十一日目 お酒
俺は酒を飲まない。
そう、一滴たりとも。
大学生の時、一番苦労したのは飲み会の誘いをどう断るかだった。
何かにつけて飲み会を開催したがる同級生は、特に悪意もなく「もちろんお前も来るよな」と無邪気に笑う。
俺はそういうとき、決まって、俺の気も知らないくせにと心の中で悪態をつきながら、表面上は「彼女がやきもち焼くからパス」と笑って、のらりくらり交わすのだ。
もちろん彼女などというものはいない。
いるとしたら、画面越しのミントちゃんくらいだろう。彼女は今日も、ぽやぽやした表情で俺を見つめ返す。
ゲームのホーム画面には、この間ゲットした、ガチャのレア5のカード。
ヨーロッパ風のどこかの屋外で、アフタヌーンティーを楽しむミントちゃん。
どうせ飲むなら俺はミントちゃんとダージリンの紅茶を飲みたい。
すると、
「達也さんお紅茶にお砂糖入れますか」
と、ミントちゃんが微笑みかけてくれるシーンまで頭に浮かんできて、俺は泣けてきた。
俺はやっぱり現代のサラリーマンじゃなくて、ヨーロッパの貴族令嬢に生まれるべきだった。
そんなことを考えながら俺は、会社帰りに買ったちょっと高い紅茶の茶葉を蒸らした。
