リジェネラティブ経済入門:エレン・マッカーサー財団『Circular by Nature』を、読む
エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation、以下EMF)が2026年に公表した報告書『Circular by Nature——バイオベース素材のサーキュラーエコノミーに向けた政策アジェンダ』は、バイオベース素材にこそ循環経済の原則を本気で適用すべきだと訴えます。本報告書は、ラテンアメリカ・カリブ海地域サーキュラーエコノミー連合(Circular Economy Coalition for Latin America and the Caribbean)の議論への独立した貢献として、EMFが作成したものです。サーキュラーエコノミーが次に向き合うべき主戦場は「バイオベース素材」である——これがこのレポートの主張です。
本稿では、この報告書の論点を体系的に、かつできる限りわかりやすく読み解いていきます。バイオベース素材を扱う事業者の方、農林業や素材産業に関わる方、サステナビリティ戦略や政策立案に携わる方、そしてネイチャーポジティブ経済の構造を理解したいすべての方にとって、自社や自地域の「次の一手」を考えるための地図になれば幸いです。それでは、今日も楽しんでいってくださいね!

バイオベース素材と、循環経済
私たちが日々身にまとう綿の衣服、住まいを支える木材、靴底やタイヤに使われるゴム、ノートや包装に使われる紙、ソファや鞄に使われる皮革——こうした「バイオベース素材(bio-based materials)」は、ファッション、包装、家具、建設、モビリティといった巨大なグローバル産業を支えているにもかかわらず、循環経済の議論の中では驚くほど後回しにされてきました。「再生可能な資源なのだから、循環の問題はそれほど深刻ではないだろう」という暗黙の前提が、長らく働いていたからです。ところが、この前提こそが落とし穴でした。報告書は、バイオベース素材を「植物、動物、藻類、微生物といった再生可能な生物資源から、全量が由来する素材」と定義しています。つまり、その素材の総質量のなかに、化石由来の成分や有限な素材が一切含まれていないものを指します。ここが重要なポイントで、「一部だけバイオ由来」という素材ではなく、「全量が生物由来」であることが条件になっています。バイオベース素材の供給源は多岐にわたります。海藻や魚といった水産由来の資源も含まれますが、本報告書はとくに陸上由来の素材に焦点を当てています。具体的には、木材、パルプ・紙、綿やその他の天然繊維、ゴム、皮革といった、農業や林業を通じて陸上で生産される素材が中心です。なぜ陸上由来を優先するのかといえば、これらの素材がファッション、包装、家具、建設、モビリティといった、規模の大きいグローバル産業の中核を占めているからです。
ここで、サーキュラーエコノミーの基本原則も確認しておきましょう。循環経済は、設計を起点とした3つの原則に立脚しています。第一に、廃棄物と汚染を生み出さないこと。第二に、製品と素材を可能な限り高い価値で循環させ続けること。そして第三に、自然を再生させることです。製品の設計のあり方と、生産システムの管理のあり方を根本から問い直すことで、素材をできる限り長く使い続け、廃棄を避け、自然システムが再生する余地をつくり出します。これは、経済成長を資源採取からますます切り離していく(デカップリングしていく)アプローチでもあります。

サーキュラーエコノミーを図解する際によく使われる「バタフライ・ダイアグラム(蝶の図)」では、価値が生物学的プロセスを通じて循環する「バイオスフィア(生物圏)」と、価値が技術的サイクルを通じて維持される「テクノスフィア(技術圏)」が区別されています。しかし実務の世界では、バイオベース素材の循環戦略は、この2つのシステムを橋渡しすることを目指します。つまり、素材が生物学的な経路と技術的な経路のあいだを行き来できるようにし、両方にまたがって価値創出を最大化していくのです。たとえば、木材はまず建材として技術圏で長く使われ、最終的に役目を終えたときに生物圏へ戻って栄養として土に還る——こうした「橋渡し」こそが、バイオベース素材ならではの循環の妙味だといえます。
バイオベース素材こそ、循環社会の本命
循環経済の追い風と、見過ごされてきた死角
2026年4月時点で、100を超える国が国家レベルのサーキュラーエコノミー・ロードマップや行動計画を採択しており、これは2024年からわずか2年で34%もの増加にあたります。線形(リニア)な経済モデルが、生態系のレジリエンスと長期的な事業の安定性の双方を損なっているという認識が広がるなかで、成長を資源依存から徐々に切り離し、長期的な経済の強靭性を高める経済モデルへの合意が、確かに形成されつつあります。しかし、ここに死角がありました。サーキュラーエコノミーの理念は、再生可能なエネルギーと資源への移行を描いているにもかかわらず、現実の政策枠組みは、化石由来の代替素材と比べて、バイオベース素材への注意が決定的に不足していたのです。さらに、それらの素材の調達・生産・利用が、本当にネイチャーポジティブ(自然再興)な成果をもたらすかどうかを担保する仕組みも、十分に整っていませんでした。

13の循環経済戦略を分析してわかったこと
EMFは、世界各国の13の国家サーキュラーエコノミー政策戦略を分析しました。その結果、紙、天然繊維、バイオケミカル、木材といったバイオベース素材が政策に登場する場合でも、それらはもっぱら「有限素材の代替品(substitutes)」として位置づけられていることがわかりました。つまり、化石由来のものをバイオ由来に置き換える、という発想に偏っているのです。その素材がどのように育てられ、製造され、循環し、そして土に還っていくのか——こうした問いには、ほとんど目が向けられていません。循環経済政策は、上流の土地利用の圧力、生物多様性への影響、栄養塩(ニュートリエント)の循環について、おおむね沈黙したままです。認証制度についても同様で、「ある素材が産業的に堆肥化できるかどうか」は検証しても、「その素材が土壌の健康を回復させるかどうか」や「それを大規模に処理するインフラが実在するかどうか」までは検証していません。政策枠組みは、ライフサイクル全体を一貫して見る視点(フルライフサイクル・レンズ)を当てることに失敗し続けており、その結果、サプライチェーン、使用段階、そして使用後(エンドオブライフ)の経路が、循環経済の原則とかみ合わなくなっています。再生型の生産、再利用や二次利用を通じた価値の保持、そして自然システムへの安全な再統合が、体系的に組み込まれていないのです。加えて、これらの戦略は、バイオマス由来の廃棄物、端材、残渣の「下流での利用」——たとえば農業廃棄物の転用や、廃棄物のエネルギー化(waste to energy)——を優先する傾向があります。こうしたアプローチは、追加的な価値やエネルギー安全保障を生み出し、埋立てを回避する点で意義があるものの、単独で実施されると、既存の線形システムを最適化するだけにとどまり、システムそのものを再設計することにはつながりません。
18のバイオベース素材政策を分析してわかった「逆向きの死角」
興味深いことに、バイオベース素材をより直接的に統治する政策——バイオエコノミー戦略、農業・林業の枠組み、産業成長政策——を見ると、まったく逆向きの死角が存在することがわかりました。報告書は、世界各国の18のバイオベース素材関連政策戦略をさらに分析し、製品のライフサイクル全体にわたる循環の機会が捕捉されていないことを確認しています。これらの政策の多くは、一次生産の段階ではネイチャーポジティブな成果をもたらす実践——たとえばアグロフォレストリー(森林農業)や、作物・家畜・林業を組み合わせた統合システム——を推進しています。ところが、バイオベース素材の投入そのものをインセンティブとして与えることで、結果的に生産の集約化や土地転換を促す需要シグナルを生み出してしまい、生物学的サイクルを成り立たせている再生のロジックを、かえって損なってしまうことがあるのです。
バイオエコノミー政策の枠組みは、しばしば「置き換え(substitution)」を報酬として与えます。化石由来の投入物を、バイオ由来の代替物に置き換えることを評価するのです。しかし、その素材が実際に循環するかどうかは問いません。つまり、初回の置き換え(first-use substitution)は報われるのに、バイオベース素材の二次利用は報われない、という構造です。このロジックのもとでは、バイオ由来の使い捨て製品が、バイオエコノミーの目標を満たしながら、同時に循環経済の原則とは真っ向から対立する、という奇妙な事態すら起こり得ます。その結果、耐久財や半耐久財において、再利用、寿命延長、リファービッシュ(再生)、リサイクルといった循環戦略が、しばしば見落とされます。木材や繊維といった生物素材から、複数回の連続的な利用を通じて最大限の価値を引き出してから生物システムへ戻す——そうした行動に対して、既存の規制枠組みは意味のあるインセンティブを提供していません。この乖離はエンドオブライフの処理にも及び、多くの政策が、バイオベース素材や製品をエネルギーに変換することを依然としてインセンティブづけています。これは、場合によってはエネルギー安全保障に貢献するものの、価値を保持し、素材をより長く生産的に使い続ける機会を逃していることにほかなりません。

