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【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯01『臓物隠し』

《あらすじ》

 この作品『怪怪談談』は、怪談の掌編小説集になっています。一話完結のオムニバス形式です。怖さと笑いが抱き合わせになっているようなストーリーを目指しています。お楽しみいただけたら幸いです。(※創作大賞2025に応募中の別作品『AI+ME』では本文中にAI生成の文章を使用していますが、本作では不使用です)

猫渕珠子(2025.05.04)




♯01『臓物隠し』

文字数:1,860字

 5年2組のはんが理科室掃除そうじを行っていたときだった。

「〝臓物ぞうもつかくし〟をやってみない?」

 と、オカルト好きの女子児童が班のみんなに提案した。

 臓物隠しとは、『人体じんたい模型もけいのパーツを隠しても次の日には元通りになっているんだって』といううわさ話から誕生したオカルト検証実験的な遊びである。噂どおりに人体模型から取り外したパーツを学校のどこかに隠して帰り、次の日、元通りになっているのかを確かめる。見事戻っていれば、人体模型が自分で回収していたということになり、夜に動き回っているという噂が正しいと証明されるというもの。

「お姉ちゃんが小学生のとき、友達とやってみたらしいんだけど、そのときは本当に、隠したパーツが元に戻ってたんだって」

「嘘つけよ。人体模型が自分の体をさがして夜中に歩き回ってるとか、くだらねぇー」

「はは~ん。怖いんだぁ~」

「怖いわけないだろ!」

「じゃ、やれるよね?」

 反抗的な男子はあおりの常套句じょうとうくで簡単に手懐てなづける。

 放課後に再度理科室へと集合し、班のメンバー5人で臓物隠しを実施じっしした。

 人体模型から取り出したのは、はい胃袋いぶくろ、すいぞう肝臓かんぞう大腸だいちょうの5つのパーツである。それを各々が、他の児童や先生たちにバレないように、学校の好きな場所に隠して、玄関へと再集結したのち帰宅する。誰かがみょう細工さいくなどをしないように、隠し場所はお互い秘密にした。

 そうして翌日、朝早くに理科室へ行ってみると……

「ほら見て! 昨日隠したパーツが全部元に戻ってる!」

 取り外して隠しておいた5つのパーツは、きっちりすべて体内に収納されていた。

 人体模型は、パーツを取り外す前の姿で、理科室の片隅かたすみたたずんでいるのだ。

 参加した班の児童らはやっぱり噂は本当だったんだと納得して怖がったが、「うそだ、あり得ない!」と反抗的な男子だけはどうしても認めようとしない。

「俺たちが隠したあとに、先生の誰かが偶然見つけて元に戻しておいたんだ!」

「5つも? わたしは女子トイレのタンクのふたを開けてその中に肝臓を隠したんだよ? 偶然見つけられる場所だと思う?」

「……もう一回だ。もう一回やって、明日の朝にも戻ってたら、俺も信じてやる!」

 と言ってきかないので、その日の放課後に再検証をおこなった。

 取り出したパーツは、脳味噌のうみそ目玉めだま小腸しょうちょう心臓しんぞう腎臓じんぞう、の5つ。

 前日と同じルーチーンで隠し終え、玄関に集まったのちに帰宅する。

 だがしかし、臓物隠しを終えて帰宅のにつく反抗的な男子のランドセルには、隠したはずの5つのパーツが入っていた。

 どうしても認めたくない彼はズルをしたのだ。

 パーツを隠している最中に、オカルト好きな女子を尾行びこうして隠し場所を把握はあくすると、玄関で別れたあとから参加していた他の3人にスマホで連絡を取り、「今度屋でおごってやるから隠し場所を教えてくれ!」と頼み込んで、みんなが帰ったあとから校舎へ引き返し、隠したパーツを全部見つけて回収していたのである。

 家に持ち帰ってしまえば、たとえ人体模型が夜に学校中を捜し回っていたとしても見つからない。明日の朝、班のメンバーが来るよりも前に登校して、もとの隠し場所に戻し、5つのパーツを失ったままの人体模型を前にすれば、「ほら見ろ! やっぱり歩き回ってなんかいないじゃ!」と、オカルト好きな女子をくやしがらせることができる――という計算だった。なので、ほぼ、オカルト好きな女子に対しての嫌がらせである。

「ああ、明日の朝が楽しみだぜ!」

 と、笑っていた反抗的な男子に、明日が来ることは無かった。

 翌朝、彼は自宅の部屋で無惨な惨殺ざんさつ死体となって発見されてしまったからである。

 ベッドの上で5つの臓器ぞうきが失われた状態で寝ている息子を見つけた母親はその場で卒倒そっとうするほどだった。

 彼は臓物隠しにおいて決してやってはいけない『パーツを持ち帰る』というタブーを犯していたのだ。

「パーツを持ち帰るとね、夜中、人体模型が、持ち帰った人の家までやって来るんだって。そしてね、持ち帰られたパーツと同じ臓器を、持ち帰った人間の体から摘出てきしゅつして自分の身体にしまい込んで学校に帰るんだってさ。次の日の朝、理科室に立っている人体模型の、一部の内臓からは鮮血がしたたっているんだって。――だから、いい? このことは、あいつには内緒ないしょだよ」


(了)


《怪怪談談 各話一覧用マガジン》


※以下は、『創作大賞2025』に参加時の各話リンクで、エピソードが途中までとなっています。最新話は上記のマガジンから。

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