【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯43『かたっぽの軍手』
♯43『かたっぽの軍手』
文字数:約800字
外出先で見つけたヘンテコな物を写真に収めるという変わった趣味の男がいた。
彼が求めるヘンテコな物とは、道端に落ちている手袋や、駐車場にそろえ置かれてある靴だとか、ガードレールに引っかかている麦わら帽子などの、誰かが置き忘れたり落としたりしたと思われる物たちである。
その日も、デジタル一眼レフを首から下げた彼が、河川敷沿いの土手を散歩していると、触手が動くものを発見した。
地面に落ちているのは、片一方の軍手である。
ふたつセットであらねばならないはずの物が、相方を失ったようにひとつだけ虚しくあるのが良い。
道の中央に白い手形がついているような、これ見よがしの不自然さが、また良い。
さっそくカメラを構えて、パシャリパシャリとシャッターを切り始めた。
そのときの状況がわかるようにいろんな角度から撮影しておくことが、こだわりなのである。
クローズアップで収めようとして、軍手のそばまで近づいたときに、彼は気づいた。
ぺったんこになっている手のひら部分とは異なり、五本ある指のところが、その五本とも膨らんでいる。
そして、なにやらモゾモゾと蠢いているのだ。
……五つ子の毛虫でも入り込んでいるのだろうか。
動画撮影モードに切り替えて何秒か撮影する。
そして中身を確認するため、軍手の中指の先端を爪でつまみ、持ち上げた。
ポトポトポトポト、ポトっ
落ちてきたのは、切断された五本の、人の指だった。
地面に転がったその指は、まったく動いていない。
「うわあああああああああっ! こいつは1番のコレクションになるぞ!」
歓喜した男が、五本の指にレンズを向けて、パシャリパシャリと熱心にシャッターを切っていく……。
(了)