このように、循環経済政策とバイオベース素材政策は、いわば「鏡像のような死角」を抱えています。前者はバイオベース素材を「単なる代替品」としてしか見ず、後者はバイオベース素材を「抽出して製品化しエネルギー化する再生可能な商品」としてしか見ない。両者がそれぞれの論理を強化し合った結果、この一世代の政策開発は、線形なバイオベースシステムを「再設計」するのではなく、「最適化」してきたにすぎないのです。再生型の生産、連続的な素材利用、そして自然システムへの栄養の還元は、どちらの政策にも体系的に統合されていません。これが、気候・生物多様性・汚染という三つの危機への対応を遅らせ、同時に大きな経済的・社会的価値を取りこぼす原因になっています。
リジェネラティブなアプローチ—バイオベース素材のためのサーキュラーエコノミーの枠組み
EMFは、バイオベース素材を再生型の循環経済に組み込むための、相互に補強し合う循環経済戦略の枠組みを提案しています。

この枠組みの根底には、ひとつの重要な認識があります。それは、バイオベース素材は「無条件に再生可能」なのではなく、「それを生み出す生態系に、再生する空間と時間が与えられている限りにおいてのみ再生可能」だ、という認識です。採取が回復を上回るとき——土壌の健康が劣化し、生物多様性が減少し、土地転換が続くとき——再生可能なはずの資源は、実質的に有限な資源へと変わってしまいます。したがって、化石由来の素材をバイオベース素材へ置き換えることには確かに大きな可能性がありますが、その置き換えは、土地利用、生態学的な文脈、そしてライフサイクル全体の影響に照らして、厳密に評価されなければなりません。バイオベース素材のバリューチェーンに循環経済の原則を組み込むことは、選択肢のひとつではなく、必須の前提なのです。
報告書は、よく機能する循環システムにおいて、バイオベース素材と製品が備えるべき性質を、5つの設計原則と、それらを貫く1つの社会的次元として整理しています。順に見ていきましょう。

原則1 再生的に、そして二次原料から調達されていること
第一の原則は、再生可能なバイオマスを、生態系を枯渇させるのではなく、回復させるかたちで調達することです。再生的に調達されたバイオベース素材とは、再生可能な生物資源に由来し、自然システム——土壌の健康、生物多様性、生態系機能、炭素隔離——を回復・向上させる農林業の実践を通じて生産された素材を指します。具体的な手法としては、アグロフォレストリー、パーマカルチャー、シルボパストラル(林間放牧)システムなどが挙げられます。重要なのは、どの手法を選ぶかは地域の文脈に依存する、という点です。採用すべきアプローチは、生態系ごとに異なる地域の生態学的プロセスと整合していなければならず、社会経済的な文脈も反映する必要があります。より多様な作付けシステムは、農業生物多様性や土壌の健康を支え、病害虫の発生を抑え、気候変動へのレジリエンスを高めると同時に、農家の収入源を広げます。さらに、農業や林業の生産から出るバイオマス残渣、廃棄物、副産物を、バイオベース素材や製品の原料として用いることで、専用のバイオマス生産や追加的な土地転換の必要性を減らすことができます。総じて、再生的な調達とは、森林破壊を避け、土地利用の変化を抑え、生物多様性を保護・回復させ、バイオマスの採取を生態学的な限界の範囲内にとどめることを意味します。

原則2 懸念物質を使わずに設計されていること
第二の原則は、バイオベース素材が、ライフサイクル全体を通じて人と環境にとって安全であり、有害な残渣を残すことなく自然へ戻れるように設計されていることです。製品や素材は、安全に土へ還ることを妨げるような有害な投入物や懸念物質(substances of concern)を含まずに作られている必要があります。たとえば、家庭でのコンポスト化、そして土壌・淡水・海洋環境での生分解性について、堅牢で広く認知された規格仕様を満たす包装を設計する、といった取り組みがこれにあたります。残留するプラスチック汚染を避けるためには、この「最初から有害物質を設計に入れない」という発想が決定的に重要です。
原則3 耐久性と価値保持を前提に設計されていること
第三の原則は、バイオベース素材から作られた製品や部品を、耐久性と修理可能性を念頭に置いて設計し、経済の中で最高の価値を保てるようにすることです。製品は、耐久性、モジュール性、そしてメンテナンスと修理のしやすさを備えて設計されるべきです。そうすることで、製品に含まれるバイオベース素材の内包エネルギーと生化学的特性が、複数の利用サイクルにわたって最高の有用性で保持されます。たとえば建築の領域では、組み立て・分解・移設が可能な、木材ベースのプレファブ(事前製作)・モジュール建築の設計を広く採用することで、従来型の建設と比べて、資源採取、素材加工、排出を削減できます。さらに、リセール(再販)、レンタル、製品のサービス化(Product-as-a-Service)といった循環型のビジネスモデルは、製品をより長く循環させ、修理・再製造・リサイクルのための回収(テイクバック)を促します。これにより、収益がバージン素材の消費から切り離され、排出、汚染、生物多様性の損失が削減されます。ファッションの世界では、衣料のレンタルプラットフォームやリセールのマーケットプレイスが、製品をユーザーからユーザーへと移動させ、衣服がより長く使われるようにすることで、新たなバイオベース資源の採取の必要性を減らしています。
原則4 二次利用への素材再利用を前提に設計されていること
第四の原則は、バイオベース素材を、できる限り長く、複数の連続した用途にわたって生産的に使い続けることです。ただし、最も価値の高い用途は文脈に依存するため、地域の経済的・社会的・生態学的な優先順位によって決定されるべきだとされています。複数の利用サイクルを経たあと、製品や部品に含まれるバイオベース素材は、最終的にリサイクルやコンポスト化によって回収される前に、他のバリューチェーンでの用途を通じて経済の中で循環させ続けることができます。たとえば木材は、まず建設に使われ、次に家具やエンジニアードウッド(加工木材)製品に転用され、そして素材の品質が低下し用途を使い尽くした最終段階で、エネルギー回収に利用されます。こうした連続的な戦略は、同じ単位のバイオマスから、何重もの経済的価値を引き出すことを可能にします。

