んの魔法 | 長編小説 | 第4章 初めてのスポン(第8話)
やった!僕にもできた!
トリックなんかじゃない、これは本当に魔法だ!
僕は、ワクワクしながら、まだ少し震えているこぶしを握りしめた。
これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。
始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第4章 初めてのスポン(第7話)
本編はここから
使い方が書かれていても、これでは意味がわからない!
10歳の僕には難しい言葉なのだった。
忘却は軽く…?どういうこと?時という言葉はわかるけど、時間のことだろうか?
でも、まあ、特に大事な物を入れなければ、問題は起きないということだ。それに、何より、スポンの本にスプーンが入った時に、気持ちがふわっと軽くなって、なんだか気分が晴れたのが心地よかった。
「言葉の終わりに「ん」が付くものだったらスポンできるんだよね?」
「そうじゃ!」
部屋の中をくるりと見渡したが、すぐに「ん」のつくものが見あたらない。そこで、ゆっくりと歩きながら部屋を探索することにした。
とりあえず、カウンターの上を探してみた。メガネ…誰が使うのかな?
ミルクティー…まだ飲んでないや!そう思って、一口飲んでみた。とっても甘かった!
左の方に目を向けると、マフと目があった。
マフは、光にかざすと銀色に見える背中の毛を、ゾゾゾ~ッと逆立てながら、真横に首をブンブンふって、
「みゃーには「ん」がついてないニャ!」と、騒いでいる。
僕は慌てて両手を横に振って、
「マフはスポンしないから、大丈夫だよ」と答えた。
それから、視線を右に移すと、「ん」のついた物が置いてあった。
“新聞”だ。それは僕の見たことのある新聞だった。本より大きいサイズだけど、スポンできるのかな?
僕は、早速新聞を本の上において、あの呪文を唱えてみる。さっきよりも大きな声で、両手から何かを放つように、手のひらを広げてみた。
まるで魔法使いみたいだ!
「エッヘン、オッホン、スッポンポン!」
すると、本を隠すほど大きな新聞も、ふわっと浮き上がって、スポンと本の中に消えた。
本には、写真のように鮮明に新聞の絵が描かれた。
やった!大成功!
何だか、最高に楽しい気分になってきた。

次は、第4章 初めてのスポン(第9話)につづきます。
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