【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯47『GW毎日連続殺人事件』
♯47『GW毎日連続殺人事件』
文字数:約1,410字
ある地方の市内に暮らしている人々は、震撼していた。
ゴールデンウィークに突入した一週間ほど前から、物騒な事件が多発しているのだ。
毎日毎日起こっている。
そのすべてが殺人事件だった。
殺人などという極めて凶悪な事件が起こったのは十数年ぶりのことである。
1件発生しただけでも異例な事態であるにもかかわらず、殺人事件が発生した翌日にも、また、別な犯人が、別な殺人事件を企てたのだ。そして次の日も、また次の日も……と、途切れることなく一週間発生しつづけているのである。
各殺人事件の犯人たちがその日中に逮捕されていることは、不幸中の幸いだが、凶悪事件が連日連夜くりかえされるという異常事態に、市内の人々は、何が起こっているんです……?、と審判の日がやって来たかのごとく、恐れおののいているのだ。
厳密に言えば、一日目の事件は走行中の新幹線の車内で発生していた。毒を盛られて倒れていた人が見つかったのが市内にある駅に差し掛かろうとしていたときだったため、市内の駅に停車させて現場検証や車内にいた人々の取り調べが行われていたのである。その場で犯人は乗務員の女性と判明し、現行犯逮捕されたということだ。
犯人が立ちどころに捕まったことで市内の人々はショックを受けたもののすぐに安心した。しかし、終結ではなかったのである。この事件が幕開けだったのだ。まるで、その新幹線が死神を運んで来てしまっていたかのように、翌日から連日で、とどまることなく殺人事件が起こってしまっているのである。
二日目は、市内で1番の繁華街にある焼肉店にて。パワハラに苦しんでいたアルバイトが店主を撲殺するという怨恨殺人。
三日目は、市内で1番の観光地にあるホテルの一室にて。泊まりに来ていた学生グループの色恋沙汰に起因した刺殺事件。
四日目は、市内で1番の観光名所である巨大大仏像にて。借金をしていた男がその借り主である知人を、展望台になっている大仏の高所から突き落とした転落偽装殺人事件。
五日目は、市内で1番のショッピングモール内にある女子トイレ内にて。ロープを使った絞殺事件。
六日目は、市内で1番のダムにて。車によるカップル心中を偽装した殺人事件。
七日目は、市内で1番の観光山にて。猟銃による誤射に見せかけた銃殺事件。
目ぼしいスポットばかりを狙い澄ましたかのように、サスペンスドラマさながらの殺人事件が続発し、発狂する呪いでも掛けられてしまったように在市中の人たちが次から次へと凶器を手にしていく。
市内はもはや世紀末の殺人狂時代に突入したような有り様なのである。
待ちに待ったゴールデンウィークは恐怖のデスウィークに変貌を遂げてしまったのだ。
「もう嫌! 殺人事件が止まるまで帰ってこない!」
と、両手に荷物を抱えて市外逃亡をはかる市民が続出する結果となっていた。
しかし……
その市内でゴールデンウィーク期間中に途切れることなく続いていた摩訶不思議な連続殺人事件は、GW最終日を境に、嵐が過ぎ去ったかのごとく、ピタリと収束を迎えたのである。
その後、平穏を取り戻した市内で囁かれるようになったのは、
「あれは死神が休息のための観光で市内を訪れていたからに違いない……」
という噂話である。
(了)