原則5 素材と栄養の回収を前提に設計されていること
第五の原則は、製品が、リサイクル、コンポスト化、バイオダイジェスチョン(生物消化)を通じて素材を回収し、自然システムへ安全に戻せるように設計されていることです。このためには、分解を妨げる設計上の選択——たとえば、永久接着剤や複雑な多素材の混合——から離れ、利用後にきれいに分離できるアプローチへと移行する必要があります。機械的な留め具の採用や、単一素材(モノマテリアル)設計がその例です。素材は、その組成と用途に応じて、紙や繊維からの繊維回収のような機械的リサイクル、有機物を再利用可能な分子成分へ分解するバイオリファイナリーでの処理、あるいはコンポスト化や嫌気性消化(アネロビック・ダイジェスチョン)といった生物学的サイクルを通じて回収されます。ここで決定的に重要なのは、これらの回収経路が設計段階で明確に定義され、回収と処理のインフラと整合していることです。素材が、実際に、そして地域で回収され、経済的または自然のサイクルへ再統合できなければ意味がありません。そして、バイオベース素材が、先行する再利用・修理・リサイクルを通じて可能な限りの経済的・機能的価値を提供し尽くしたあと、はじめて安全に自然システムへ戻るべきだとされています。そのためには、素材が現実的な環境条件下で真に生分解性を持ち、土壌や生態系を広く汚染しうる残留性・有害性の物質を含まないことが求められます。コンポスト化や嫌気性消化といったプロセスを通じて、これらの素材は栄養塩の循環と土壌の健康に貢献し、自然システムの再生を助けるのです。
ただし、報告書は重要な但し書きを付しています。すべてのバイオベース素材が自然へ戻れるわけではない、という点です。直接、あるいは産業コンポスト・嫌気性消化・バイオリファイニングなどの処理を経て自然に戻せるのは、特定のバイオベース素材に限られます。こうした処理に適さない一部のバイオベースプラスチックは、生物学的サイクルに入ることができません。また、汚染なしに製品本体から分離できない部品も同様です。「バイオ由来=必ず土に還る」ではない、という現実を、設計の出発点から踏まえる必要があります。
横串としての原則 公正で包摂的なバリューチェーンに支えられていること
そして、これら5つの設計原則のすべてを貫くのが、第六の、いわば横串の原則です。バイオベースの循環経済は、バリューチェーン全体にわたって公正な社会的成果を支えるものでなければなりません。バイオマスやバイオベース素材の生産は、農村部や先住民のコミュニティが土地と深いつながりを持つ場所で行われます。だからこそ、循環経済への移行は、彼らを正当な参加者として認め、その権利と文化を尊重し、知識を評価することによって、環境面と社会経済面の双方の成果を改善しなければなりません。移行はまた、小規模生産者やその他の地域のステークホルダーのニーズと現実を反映し、支援が一部の高付加価値なサプライチェーンだけに集中しないようにする必要があります。バリューチェーンの最初期の段階から、開かれた情報交換が、すべてのステークホルダーへの包摂と価値の公平な分配を確保するうえで不可欠です。さらに下流においては、安全な労働条件とスキル開発が同様に重要であり、循環経済が成長するにつれて、労働者が新たな雇用と経済的機会にアクセスできるようにします。
報告書が強調するのは、この社会的次元が、他の5つの原則に「付け足される」ものではなく、それぞれの原則に「本来的に内在する」ものだ、という点です。公平性と正義の観点を、設計・調達・生産・素材フローに組み込むこと——それこそが、循環システムを真に再生的なものにし、生態系を回復させ、それに依存するコミュニティの繁栄を確かなものにするのです。
ケーススタディ
スニーカーに見る、循環設計の実践
報告書は、一足のスニーカーを例にとって、これらの原則がどのように具体化されるかを描き出しています。

線形経済における典型的な靴は、ゴム、皮革、布という3つの主要素材から構成され、一方通行の販売を通じて流通します。これは、採取し(Take)、作り(Make)、捨てる(Waste)という、抽出的で浪費的なモデルそのものです。報告書が示す再設計では、この3つの主要素材を、利用可能な資源、耐久性の基準、環境上の便益(汚染、排出、エンドオブライフ処理)、そしてバリューチェーン上の経済的機会(リセール、リサイクル、バイオガス)に応じて、複数のバイオベース素材の選択肢で置き換えていきます。 たとえば、温室効果ガスの排出と結びつく従来の牛革は、再生的に調達された選択肢——アグロシルボパストラル(作物・林業・放牧の統合)システムで生産され、土地にネイチャーポジティブな成果をもたらす牛革——に置き換えられます。あるいは、パイナップルの葉から作られるバイオベースレザーや、サボテンやキノコから作られる革新的素材も、再生的に育てられ懸念物質なしで設計されている限り、興味深い代替候補になります。化石由来のゴムは、ヘベア(パラゴムノキ)から採取される天然ラテックスで置き換えられます。このゴムは、生物多様性を促進し森林破壊を避けるアグロフォレストリーを用いて育てられ、在来種の樹木から持続可能に採取されます。責任ある樹液採取(タッピング)の技術は、伝統的な知識と専門性に支えられ、地域コミュニティを支援すると同時に、樹木の長寿命を確保します。そして、従来の綿やその他の繊維は、ネイチャーポジティブな成果をもたらす実践で生産された綿や、素材回収と資源効率を支えるポストコンシューマー(使用後)のリサイクル綿で置き換えられます。これにより、さらなるバイオマス採取、温室効果ガス排出、生物多様性の損失が削減されます。
循環経済に適合させるため、選ばれた素材は懸念物質なしで設計され、安全な環境への回帰やエンドオブライフでの栄養回収を損なわない、天然で無害な染料が用いられます。加えて、靴は容易に修理できるよう設計され、必要なときに部品を分解して交換できるようになっています。リセール、レンタル、テイクバックといったビジネスモデルが、製品と素材の価値をより長く保持し、循環型の設計選択を促します。靴の寿命が尽き、もはや履けなくなったとき、素材は分離され、別の靴へとリサイクルされるか、家具の詰め物や建物の断熱材といった二次利用へと回されます。そして、他に選択肢がなくなった最終段階で、素材はコンポスト化されるか、バイオガスへと変換され、消化液(ダイジェステート)とその栄養が、安全に自然システムへ戻されます。
最後に、デジタル製品パスポート(Digital Product Passport)のようなトレーサビリティのツールを組み込むことで、バリューチェーンに関わるすべてのステークホルダーのあいだで、製品に関する情報交換を確保できます。これには、可能な二次利用やリサイクルの選択肢、そして再生的調達・包摂性・フェアトレードの実践に関する認証の情報などを含めることができます。
「責任ある置き換え」とは何か—軟包装の事例から
ここで、報告書が慎重に扱っているもうひとつの論点に触れておきます。それは、「バイオベース素材への置き換え(substitution)」は万能薬ではない、という点です。

