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【連載小説】この恋はチークと共に 番外編

初めて彼女と出会ったのは、沢山の色とりどりなドライフラワーが天井から吊るされた物語のプリンセスが座っていそうなカフェだった。

SNSのサークル『カフェ好き集まれ!』が開催した初めてのオフ会での事。主催合わせて十人も集まったイベント。男女比率は三対七。パッと見た感じ二十代は俺、三浦和馬だけ。
歳上ばかりのオフ会なんて初めてだからかなり緊張していたのを覚えている。
適当に席についてから順番に自己紹介しましょうという流れになった時だった。

「初めまして、sakiと言います。よろしくお願いします」

右斜め前の席のもう一つ隣の席、三十代くらいの彼女が立ち上がってそう言った時「すごい綺麗な人」だと思った。綺麗と言っても美貌を売りにした芸能人とは違う、なんだろう、とにかく何か引き寄せられるオーラみたいなのがあって、失礼ながら「歳上のお姉さんって良いかも」なんて思った。
多分、いつも俺に寄ってくる子が年下だったから見えない大人の魅力みたいなのが新鮮だったんだと思う。
せっかくだから直接話してみたかったけれど、絶妙に遠い位置。途中で席替えをしましょうといったイベントもなく、前と両サイドに座る奥様方のお話を一方的に聞きながら写真映えしそうな蜜柑のパフェを食べるだけでオフ会は終わってしまった。
…いや、でも、この会の出席者同士でSNSのフォローをし合おうという提案にはしっかり乗って、ちゃっかり彼女のアカウントと見事繋がることは出来た。それだけでも俺はドキドキしたものだ。

それからSNSで最初の挨拶をした後は自分から彼女に絡みに行く勇気が持てなくて。たまに彼女が上げるオシャレなカフェの写真を見ては男と行ったのかななんて想像して落ち込んだ。年齢的にも旦那さんがいるかもしれない。絶対に実らない人生初の一目惚れの行方を諦めかけていた時、彼女が「結婚してみたかったけれど、私は一生独りかもなぁ」というつぶやきを投稿しているのを見つけた。まだ、俺にもチャンスがある!
そう思うと行動は早かった。オープンしたてのいかにも女性以外受け付けません! みたいなお洒落な雰囲気のマドレーヌ屋を見つけて彼女へDMを送った。ええいままよ! って言葉、多分今使うんだろうなって思った。

幸運にも彼女はマドレーヌ屋デートに応じてくれて。そこで初めてまともに喋った。恋愛経験は人並みにあるはずなのに、まるで女の子に全く免疫がない男子校の学生みたいな発言ばっかりしたと思う。自分の中では失敗ばかりの初デート後は心の中で何度も凹んで、実は夜寝れない日が続いたりした。

それでも彼女は俺の事を受け入れてくれて、その後もデートに応じてくれた。勢い余って「付き合えませんか?」なんて言ったけれど、そこで判明したのは、なんと彼女は俺が思っていた以上に歳上だったこと。

あわよくばお付き合いして、デートして愛し合えたらいいな! とのんびり考えていた俺に彼女は「付き合うなら三ヶ月以内に結婚を考えて欲しい」とまで言われてしまい、正直戸惑った。

え、結婚てさ、告白して、お付き合いして、二人で色んな思い出作って、その流れで半同棲とかしちゃったりして、で、そのまま同棲して、それでもお互いに問題が無かったら相手の親に会って、プロポーズ考えて…って感じじゃないの?普通は三年くらいかけてやることを、三ヶ月で全てやれ?

頭は混乱したけれど、諦めたくない心が俺を動かした。それまで約二週間に一回のデートだったけれど、平日の夜一緒にご飯を食べる約束を取り付けることにした。なんというか、もう何度もデートして毎回「この人とだと楽しいな!」と思っていた傍ら、簡単に引き下がりたくも無かったし、ダメでも最後まで全力を尽くすことだけはやりたかったんだ。

そんな矢先に来た初めての彼女からのお誘い。
スマホ片手にガッツポーズし、天を仰いだ。とても綺麗な青空だった。指定されたのは高級ホテルに建設されたカフェのアフターヌーンティー。マドレーヌ屋に一人で入ることに怖気付いていた俺にはさらにハードルが高くて「何を着てけばいいんですか」なんて返信してしまったけれど。
早くデート当日にならないかな、ってそればっかり考えて仕事してた。「お前最近浮かれてるな」と、上司にも突っ込まれた。

アフターヌーンティーは一口サイズのマンゴーケーキがとびっきり美味しかった。なんであんなに小さいんだろう。お洒落なものって欲張り出来ないから残酷だ。
舌鼓を打っているとサキさんの誕生日がそろそろ近い話になり、彼女から一緒に過ごして欲しいと言われた。誕生日かぁ、盛大にお祝いしてあげたいな…。何がいいんだろう…? 何が欲しいかな…。

あ。

初デートに誘う時もそうだったけれど、俺は自分がこうと決めたらそこからの行動がめちゃくちゃ早くなるらしい。 二十五年生きてきて、彼女と出会って初めて知った自分の一面。

お互いの職場近くで貸切が出来て、サプライズケーキも出してくれるお店を探して。予約する寸前「本当にこんなことしていいのか? 」という気持ちが渦巻くこともあった。
正直、かなり年の離れた恋愛をしていることに対して周りからは訝しげな目で見られる事が多くなった。「騙されてるんじゃないの?」とか、「お前なら若くて可愛い子選び放題なのに」とか。
いくら若くて可愛くても、依存気味だったり気分の波が激しすぎる子だったり、話のレベルが低くてつまんない子を選ぶなら正直俺はサキさんを選びたい。彼女は俺と会う度に年齢に逆らうようにどんどん綺麗になっているのだ。それは、影で努力していることを物語っていて、自分をしっかり持って生きている人にみたいにキラキラしていて、すごく、すごく魅力的に思えるから。

理想だと言えるくらい素敵なBARを見つけ、震える指で電話をかけた。

『はい、BAR Key です』
「あの、すみません、貸切をお願いしたいんですけれど」
『はい、何名様の予定ですか?』
「二人なんです、あの…誕生日プロポーズがしたくて」
『ああ、これはこれは、大丈夫ですよ。是非お手伝いさせてください』

若いマスターは明るい声で俺に寄り添うように対応してくれた。
付き合ったら三年かけてやるんだろうな、と思っていたことを付き合う前からやっているなんて俺はどうかしているかもしれない。
けど、好きな女性の誕生日だから。来年はこうして一緒に居られるかわからないなら、確実な時にやってしまいたい。

えっと、お店は抑えたけど…一度お店の下見をしてマスターとお話して、何を用意するんだ?指輪? 跪いて、箱パカって開けるやつ? え、待ってよ指のサイズなんて知らないよ! そもそもああいうのって彼女が自分でデザイン選ぶんだよね? じゃあ何? 代わりのもの見つけて、買って…それから?

「なんか一気に忙しくなったぞ!?」

果たして俺は無事にプロポーズできるのだろうか!?



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