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【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯46『白い紙と緑の紙 赤い紙と黒い紙』


♯46『白い紙と緑の紙 赤い紙と黒い紙』


文字数:約1,500字

 学校のトイレに入っていた小学4年の女の子は、しまった‥‥、と思った。拭こうとしたら、トイレットペーパーが切れていたのだ。交換用のロールも見当たらない。最悪にも、大きい方だった。

 どうしようかと焦っていると、

「白い紙がいいか、緑の紙がいいか」

 という声が天井のほうから聞こえてきた。

 声がした上のほうを向いても誰もいない。

 女の子はすぐにお化けが出たと思った。

 また声が降ってくる。

「白い紙がいいか、緑の紙がいいか」

 女の子が、あれ?、と疑問に思う。

 ‥‥赤い紙と青い紙じゃないの?

 女の子が知っているのは、トイレに入っていると「赤い紙がいいか、青い紙がいいか」と尋ねてくる怪談だった。

 赤い紙とこたえると、天井から赤い紙がふってきて、それを使うと全身が真っ赤に染まってしまい。青い紙がいいとこたえると、天井から青い紙がふってきて、それを使うと全身が真っ青に染まってしまうという内容だ。しかし、尋ねてくる声は、そのどちらの色でもない、白と緑なのである。

 小首を傾げつつも、トイレットペーパーは白色のため、当然白のほうが良い。

「白いか――」

 と答えようとしたところで、また天井から声がする。

「赤い紙がいいか、黒い紙がいいか」

 ‥‥えっ、さっきと違う。

 二択のどちらも変わってしまい、女の子は戸惑った。

 赤い紙は怪談通りの色。でも、黒い紙は違う。

 先ほどは条件反射的に『白』と答えそうになっていたが、もし怪談通りに上から白い紙が落ちてきてそれを使ったら、全身がペンキで塗られたように白くなっていたかもしれない。とにかく、選択肢として提示された色を答えたらダメだったはずである。

 ‥‥たしか、紙お化けを撃退するための回答があったような。

 思い出そうとしていると、

「白い紙と緑の紙がいいか、赤い紙と黒い紙がいいか」 

 今度はセットになった二択に変わった。

 ‥‥なんて答えたらいいの。

 悩んでいた女の子が、ハッと気づく。

 お父さんが普段からよく聴いている楽曲のフレーズと似ているのだ。その曲のタイトルと歌詞に使われている「色」が、お化けが問いかけてきている「色」と、偶然にも一緒なのである。

 もしかすると、こう答えたらいいのかもしれない、という言葉が女の子の頭に浮かび、紙お化けがまた質問を繰り返して来たタイミングで、おっかなびっくりと口から出してみることにした。

「白い紙と緑の紙がいいか、赤い紙と黒い紙がいいか」

 今だ!、と女の子が口を開く。

「‥‥あういぇっ」

 すると紙お化けが、まるで歌っているように言ってきた。

「白い紙と~♪ 緑の紙~♪ 赤い紙と~♪ 黒い紙~~~♪」

「‥‥あ、あういぇぇぇっ!」

 しかし、女の子が回答を繰り返しても、紙お化けは「違う。それじゃない」とでも言いたげに、歌っているかのような質問を繰り返してくる。

「白い紙と~♪ 緑の紙~♪ 赤い紙と~♪ 黒い紙~~♪ 黒い紙~~~♪」

 女の子はそこで自分の答えが間違っていたと気づき、訂正の回答を叫んだ。

「ハロォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「‥‥‥‥」

 女の子が絶叫したあと、紙お化けからの質問はピタリと止んだ。

 無事に難を逃れたのである。

 それは良かった。

 でも、

「‥‥紙は?」

 トイレットペーパーが切れている状態に変わりないのだった。

 しかしその問題は数十秒後に解消されることになる。大声を張り上げたことで、何事かと心配した大勢の児童と先生がトイレに集まって来ることになるからだ。そして、女の子の本当の恐怖はここからはじまる。


(了)


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