化石由来の素材をバイオベースの代替物に置き換えることには大きな可能性がありますが、それは生態学的な要因によって制約されており、厳密な環境影響評価と、地理的な文脈への注意を必要とします。バイオベース素材は再生可能であり、化石由来のものより低い温室効果ガス排出を実現しうる一方で、土地利用の変化、富栄養化(ユートロフィケーション)、酸性化といった環境上のトレードオフを伴います。バイオベース素材は本質的に生態系依存・文脈依存であるため、すべての素材や状況に普遍的に当てはまる単一の解決策は存在しません。したがって、どんな置き換えの機会も、具体的な文脈、素材特性、用途の要件に合わせて調整し、環境上のトレードオフを比較衡量し、必要に応じて適切な緩和策を特定する必要があります。
報告書は、この「責任ある置き換え」を考えるための具体例として、軟包装(フレキシブル・パッケージング)の事例を取り上げています。こEMFの分析は、汚染との闘いにおいて紙ベースの軟包装が有効であるためには、4つの決定的な条件を満たす必要があると結論づけました。すなわち、地域でリサイクルされること、責任を持って調達・生産されること、技術的にも経済的にも成立すること、そして有害な化学物質と残留性プラスチック汚染を避けること、の4つです。さらにこの分析は、紙ベース包装への置き換えが、生態学的な限界を超えて木材需要を増大させてはならない、と強調しています。これを守るためには、バージン繊維の消費を制限し、非木材の素材代替を増やし、産業全体で良好な供給慣行を確保することが重要だとされています。素材の選択肢ごとの環境影響は、包装設計、地域の廃棄物管理システム、そして社会的・経済的な文脈に大きく依存します。だからこそ、最善の選択肢を見極めるには、相当な調査と地域のステークホルダーの関与が必要なのです。
この事例が示すのは、「バイオだから良い」「紙だから良い」という単純な置き換えの発想ではなく、地域の条件に即してケースバイケースで判断する姿勢の重要性です。
リジェネラティブな循環システムが生み出す、経済・環境・社会の価値
では、バイオベース素材のサーキュラーエコノミーは、いったいどれほどの価値を生み出しうるのでしょうか。報告書は、経済・環境・社会の3つの側面から、その便益を具体的な数字とともに描き出しています。

経済的価値——新たな収益源とイノベーションの地平
バイオベース素材を活用した循環経済は、価値創出のあり方を根本から変えることで、新たな経済的機会とイノベーションの経路を開きます。バイオマスの複数のライフサイクルにわたって価値を引き出すことで、企業は新たな収益源と新たな市場セグメントにアクセスできるようになります。再利用、修理、リファービッシュ、リセールといった循環戦略は、内包された経済的価値を保持し、資産を最高の生産的有用性でより長く維持することで、製品の寿命を延ばします。これは資産の稼働率とコスト効率を改善し、継続的な新規素材投入の必要性を減らし、製品のサービス化(Product-as-a-Service)や二次市場のような、より安定した反復的な収益を生み出すビジネスモデルを可能にします。
加えて、バイオベースの副産物や廃棄物の流れ——農業残渣、林業副産物、食品廃棄物など——を価値化(バロリゼーション)し、新たな製品や産業プロセスの貴重な投入物へと変えることで、新たなバリューチェーンと収益源が創出されます。再生型の生産形態への移行や、生物多様性を高付加価値な製品に活用することは、農家にも利益をもたらします。複数の研究によれば、移行期間を経たあと、再生型の生産システムは、より高い収量と、農家の収益性の説得力ある向上につながりうることが示されています。
素材におけるイノベーションの機会も大きく、しばしば付加価値の高い差別化製品を生み出します。企業はすでに、先進繊維、バイオケミカル、バイオベースの複合材といった、化石・鉱物由来素材へのバイオベースの代替物を開発しています。こうしたイノベーションは、より機敏で、循環経済ソリューションの推進においてインパクトを生み出しやすいスタートアップによって主導されることが多いのも特徴です。たとえばインドのMynusCoは、農業廃棄物をプラスチックの代わりになるバイオコンポジット・ペレットへと変換しています。ブラジル・アマゾンを拠点とするSeringôは、地域コミュニティがゴムの木から採取する天然ラテックス、オーガニックコットン、ジュート、アサイの種、そして天然染色といったバイオベース素材で作られた靴を生み出しており、各製品にはデジタル製品パスポートが付され、抽出から最終製造までの全行程を追跡できます。
バイオエコノミーの潜在力は、一般に考えられているよりもはるかに大きく、その機会は幅広いセクターにまたがりながら、大部分が未開拓のまま残されています。バイオベース素材を生産する国々にとって、この機会はとりわけ重要です。コモディティ(一次産品)の輸出から、再生型の生産、バイオマスの革新的素材への転換、そして修理・再利用・リサイクルを通じた地域内の再循環ループへと軸足を移すことで、これらの国々はより多様な経済的リターンを生み出し、国内産業を強化し、熟練した雇用機会を創出し、原材料輸出への依存を減らすことができます。設計上、バイオベースの循環経済は、その天然資源の基盤を継続的に再生させるため、経済的繁栄を環境劣化から段階的に切り離していくことを可能にします。
環境的価値——排出削減、汚染防止、生物多様性の回復
バイオベースの循環経済は、温室効果ガス排出と汚染の削減を含む大きな環境的便益をもたらし、同時に生物多様性を支えます。バイオベース素材は、多くのセクターにおいて、非再生・炭素集約的な素材の有力な代替物となりえます。建設は、最も素材集約的・炭素集約的なセクターのひとつですが、ここでバイオベース素材は、セメントや鉄鋼といった高排出の投入物に対する説得力ある代替を提供します。
バイオベースの循環経済では、廃棄物が設計によって生み出されないようにされ、有機残渣と副産物が価値ある製品へと変換されることで、埋立て、野外焼却、管理されない分解からの汚染と排出が防がれます。製品のエンドオブライフにおいて、嫌気性消化やコンポスト化を通じて栄養が土へ戻るとき、汚染はさらに減少します。同時に、製品をより長く使い続けることで、バージン投入物への需要が減り、土地への圧力が緩和されます。再生的に調達されたバイオマスと多様化された作付けシステムを優先することで、バイオベースの循環経済は、より多様な生息地を生み出し、土壌の健康を回復させます。これは、地下と地上の双方の生物多様性が繁栄する条件を整え、同時に水の保持力と炭素隔離を高めます。報告書は、こうしたバイオベース循環経済のアプローチを、国が決定する貢献(NDCs)や国家生物多様性戦略・行動計画(NBSAPs)に統合することが、これらの便益のスケールアップを支えると指摘しています。
社会的価値——バリューチェーン全体での雇用創出
バイオベースの循環経済への移行は、バリューチェーン全体にわたる雇用創出の機会を生み出します。これらの雇用は、再生型農業から、製品・素材・部品の修理・リファービッシュ・リサイクルにいたるまで、幅広い活動にまたがります。バイオベース経済のスケールアップには、素材設計と製造におけるリサーチとイノベーション、そして処理技術と使用後インフラ(バイオリファイナリー、コンポスト施設など)の開発も必要になります。
証拠が示すところによれば、バイオベース製造は、バイオマスの生産・加工・流通にまたがる広範なバリューチェーンを支えており、このセクターにおける直接雇用1件ごとに、農業・物流・サービスにわたって約1.79件の追加雇用が支えられています。たとえば、バイオリファイナリーが設立された地域は、そうでない地域よりも高い雇用成長を示しています。そして、これらの便益は「放っておいても公平に分配される」ものではありません。農村のコミュニティ、小規模農家、そして廃棄物回収者(ウェイストピッカー)が、移行の正当な参加者として認められ、金融、スキル、公正な取引条件へのアクセスが、最初から政策設計に組み込まれていることが、公平な実現のための条件になります。
7つの企業実践
7つの事例に共通するのは、循環戦略が「コスト」ではなく「レジリエンスと収益の源泉」として位置づけられている点です。再生的調達、製品・素材の循環、循環設計、トレーサビリティという複数の経路を通じて、企業は環境的・社会経済的な便益を生み出しながら、自社の競争力を高めているのです。

