改めて「ソートリーダーシップ」とは……マーケティングとブランディングと一体であること
近年、企業活動においてその重要性を増しているマーケティング手法の一つ「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」。国際社会経済研究所(IISE)の公式noteでは全5回にわたって、ソートリーダーシップの意義や進め方、プロセスなどについて解説していきます。
第1回は「ソートリーダーシップの全体像」、第2回では「ソートリーダーの条件」について。第3回では「ソートをまとめるプロセス」について。そして前回の第4回では「ソートの発信」について、解説してきました。第5回では一つの区切りとして、今一度「ソートリーダーシップ」とは何か、その実践に向けては何が重要か。考えをまとめていきます。
「マーケティングの一手法としてのソートリーダーシップ」に立ち戻る
企業活動におけるソートリーダーシップの位置づけを、まずは押さえておきましょう。
これまでは、多くの企業でマーケティング、ブランディング、ソートリーダーシップがそれぞれ個別で存在し、その中で活動の精度を研ぎ澄ましてきました。
マーケティングは「売れる仕組みづくり」として機能していました。商品開発や営業、販促活動、オンライン施策やUI/UX、売り場開発、価格戦略などはここに組み込まれていました。多くの企業では宣伝広告や広報PRもマーケティングとして機能しています。
ブランディングは「記号としてのデザイン」として機能していました。ロゴマークや色使い、メッセージ、個性や立ち振る舞いを決めていくトーン&マナーなどのCI(コーポレートアイデンティティ)/VI(ビジュアルアイデンティティ)はBI(ブランドアイデンティティ)としてブランディングに組み込まれています。
そして、ソートリーダーシップは広報や戦略PRの文脈におけるマーケティングの一手法として機能していました。社会課題を見出し、それに対する解決アイデアを業界の第一人者として専門的に、かつ独創的に提示し、より多くのステークホルダーの共感を獲得しながらリーディングポジションを目指す活動です。
以前、これら3つは個別に活動することが多かったと考えています。それぞれが固有のKPIのもとで部分最適化された結果、互いに社内連携をしながらも、互いに向いている方向は少しずつ違うといったことが起きがちです。両者が有機的につながる全体最適は、多くの企業ではまだ実現に至っていないのではないでしょうか。一昔前に隆盛を誇ったIMC(統合型マーケティングコミュニケーション)の考え方も本質的には実装できていない企業も多いのではないでしょうか。
現在、SDGsやESG、企業の社会的責任(CSR)などの潮流を受けて、企業は消費者に「顔」を見せることが要望されるようになってきています。その結果、ここ数年の潮流で、マーケティングとブランディング、そしてソートリーダーシップは、実質的にいよいよ境界線がなくなりつつあります。
例えば事業やビジネスにおいて「良い利益」「良い売り方」とは何かという「問い」を突き詰めていくと、その製品が世に広まることで、社会課題の解決が進むか? という「問い」にたどりつきます。今やこの「問い」こそが、あらゆるステークホルダーから真に問われるようになってきています。ここまでくると、従来からのソートリーダーシップの領域といえます。
グローバルに展開するPRエージェンシーのエデルマンが日本を対象に行った「2019 エデルマン・トラストバロメーター スペシャルレポート:ブランドは信頼に値するのか」の結果にも、その潮流は表れています。そこでは日本の消費者の70%が「ブランドが正しい行いをしていると信じられること」が、商品を購入するかどうかの決定要因であると回答したといいます。他にも同調査には様々な興味深い結果が出ていますが、同社日本法人のエデルマン・ジャパンはそこに「ブランドが信頼を築くことができれば、消費者はそれに応えてくれる」という分析を加えています。
同調査は2019年の実施ですが、コロナ禍の以前から、企業は社会課題への姿勢を問われていることが明確に示されています。インターブランドジャパンの佐藤氏が語っていた「未来を語るより、今を切り取る」という市場の期待感の高まりが、ここにも見えています。
「(セリングなしの)指名買い」を目指して、3つが同じ方向に進む
それでは、ソートリーダーシップの立ち位置はどこにあるのか。
経営学者ピーター・ドラッカー氏は「マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすること」であると言います。
ブランディングは、顧客の認識を変えること(パーセプションチェンジ)で唯一無二の価値を見出してもらい、顧客自らの行動変容につなげること(ビヘイビアチェンジ)になります。
ソートリーダーシップは、目指すべき成果を「新規顧客の獲得」、およびリーダーポジションによる顧客からの「指名買い」であると私たちは考えています。新しい考え方(ソート)を提示し、「指名買い」されること。
このように見ていくと、マーケティングとブランディングとソートリーダーシップ、これら3つは本来、互いに重なり合っていることが分かります。3つとも、目指すべきゴールは「顧客からの(セリングなしの)指名買い」なのです。
ソートリーダーシップのコンセプトを活用したマーケティングやブランディングは、有効であると言えるのではないでしょうか。

こうした状況に一部の企業は気付き、実践しています。「TL Hub」でも取り上げた事例、お話を伺った企業などは、その一例と言えるでしょう。
ソートリーダーシップの今が分かる!知っておきたい情報をカテゴリ別にご紹介|国際社会経済研究所(IISE)
ここまでの5回分で、ソートリーダーシップの要点を解説してきました。その内容を踏まえたうえで、実際のソートリーダーシップの事例や専門家の言葉などに触れていくと、深い洞察と新たな発見を得ていただけるのではないかと思います。
みなさまが是非、改めて「TL Hub」の様々な記事から生きた知見を吸収し、それぞれの企業活動、ソートリーダーシップ推進の土台とされますことを、願ってやみません。
企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)
