈夫です。
あなたは、プリンセスです。 ふつうの5才ではありません。
(もし、この本を読んでいる35才の現実逃避中のあなたも、大丈夫です。三方聞きは、会社でも使えます。たぶん、そっちのほうが切実に必要です。)
さて、情報が集まったら、次にやることがあります。
集めた情報を、「見える場所に置かない」 ことです。
5才で、となりの国の王子の情報を把握していると知られたら、何が起きるか。
まわりが、警戒します。
警戒されると、情報が入ってこなくなります。
情報が入ってこなくなると、生存戦略が立てられません。
だから、こうします。
知っているけど、知らないふりをする。
これを、プリンセスの基本姿勢、通称「ねぇねぇ、おしえて?」の第二段階と呼びます。
第一段階は、情報を集めるための「ねぇねぇ、おしえて?」。
第二段階は、情報を持っているのに、まだ何も知らない顔をするための「ねぇねぇ、おしえて?」。
この差、5才にはちょっと早いです。
でも、
使えないと思われているポジションを保つには、これしかありません。
さて。
ここまでで、あなたは、
婚約者が何者か(だいたい)把握し
情報の裏の取り方を覚え
それを隠す方法まで身につけました
5才、なかなか忙しいです。
次の章では、ついに、「婚約者との初対面」 について見ていきます。
お楽しみに。
イチゴ、もう食べ終わりましたか?