グッチ——再生的調達と循環設計によるレジリエンス構築
ラグジュアリーブランドのグッチ(Gucci)は、ウール、綿、皮革といった主要素材のリスク管理を一因として、農場レベルから、原料調達・設計・使用後素材の管理システムにいたるまでの戦略的決定を伴うサステナビリティのアプローチによって、ラグジュアリーのカタログとバリューチェーンを再発明しています。たとえばグッチは、Chargeurs Luxury Fibersが立ち上げた天然繊維ブランドNATIVA™との重要なパートナーシップを通じて、再生型生産に直接投資しています。このプロジェクトは11万5,000ヘクタールの牧草地をカバーし、土壌の健康、生物多様性、炭素隔離の改善に焦点を当てると同時に、供給のレジリエンスを高め、グッチのコレクションに組み込むための高品質で完全に追跡可能な素材を確保しています。製品レベルでは、グッチのリペアセンターが、耐久性を念頭に設計された衣料の長寿命化と継続的な使用を支えています。さらに、2023年に立ち上げられた、循環型製品のイノベーション・設計・製造のためのプラットフォーム「Gucci Circular Hub」を通じて、同社は環境影響を低減する循環ソリューションとよりスマートな製造慣行を開発しています。もうひとつの例として、循環性の原則に沿って創設された「Regenerative Denim Project」では、ヨーロッパの再生型農業実践による76%の認証・追跡可能な綿と、イタリア産の24%のリサイクル繊維を組み合わせています。

クラビン——再生的アプローチからリサイクル・ソリューションへ
ブラジルのパルプ・紙企業クラビン(Klabin)は、高度な垂直統合を特徴とし、原料生産から完成品の包装まで、バリューチェーン全体を掌握しています。同社はこの特性を活かして、包装生産に対するより生産的で循環的なアプローチを可能にしています。長期的な生産性を確保するため、クラビンは大規模な「モザイクモデル」の林業を採用しています。これは、劣化した土地に実装される、在来種を松やユーカリの商業林と交互に配置するシステムで、ユーカリでは全国平均より54%、松では26%高い年間生産性を達成しながら、同時に地域の生物多様性を支えています。さらに同社は、ブラジルの段ボールリサイクル設備の10%を占め、この地位を活かしてバージン繊維への依存を減らすとともに、ポリマーリグニンのような紙生産の副産物のアップサイクルの機会を探っています。また、従来の化石燃料由来の柔軟なプラスチックの代わりに天然樹脂を含む、多層包装向けのリサイクル可能なソリューション「Ekolayer®」バッグのように、化石由来素材を紙ベースの軟包装で置き換える革新的なソリューションも模索しています。
ロジャス・レネル——循環型・再生型テキスタイルへの道筋
ブラジルのファッション小売企業ロジャス・レネル(Lojas Renner)は、2030年までにテキスタイルを100%循環型・再生型にするというコミットメントの一環として、スタートアップのFarFarmと提携し、セラード(ブラジルのサバンナ地帯)でのアグロフォレストリー綿栽培を進めています。「Cotton Forests」プロジェクトは、家族経営の農家に再生型生産の知識を提供し訓練するもので、初期の成果を上げています。初年度には4.5ヘクタールのアグロフォレストリー用地で1.5トンの綿が生産され、農家の63%が綿による年間収入の倍増を報告しました。ロジャス・レネルは、この同じ循環のロジックをサプライチェーンにも適用しようとしています。製品が複数の利用サイクルを循環するよう、同社は製品開発のための「循環設計ガイド」を作成し、天然染料の使用、容易な分解のために設計された部品、リサイクルや再利用を促す単一素材構成などの可能性を盛り込みました。「Moda Responsável(責任あるファッション)」プログラムを通じて、同社はサプライチェーンと連携した使用前廃棄物の管理や、店舗での使用後回収システムにも取り組んでいます。

