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Z世代の7割が飲み会を避け、角打ちへ

最近、スーパーの鮮魚コーナー脇や、小さな酒屋の軒先で、缶詰や乾き物を肴に黙々とグラスを傾ける人を見かけるようになった。「ネオ角打ち」と呼ばれるこの動き、正直に言うと最初は「おしゃれな立ち飲みブームか」くらいに思っていた。でも調べるほど、これは違う話だと分かってきた。上司の武勇伝を延々と聞かされる飲み会に見切りをつけた生活者が、誰にも気を遣わずに酒を飲める場所を、自分たちの手で探し当てた話だ。

スーパーの片隅で、黙々とグラスを傾ける人たち

角打ちとは、酒屋の店先で買った酒をその場で飲むスタイルを指す、九州北部発祥の言葉だ。戦前から続く文化だが、ここ数年「ネオ角打ち」として急に注目を集めている。大阪の浅野日本酒店は全国に複数店舗を構え、日本酒を無料で試飲しながら好みの一本を選べる業態を展開している。日本酒の出荷量が落ち込むなか、蔵元自身がこうした場を「生活者の好みを直接つかめる場」として重宝している。日本農業新聞の取材に、奈良の蔵元がそう語っていた。

@DIMEが取り上げた「スーパー角打ち」は、夕方になると鮮魚売り場の一角がカウンターに早変わりする業態で、180円台のつまみと399円の酒が並ぶ。仕事帰りの男女がふらっと立ち寄る光景が、都市部のスーパーで広がりつつある。雑誌Beginも、戦前から続くこの立ち飲み文化が「ちょっとしたブーム」になっていると伝えていた。

角打ちの多くは、チェーン展開する居酒屋とは違って、店主の目が届く範囲でしか回せない小さな商売だ。無理に拡大しないその規模感こそが、常連でもふらっと立ち寄った一見でも、同じように扱われる空気を保っている気がする。全国チェーンの居酒屋なら、店員がマニュアル通りに「何名様ですか」と聞いてくる。角打ちにはそもそもその質問がない。

「飲み会が苦手」という一言の下に隠れているもの

この動きの背後にあるのは、飲み会という場そのものへの拒否感だ。Job総研の調査では、忘年会に参加したくない理由の上位に「プライベートを優先したい」「飲み会のノリについていけない」「経済的な負担が気になる」が並んだ。ニッセイ基礎研究所のレポートでは、上司を含めた会社の飲み会を「苦手」と答えたZ世代が66.7%にのぼった。一方、同世代同士の飲み会は「好き」と「苦手」がほぼ半々に割れている。

この数字、よく読むと面白い。若い世代は「人と飲むこと」自体を嫌っているわけではない。嫌っているのは、参加した瞬間に発生する暗黙のルールの方だ。誰かのペースに合わせ、終電まで拘束され、上下関係に沿って話す内容まで決められる。逃げ場のない何時間かが、飲み会離れの正体なんだと思う。

一方で、内閣府の調査を見ると、若い世代ほど孤独を強く感じているというデータもある。人と関わりたくないわけではない。関わりたいけれど、関わり方を強制されるのが耐えられない。このねじれこそが、いまの生活者が抱えている、根の深い課題だ。

働き方の分野では「静かな退職」という言葉が広く知られるようになった。会社を辞めるわけではないけれど、必要以上には頑張らない、という距離の取り方だ。飲み会についても、似たようなことが起きているんじゃないかと思う。反抗するでもなく、ただ一歩引いて、自分の時間を静かに守る人が増えている。

角打ちで生活者が本当に買っているのは、関わり方を選ぶ権利だ

角打ちが支持される理由を「安いから」で片付けるのは、たぶん半分しか当たっていない。角打ちのいいところは、居酒屋のようなお通し代やテーブルチャージがなく、会計が酒屋の店頭価格そのままである明朗さにある。そして何より、話しかけても話しかけなくても、どちらでも浮かない空気がある。

一人で立ち寄っても、隣の常連と少し言葉を交わしても、無言でグラスを空けて帰っても、それぞれがちゃんと成立する。居酒屋の飲み会が「参加したら最後まで付き合う」のを前提にした場だとすれば、角打ちは「関わりの量を自分のペースで決められる」場だ。生活者が本当に買っているのは酒でも肴でもなく、関係のオンオフを自分で切れる自由なんじゃないかと思う。

SNSで常時誰かとつながっていることに疲れた生活者が、リアルの場でも「ゆるいつながり」を再発明している。角打ちは、その一つの現れに過ぎない。

居酒屋の予約に「人数」を書き込む瞬間、実はすでに関わりの強度が決められている。角打ちにはその欄がない。何人で来ても、何時に来ても、何も言わずに帰っても、誰にも咎められない。この「決められていない」余白こそが、いまの生活者にとって一番の贅沢なのかもしれない。

生活者が今、企業に求めている「関わりの選択肢」

この動きから拾える示唆は、飲食業だけの話ではない。

まず、関係の強度を選ばせる設計を考えたい。イベントやコミュニティを組むとき、「参加したら最後までフル参加」が前提になっていないか、一度疑ってみる価値がある。途中参加、途中退出、会話なし参加。選択肢を用意するだけで、心理的なハードルはかなり下がるはずだ。

次に、価格の見せ方。角打ちへの支持は値引きそのものへの支持というより、お通し代やテーブルチャージのような、後から乗ってくる不透明なコストがないことへの支持だ。安さより、価格が最初から読めることに安心する人が増えている。

そしてもう一つ、孤独と束縛、両方への配慮を同時に設計できるかどうかが問われている。「一人でも来やすい」と「関わりたい人には関われる余地がある」は両立できる。どちらか一方だけを押し出すコミュニケーションは、今の生活者にはたぶん響かない。

最後に、こうした関わり方の変化は、アンケートの数字だけでは拾いきれない部分もあると思っておきたい。「飲み会が苦手」と答える人は多くても、実際に店でどんな距離の取り方をしているかは、現場を見てみないと分からないことが多い。数字と現場、両方を行き来する姿勢が、たぶん一番効く。

よくある質問

Q. ネオ角打ちと従来の角打ちは何が違いますか。
A. 従来の角打ちは酒屋の店先で酒を飲む昭和からの文化だが、ネオ角打ちはおしゃれな内装や試飲サービスを備え、若い世代や女性が入りやすい雰囲気に作り直されている点が違う。

Q. なぜ今、特に若い世代や女性に支持されているのですか。
A. 予約不要でドレスコードもなく、会話の有無や滞在時間を自分で決められる自由度の高さが、既存の飲み会文化に疲れた層の受け皿になっている。

Q. この動きは飲食業以外にも応用できますか。
A. できると思う。参加の強度を選べる設計や、追加コストが見えない不安を取り除く明朗な価格提示は、イベントやコミュニティ運営全般に転用できる視点だ。

Q. 一時的なブームで終わる可能性はありますか。
A. 飲み会文化への疲労や孤独感といった背景の課題は構造的なものなので、業態としての角打ちがすぐに消えるとは考えにくい。

Q. 企業がこの動きに参入する際、まず何から手をつけるべきですか。
A. 新しい場所を作る前に、既存のイベントや店舗の「参加ルール」を棚卸しすることから始めたい。暗黙のうちに参加者を拘束している要素は、意外と多い。

参考にした情報源

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