ソートリーダーシップが、社会実装を本気で目指さなければならない理由とは
こんにちは、国際社会経済研究所(IISE)理事長の藤沢久美です。
これまで6回にわたって、IISEが取り組む経営戦略としてのソートリーダーシップ活動について、解説をしてきました。今回は一旦の総括として、ソートリーダーシップ活動の枠組みを改めて整理していきます。
第1回でお伝えしたとおり、ソートリーダーシップについての明確な定義は、世の中にまだありません。我々にとってもこの1年間は、NECグループの独立シンクタンクとして取り組むソートリーダーシップ活動の定義を磨き上げる日々であり、その定義を2025年2月に開催した「IISE FORUM 2025」で、発表することができました。
フォーラムの詳細については別途、報告することになるかと思いますが、そこではソートリーダーシップ活動を「未来の構想をつくり、共感を生み、社会実装を行う一連の流れ」として紹介しました。

ここでいう「未来の構想」とは「ソート」を意味します。ソートには次の4つの視点が必要です。
1.社会課題
2.自社の持つ技術や商材
3.企業のパーパス
4.生活者の視点
不可欠といえるこれら4つの要素をもとに、未来の社会と市場の姿を描き、そこに至る道筋を戦略として描きます。つまり、ソートリーダーシップ活動のゴールには社会実装があります。
その社会実装を実現するために、必要な要素の1つが「発信」です。発信を通じて、目指す未来社会や市場を一緒に形づくる仲間を募ります。加えて「生活者の視点」、つまり社会受容性についても、発信を通じて確認、修正するプロセスが可能となります。時には、既存のルールの変更や新たな規制が必要になる可能性もあります。そうした際には、政策提言をすることも厭いません。
繰り返しとなりますが、我々IISEが取り組むソートリーダーシップ活動は、ソートの発信だけではなく、社会実装まで達成することを常に念頭において活動します。この「実装」にこだわるのには、2つの理由があります。
1つは、世界におけるシンクタンクの存在意義の変化です。かつてのような中立的な構想を発信するシンクタンクへの支持は低下傾向にあります。例えば、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムは、マルチステークホルダーが集う場をつくり、未来の構想を描き、世界的に発信すると同時に、フォーラムに関わるメンバーたちがその構想を社会実装します。また、世界的なコンサルティングファームであるマッキンゼーなどが、圧倒的な資金力とネットワークによって、世界各分野の未来の構想と戦略を提示し、クライアントが社会実装の担い手となります。
もはや、シンクタンクは実装型でなければ、支持を得ることも資金を得ることも難しくなっているのが、世界の現実です。
もう1つの理由は、IISEがNECという事業会社のグループ企業であることです。日本を代表する事業会社の一員であるからこそ、実装が求められるのです。しかしそれは、NECだけが得をする実装を目指すのではありません。
新たな技術による社会課題の解決と市場の創造は、1社で実現するものではなく、複数の事業会社に加えて、NPOやアカデミア、政府を含めた様々なステークホルダーとの連携が不可欠です。1社のメリットだけを考えた構想では、仲間集めも社会実装も不可能です。
デジタル、AIの急速な技術進化はこれまでになく速く、未来の不確実性はますます高まっています。高度経済成長期のように、先を行く国をお手本にすることは、誰にもできなくなりました。世界の誰もが、未来の構想という旗を立て、それを本気で実装する覚悟で活動し、新たなデジタルインフラを形づくり、その上に人々が豊かさと幸せを感じられる社会をつくり上げていくことが求められます。
「TL Hub」での取り組みなどを通して、ソートリーダーシップ活動の枠組みを整理することができました。ですがまだ、その歩みは始まったばかりです。IISEに限らず、様々な企業がソートリーダーシップ活動に取り組み、新たな社会実装のための共創が起こることを願います。
文:IISE 理事長 藤沢 久美
藤沢 久美
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て1995年、日本初の投資信託評価会社を起業。1999年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却。2000年、シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年~2022年3月まで同代表。2022年4月より現職。
https://kumifujisawa.jp/
企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)