MYNUSCo——廃棄物から経済的・社会的価値を生み出す
インドのバイオベース素材イノベーター、MYNUSCoは、循環戦略が、経済の中で素材をアップグレードすると同時に、チェーンに沿った人々により大きな価値をもたらしうることを示しています。同社は、本来であれば焼却されてしまう農業廃棄物を、プラスチックや他の炭素集約的な製品を置き換えるバイオコンポジット・ペレットへと変換し、消費財、包装、自動車といった高価値のループへ供給しています。同社は2種類の製品を持っており、使い捨て向けでコンポスト可能な「BioPur」と、家具のような耐久素材向けでリサイクル可能な「BioDur」です。注目すべきは、その社会的インパクトです。同社は農家から直接調達し、バイオ燃料産業から得られる額の2〜3倍にあたる1キロあたり15ルピーを支払うことで、未利用素材の価値を高めるだけでなく、農村の所得を倍増させています。さらに同社は、25社のプラスチック製造の中小企業(SME)のネットワークにバイオコンポジット・ペレットを供給し、リサイクル原料の使用をインセンティブづけています。
ロイヤル・アーレンド——モジュール設計による循環型木材システム
オランダのオフィス家具メーカー、ロイヤル・アーレンド(Royal Ahrend)は、バイオベース素材、とりわけ木材を産業規模で継続的に使用するビジネスモデルで事業を展開しています。同社の設計戦略は、まず、モジュール製品設計と分解のための設計、そして耐久性のある素材選択を通じて、廃棄物が生み出される前にそれを排除することに焦点を当てています。この戦略により、個々の部品を、製品全体を廃棄することなく、修理・交換・再製造することが可能になります。返却された家具はリファービッシュされ、「Second Life」販売を通じて市場へ再投入されます。これらの取り組みを補完するかたちで、同社は家具のサービス化(Furniture-as-a-Service)モデルも提供し、オフィス顧客に家具をリースしながら、メンテナンス・修理・アップグレードの責任を自社で保持しています。さらに製造段階では、チェコの生産施設から出るすべての木材切削廃棄物が、再処理のためにチップボード供給業者へ戻されており、この取り組みにより工場の木材廃棄物排出量が30%削減されました。民間の廃棄物処理業者とのパートナーシップを通じて、廃棄された家具の木材は等級ごとに分別され、約80%のリサイクル含有率を持つ新しいチップボードへ再統合されることで、使用後の素材が大規模に生産サイクルへ再投入されています。
クリスタル——再生型実践でコロンビアの綿産業を再興する
コロンビアのファッション製造企業クリスタル(Crystal S.A.S)は、循環モデルが企業のレジリエンスを強化し、同時に国の綿産業の支援に貢献しうることを示しています。米、トウモロコシ、大豆と輪作して土壌の健康を回復させる再生型の綿に投資することで、同社は、いまだ供給の半分を占める輸入綿への依存を減らすことを目指しています。かつて「白い金」と呼ばれたコロンビアの綿産業は、20世紀に栄えたのち、安価な輸入品の圧力のもとで崩壊しました。クリスタルの取り組みは、ビジネスだけでなく自然にとっても有益な現代的アプローチを通じて、この産業の再興を目指しています。綿の栽培方法にとどまらず、同社はウニベルシダ・ポンティフィシア・ボリバリアナ(UPB)などの大学と協働し、パイナップル、フィケ、バナナといった新しい繊維を試し、地域のバイオベース産業を多様化する道を開いています。
トレースサーファー——情報交換と規制を通じて循環を可能にする
ウルグアイの企業トレースサーファー(TraceSurfer)は、デジタルとトレーサビリティのイノベーションが、中小企業(SME)に新たな価値を捕捉させ、循環経済政策のドライバーのもとでグローバル市場へ統合させるのを、いかに助けるかを示しています。同社は、製品ライフサイクル全体のトレーサビリティを実現するプラットフォームを提供し、製品の性能、原材料の起源、耐久性、欠陥に関するデータを、バリューチェーンのパートナーと収集・共有できるようにしています。そのデジタル・トレーサビリティのツールは、認証Bコープのワルミ(Warmi)のような企業や、クリスタル、ビクーニャ(Vicunha)といったラテンアメリカの主要企業とのパイロット事業を支援し、輸出を促進するための国際規制——とりわけ、来たるエコデザイン持続可能製品規則(ESPR)と、2027年に予定されているテキスタイル向けのデジタル製品パスポートの義務化——や、チリのような地域のEPRスキームへの準拠を助けています。さらにトレースサーファーは、こうした政策に受け身で対応するだけでなく、UNEPの地域データ枠組みやグローバルなISO標準への貢献を通じて、政策そのものを能動的に形づくっています。
政策推進5つの柱:リジェネラティブ経済=ネイチャーポジティブ経済×サーキュラー経済
報告書の最終章は、循環経済とバイオベース素材の政策アジェンダをよりよく整合させるための、世界共通で適用可能な5つの政策提言の柱を提示しています。これらの提言は、EMFが「断片的な解決策」を生み出すことを避け、循環経済への明確な進路を確保するために作成した「ユニバーサル・サーキュラーエコノミー政策ゴール(UPGs)」を踏まえたものです。

第1の柱 循環設計のために設計し、再生を格上げする
設計こそが、資源をより長く使い続け、採取を減らし、土地転換を最小化し、自然が繁栄する余地をつくるシステムへの転換を駆動する力です。設計段階で下される決定は、製品、サービス、バリューチェーンのパフォーマンスを決定づけ、市場とビジネスモデルを、後から覆すのが困難で高コストなかたちで形づくります。この柱のもとで、報告書は具体的な行動を挙げています。
第一に、実証済みの国際的な枠組みを踏まえて、バイオベース素材のための循環設計標準の開発・適応を始めること。再生型生産、耐久性、安全なコンポスト適性、生分解性、バイオベース含有率、置き換えといった、いまだ一貫性を欠く概念について、政府部門を横断して合意された定義を製品・産業政策に組み込むことが中核となります。
第二に、バイオベース素材のライフサイクル全体にわたる標準に、再生の原則を組み込む機会を特定すること。現在の標準は、コンポスト適性の閾値、生分解率、素材組成といった技術的性能に偏重しており、素材が、それが由来する自然システムの再生に能動的に貢献することを求めていません。報告書は、素材が育てられるときには土壌の健康と生物多様性を回復させる土地管理慣行と認証を結びつけ、加工されるときには技術的なコンプライアンスを満たすだけでなく生物学的価値を保持することを求め、回収されるときにはコンポスト適性・生分解性・土への回帰といった主張を、それを大規模に実現するインフラの存在と、返却された素材が本当に土壌有機物を再構築する証拠とに条件づける——というかたちで、各段階の標準を方向転換することを提案します。ブラジルの国家サーキュラーエコノミー戦略は、再生を中核原則として組み込むことが何を達成しうるかを示す好例として挙げられています。
第三に、既存の認証制度を出発点として、より高い透明性とトレーサビリティへ向かうこと。デジタル製品パスポートやラベリングのスキームは、素材含有率、再生的な起源、循環設計の特徴、化学組成、修理手順、エンドオブライフの選択肢を開示できます。ただし報告書は、こうした仕組みが、コンプライアンスコストを吸収できる初期採用者だけでなく、すべての生産者にとって再生型生産を実行可能なものにすべきだと強調しています。
第四に、本報告書が提示するバイオベース素材のための循環経済の枠組みを、すでに実務で適用されている実証済みのツールで補完しながら適用すること。UNTPとともに開発されたデジタルパスポートのISO標準、衣料・履物の耐久性・修理可能性・リサイクル可能性・デジタル製品パスポートの要件を定めるUNECEのトレーサビリティ・プロトコル、エコデザインと回収目標を組み合わせたチリの拡大生産者責任(EPR)の枠組み、そして80名以上の専門家の助言を得て開発され100社以上が適用した「Jeans Redesign(ジーンズ・リデザイン)」のガイドラインなどが、活用しうる具体例として紹介されています。
第2の柱 バイオベース素材の効果的かつ安全な循環を可能にする
廃棄物管理から資源管理へと転換するため、政策は、資源の価値を保持しその利用を延ばすシステムを可能にすべきです。循環経済政策は一般に循環を促進していますが、バイオベース素材の特性に明示的に対応する政策はほとんどなく、それらを循環させ続ける機会が未開拓のまま残されています。加えて、廃棄物規制は、しばしばバイオマスや生物起源の残渣を「廃棄物」として分類し、循環経済戦略からの価値創出の機会を逃しています。
この柱のもとで挙げられる行動は、まず、既存の廃棄物分類を見直し、「廃棄物」と「二次バイオマスの流れ」を区別し始めることです。無害で非毒性の残渣は、新たな製品の投入物となり、安全に生態系へ戻ることができるため、管理された条件下で処分されるべき汚染された残渣とは区別されるべきです。廃棄物分類と物質フロー規制を更新することで、バイオケミカルの抽出、バイオポリマーの創出、その他の二次利用が可能になり、埋立てと関連する温室効果ガス排出が削減されます。

