【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯22『ベッドの下』
♯22『ベッドの下』
文字数:約840字
体の上でベッドが軋む。
左耳に触れているベッドの底が浮き沈みを繰り返す。
彼女が目を覚ましたらしい。
指がシーツを擦る音に次いで、ピッ、という電子音。
部屋の照明を点けたのだろうか、消したのだろうか。
彼女の素足が床に着地する振動が伝わってくる。
伸びをしているのだろう、う~んと鼻を鳴らしている。
衣擦れの音が立て続けに届き出す。
着替えを行っているに違いない。
柔軟剤の香りが、ふわっ、とベッドの隙間に入ってくる。
不意に、闇に閉ざされていた視界に光が射す。
四つん這いになっている彼女が、微笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「いい子にしてるんだよ」
と、言った後、指でずらされていた目隠しが元に戻される。
視界が闇にかえった中でも、彼女の足音が遠のいていくのがわかる。
呼び止めようにも、口はダクトテープで何重にも塞がれていた。
両手足は体の後ろで拘束されたうえ、ベッドの脚にリードで繋がれている。
押し込められたベッドの下でまるで身動きが取れない。
……あの子は一体誰なんだ。
寝ようとしたらベッドの下から突然、這い出てきたのだ。
泥棒かと思った。
でも、私を殴りつけて拘束したあと、彼女は出ていかなかったのだ。
私をベッドの下へと押し込み、私のベッドの上で眠り始めていた。
スマホの指紋認証を解除させられていたのが気がかりでしかたない。
玄関ドアが開く音が聞こえる。
「引き取り業者が来るのは今夜だからそれまで我慢してね、わ・た・し」
ドアが閉ざされ、冷たいロック音がアパートの室内に響く。
顔立ちの似ている彼女が私のキャミソールに着替えていた理由がわかった気がしてゾッとする。
やっぱり泥棒だったのだ。
盗まれようとしているのは、私のすべて……。
(了)
