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【人間関係 夫婦関係 親子関係】 怒られたくない人ほど、怒られる

「怒られると思って、言えませんでした」

部下がミスの報告を3日間遅らせた理由がこれだった。

怒られたくなかったから、言わなかった。
言わなかったから、怒られた。

こう書くと、ほとんど笑い話のように見える。

だが本人の中では、たぶん笑い話ではなかった。

一日目は、まだ大丈夫だと思っていた。
二日目は、今さら言いにくくなっていた。
三日目には、もう自分から言う選択肢が消えていた。

報告しなければいけないことは、わかっている。
早い方がいいことも、わかっている。
遅れれば遅れるほどまずいことも、わかっている。

それでも言えない。

なぜなら、正しい行動を取るには、
まず怒られる瞬間を通過しなければならないからだ。

人は、正しいことがわからないから間違える。
そうではなく、正しいことをする入口に、
不快な場面が置いてあるから間違える。

怒られたくない人は、
問題を解決しようとしていない。
怒られる瞬間を避けようとしている。

ここが、この話の出発点だ。


怒られたくない、の正体

「怒られたくない」という動機の正体は、
不快感の回避だ。

怒られる瞬間は不快だ。
責められる。失望される。
相手の顔が曇る。
その場の空気が重くなる。

だから避けたい。
それ自体は、自然な感情だ。

問題は、その不快感を避けようとすると、
行動の基準が相手ではなく自分になることだ。

相手が何を必要としているかではない。
自分がどうすればこの場の不快を免れるか。
そこに意識が吸い込まれる。

だから、怒られたくない人は、
妙な行動を取る。

報告しない。
確認しない。
聞かない。
声をかけない。
あるいは逆に、何でも聞く。

一見するとバラバラだが、根は同じだ。
相手にとって必要なことをしているのではなく、
自分が怒られにくそうな行動を探している。
だから、ずれる。


職場の外でも起きていること

この構造は、職場だけの話ではない。

妻の機嫌が悪そうだ。
怒られたくない夫は、黙って様子を見る。
下手に声をかけて地雷を踏みたくない。
だから、黙る。

「なんで声をかけてくれないの」と、妻は怒る。

あるいは、家事をやろうとして
「どうすればいい?」と聞く。
怒られないために確認している。
勝手にやって間違えたら怒られるからだ。

「そのくらい自分で考えて」と、妻は怒る。

どちらも、夫は動いている。
ただし起点は妻ではない。
自分が怒られないことだ。
だから、動いているのに怒られる。

以前この場で書いた「手伝おうか」という言葉も、
同じ構造を持っている。
「手伝う」という言葉は、
家事の主体が自分ではないことを前提にしている。
そして「指示してくれればやる」という
安全地帯を残している。

やる気はあります。
言ってくれればやります。
勝手にやると怒られると思いました。

どれも一見、慎重で協力的に見える。
だが相手からすると、こう聞こえることがある。
「私は責任を取りたくありません」と。

怒られたくないという動機は、
しばしば責任を相手に戻す。
だから怒られる。

子どもも同じことをする。

忘れ物をした。
怒られたくないから黙る。
宿題をやっていない。
怒られたくないからごまかす。

親は後になって知り、怒る。
忘れ物のことだけではない。
黙っていたこと、ごまかしたこと、
その両方に。

怒られないために隠した。
隠したことで、怒られる理由が増えた。


先送りにした怒られは、消えない

怒られたくないなら、
なぜ怒られる行動を取り続けるのか。

答えは単純だ。

今すぐ報告して怒られるのは、
確実で即座な痛みだ。
黙っていてバレるのは、
将来の不確実な痛みだ。
人は、今の確実な痛みより、
将来の不確実な痛みを選びやすい。

だから黙る。
先送りにする。
見なかったことにする。

これは意志が弱いからではない。
人間として、かなり自然な反応だ。

ただし、自然だからといって、無害ではない。

先送りにした怒られは、消えない。
ミスは隠すほど大きくなる。
夫婦の溝は放置するほど深くなる。
子どもの問題は先送りするほど根が張る。

怒られたくない人は、
怒られを避けているのではない。
怒られを未来に積み立てているだけだ。
しかも、利息がつく。

先送りを繰り返すほど、
不快回避の癖は強くなる。
今の痛みから逃げれば逃げるほど、
次の痛みが大きく見えるようになる。
大きく見えるから、また逃げる。

怒られたくないという動機は、
怒られを消さない。
怒られへの恐怖を育てながら、
怒られを積み立て続ける。


「怒られたくない」は、
感情としては自然だ。
なくならないし、
なくそうとしても無理だと思う。

ただ、その感情を行動の中心に置くと、
たいていおかしなことになる。

言った方がいいことを言わない。
聞いた方がいいことを聞かない。
謝った方がいいことを曖昧にする。
返した方がいいメールを、そのままにする。

その瞬間だけは、少し楽になる。

怒られたくない人は、
怒られを避けているのではない。

怒られを後払いにしているだけだ。

しかも、たいてい分割払いにはならない。

ある日、利息込みで一括請求される。


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