次に、バイオベース素材の二次利用への再利用を促すセクター別の標準を探ることです。たとえば、森林管理協議会(FSC)は、森林バイオマスを複数の用途にわたって連続的に使用し、その価値を最大化し繊維の寿命を延ばす方法を模索しています。この場合、素材が紙製品へリサイクルされる前に、建材や耐久財が優先されます。報告書は、ロイヤル・アーレンドが使用後の木材を産業規模で新製品へ再投入できるのは、ひとえに「品質ごとに大型木材廃棄物を分別するリサイクルインフラ」という、ほとんどの経済がまだ整えていない実現条件に依存している、という重要な指摘を添えています。オランダにはこの分類システムが存在するからこそ、アーレンドは約80%のリサイクル含有率のチップボードを調達できるのです。
そして、最も豊富で経済的に重要な流れから始めて、バイオベース素材の二次利用の実行可能な経路を特定し明確化することです。フィンランドの「バイオマス・アトラス」、カナダの「物質フロー勘定」、オランダの「Grondstoffenscanner」といったツールは、バイオベースのストックとフローに関するシステム全体の知見を生み出しています。フィンランドのバイオマス・アトラスは、林業、農業、畜産、廃棄物の流れに関する空間データを単一のプラットフォームに集約するオープンなマッピングツールで、誰もが特定の地域内のバイオマスの利用可能性を計算できるようにし、投資計画、物流最適化、産業共生(インダストリアル・シンビオシス)の意思決定を支援します。フィンランドの産業共生システム(FISS)や、ブラジルの有機廃棄物に関する決議といった事例も挙げられています。ここで報告書は、廃棄物回収者(ウェイストピッカー)が、価値ある素材を回収し循環させ続けるうえで重要な役割を果たす存在として、所得機会の拡大とともに位置づけられるべきだと強調しています。
第3の柱 適切な財政的・経済的インセンティブを促進する
循環ソリューションを大規模にインセンティブづけるには、バイオベース素材を、補助金、税、公共調達といった経済政策措置に統合することが有効です。重要なのは、線形な代替手段を能動的に不利にする措置も同様に重要だ、という点です。資源集約的なバイオベース生産を現在優遇している補助金を段階的に廃止し、特定のバージン素材の採取モデルや埋立てに課税することは、経済的な土俵を循環ソリューションへ傾けます。
具体的な行動として、まず、既存の経済政策手段を見直し、循環型バイオベース素材を統合する機会を特定することが挙げられます。政府はどの経済においても最大級の財・サービスの買い手であり、公共調達は、循環型バイオベース製品への安定した需要を生み出し、市場を大規模に形づくる、最も直接的なレバーのひとつです。オランダの「Procurement with Impact」プログラムは、学校や公共建築物が認証された再生型の供給源から家具や木材を購入することを定め、この可能性を例示しています。
次に、既存の農業・林業補助金から始めて、経済的インセンティブを段階的に再生型の実践の優先へと振り向ける機会を評価することです。アグロフォレストリー、間作(インタークロッピング)、低影響の森林管理といった、劣化した土地を回復させネイチャーポジティブな成果をもたらす実践へと補助金を振り向けるのです。インドの「優先セクター貸出」枠組み、南アフリカのランドバンクのグリーン融資枠、ブラジルの不耕起栽培・アグロフォレストリー・牧草地回復への補助つき融資などが、すでにこの方向へ動いている例として紹介されています。さらに報告書は、生態系サービスへの支払い(PES)や、自主的な炭素・生物多様性クレジットといった手段も、循環型バイオベース素材のバリューチェーンを支える実践への報酬として振り向けられうると指摘し、コスタリカの環境サービス支払いプログラム(PPES)や、新たな展開としての熱帯林永久基金(TFFF)を挙げています。
第三に、循環ソリューションの競争力を線形な代替手段に対して改善する短期的な措置を特定することです。テキスタイル、家具、建設材料、そして修理・再製造・リサイクル等の二次利用サービスにかかる付加価値税(VAT)の引き下げ、エコモジュレーション(環境性能に応じてEPR料金を調整する仕組み)を適用したEPRスキーム、線形で潜在的に汚染性のある素材の規制による段階的廃止などが、循環ソリューションを後押しする手段として示されています。
そして第四に、中小企業(SME)、協同組合、コミュニティへの支援メカニズムを、政策設計の最初から組み込むことです。小規模生産者向けのマイクロクレジットや、廃棄物回収者の仕事と関連インフラを強化する専用の金融スキームなどが例として挙げられます。ブラジルの「家族農業強化国家プログラム(PRONAF)」は、小規模生産者向けの的を絞った公的融資の代表例で、ブラジルの農村信用契約の約70〜75%を占めるとされています。報告書は、クラビンの経験を引きながら、税制の枠組みがリサイクルチェーンの複数段階に課税することで、企業が自発的に循環型生産に投資していてもなお、それを不利にしてしまう構造を指摘し、「新たなインセンティブを単に追加するのではなく、既存の経済的インセンティブを見直し再配分することこそが、強力なレバーになる」と結論づけています。
第4の柱 イノベーション、スキル、インフラに投資する
バイオベース素材が自然を支え効果的に循環するためには、製品ライフサイクル全体にわたって、イノベーション、スキル、技術、インフラへの投資が必要です。これには、民間部門の投資へのインセンティブとあわせて、公的資金も求められます。
第一の行動は、既存の国家イノベーション優先課題と整合させながら、循環経済に適合したバイオベース素材へ、利用可能な研究・イノベーション資金を振り向けることです。育成・生産の段階では、各地域の固有条件に適応した栽培技術と、高品質なバイオ投入物(バイオインプット)の開発・普及が鍵になります。ブラジル農牧研究公社(Embrapa)のような、研究・イノベーション・訓練に焦点を当てた公的機関が、研究、技術支援、能力構築を提供することで、極めて重要な役割を果たしうると指摘されています。使用サイクルの段階では、繊維から繊維へのリサイクル(fibre-to-fibre)、モジュール木材システム、二次利用、先進リサイクルといった、価値を保持し廃棄を減らす素材サイクルの創出が求められます。新素材開発の段階では、ケニアでパイナップルの葉などの農業残渣から作られる繊維、インドのZero Circleの藻類ベースのコーティング、MynusCoのバイオコンポジットといった事例が紹介され、とりわけバージン木材が主要な代替物とされる場合に、持続可能に調達された非木材の代替を拡大し、木材需要が生態学的限界を超えないようにすることの重要性が強調されています。
第二の行動は、収集・処理・回収における最も重要なギャップを優先しながら、関連政策を横断して資源管理インフラへの投資努力の整合を始めることです。リバースロジスティクス、バイオベース素材の収集、コンポストシステム、バイオリファイナリーといった分野のインフラが、バイオマスに価値を加え循環を支えるうえで基礎となります。とりわけバイオリファイナリーの開発については、残渣のバイオケミカル・ポリマー・バイオ肥料への転換を優先し、エネルギー回収は生産的に再循環できない流れに限定すべきだとされています。うまく設計されれば、バイオリファイナリーは、豊富なバイオマスを持つ国々にとって、イノベーションと多様化のプラットフォームとなり、高付加価値なバイオベース素材の工業化と取引の機会をもたらします。
第三の行動は、既存の農業・産業の訓練枠組みのなかで、バイオベース素材の循環経済のための人々のスキルと教育を開発する機会を特定することです。循環経済、農村開発、労働の各政策を協調させ、再生型の農業・林業、循環経済に適合したバイオベース素材・製品の設計、二次利用の開発、製品の修理・再目的化・再製造、素材の収集・分別・リサイクルといった訓練プログラムを推進します。報告書は、職業訓練、設計カリキュラム、農業普及サービスに循環経済のコンピテンシーを統合することの重要性を説き、「SWITCH to Circular Economy Value Chains」のような国際協働のプラットフォームにも言及しています。ここでも、小規模農家やSMEといった、さまざまな背景と規模の人々がこの経済変化に参加し、移行の便益を捕捉できるよう、スキル開発の機会が開かれていることが不可欠だと強調されています。アムコール(Amcor)の堆肥化可能な紙ベース包装や、ロジャス・レネルの循環設計が、回収・分別・リサイクルのインフラがなければその環境的便益を発揮できない、という現実が、投資の必要性を物語る事例として添えられています。
第5の柱 制度・セクター・国境を越えて協働する
最後の柱は、協働です。国レベルでは、循環経済の原則をバイオベース素材に関する政策へ組み込むための省庁横断タスクフォースを設立することが、一貫性、説明責任、明確な目標設定を確保します。同時に、循環型バイオベース素材の世界的な便益を実現するには、貿易関連の政策と措置が決定的に重要になります。
第一の行動は、省庁横断の調整メカニズムを設立または指定し、循環経済の原則をバイオベース素材関連政策へ統合し始めることです。EUの「サーキュラーエコノミー行動計画(CEAP)」は、欧州委員会の調整のもとで、さまざまな政策領域とガバナンスレベルの政策立案者を巻き込み、54の行動を打ち出して4年後にそのすべてを採択・実施した、政策統合の好例として紹介されています。ブラジルでは、大統領令によって、省庁と民間・市民社会の組織を結集し、国家の循環経済政策を設計・モニタリングするフォーラムが創設されました。これは、政府が取り組みを共有しフィードバックを得る一方で、ステークホルダーが政府に説明責任を求めより野心的な措置を後押しできる、双方が裨益するガバナンスのメカニズムです。オランダの「移行アジェンダ(Transition Agendas)」も、政府・産業・研究機関・市民社会の協働によって、バイオマス・食料、建設、プラスチック、製造、消費財の5分野で、ライフサイクル全体にわたるセクターレベルの目標と設計原則を策定した事例として挙げられています。
第二の行動は、循環経済に適合したバイオベース素材の定義、標準、認証について、主要な貿易相手国と連携し、段階的な調和(ハーモナイゼーション)を探ることです。定義、認証、報告要件が市場ごとに異なることは、コンプライアンスコストの増大を通じて、スケーリングの障壁として指摘されています。政府が主要な貿易相手国と能動的に関与し、標準とトレーサビリティ要件の相互承認を探ることで、重複したコストを減らし、国境を越えた相互運用性を解き放ち、国際標準と地域規制の不整合を克服できます。EUサーキュラーエコノミー・リソースセンター、ラテンアメリカ・カリブ海地域サーキュラーエコノミー連合、アフリカ・サーキュラーエコノミー・アライアンスといった、地域協働のプラットフォームが、調和を可能にする取り組みを始めうる主体として紹介されています。
第三の行動は、貿易と社会環境のアジェンダを整合させ、循環型バイオベース素材の貿易を、気候と生物多様性の目標への潜在的な貢献として認識することです。ここで報告書は、衝撃的な数字を提示します。アグロフォレスト的な実践のための森林破壊の26%が国際的な需要に起因しうること、種の絶滅の予測総数の25%が輸出生産のための土地利用に関連すると見積もられていること、そして先進国における消費に関連する生物多様性の損失の50%超が、自国の領域の外で発生していると推定されること——です。
だからこそ、循環経済のために設計されたバイオベース素材の貿易は、気候と生物多様性の目標の実現を後押ししうるのです。トレードを環境行動のドライバーとして位置づけることで、各国は排出削減、生態系の保全・再生の新たな経路を切り開きながら、経済成長を維持できます。報告書は、2024年にG20が採択した「バイオエコノミーに関する10のハイレベル原則」、COP30で立ち上げられた「バイオエコノミー・チャレンジ」、2024年に署名された「気候変動・貿易・持続可能性に関する協定(ACCTS)」、WTOの「貿易と環境の持続可能性に関する構造化討議(TESSD)」といった、環境・貿易・サプライチェーン経済を整合させる多国間協働を、すでに動き出している取り組みとして挙げています。そして、認証と標準があらゆる規模の事業者にとって利用可能であること、SMEが技術的・財政的支援なしに循環型貿易の機会から排除されないこと、国際標準が各国の異なる文脈を認識すること——こうした包摂性の確保が、貿易を「障壁」ではなく「包摂的で再生的なバイオベース・バリューチェーンの実現者」にするための条件だと結論づけています。
結合:リジェネラティブな経済システムへの移行のすゝめ

報告書のタイトル『Circular by Nature』には、二重の意味が込められているように思います。ひとつは「自然そのものが本来的に循環している」という意味、そしてもうひとつは「自然の力を借りてこそ真に循環的な経済が成り立つ」という意味です。バイオベース素材は、設計と政策のあり方次第で、線形経済の延命装置にも、再生型循環経済の主役にもなりえます。どちらの未来を選ぶかは、いまこの瞬間の設計と政策の選択にかかっています。
サーキュラーエコノミーは、有限素材の領域で大きな進歩を遂げてきました。しかし、その真の潜在力を解き放つには、バイオベース素材に対しても同等の野心を持つ必要があります。本報告書は、そのための分析的な土台と、世界共通の5つの政策の柱を示してくれました。断片的なアプローチを超えて、資源の価値を保ち、再生型の自然システムを支え、長期的な経済のレジリエンスを強化する——とりわけ、循環経済への移行が最も変革的になりうる資源豊かな経済において、この一貫したシステムへの転換を進めること。それが、私たちに残された宿題なのだと思います。
バイオベース素材という、私たちの暮らしのすぐそばにありながら見過ごされてきた領域に、循環と再生のレンズを当て直すこと——その作業が、皆さまご自身の事業や政策の現場で、新たな価値の発見につながることを願っています。

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