AIがあれば英語なんて喋れなくて良いって言ってたやつ誰だ(私だ)
海外に行ったと言うと「英語大丈夫だった?」と聞かれます。
大丈夫じゃないです。
羽田からシドニー行きの飛行機に乗った瞬間から、完璧なノーイングリッシュジャパニーズです。英語にビビりすぎて、日本語での機内アナウンスまでも若干聞き取れなくなりました。完全に耳が閉じている…。
新婚旅行でハワイに行った時には、もう少し大胆で、英語を話すことに積極的だったはず。やっぱり年齢のせいで保守的になっちゃったのかしらね…なんて思ってましたが違いました。
単純に忘れてるんです、英語を。
高校での勉強は3年間記憶喪失なので論外ですが、中学校で習ったことはまだ覚えていたんです、29歳の脳みそは。
そしてもうひとつ、海外ひとり旅は今回のオーストラリアで3カ国めです。これまで韓国、台湾とひとりで行きましたがその機内は圧倒的に日本人が多く、CAさんの英語もアジア人が聞き取りやすいゆっくり英語。こんなにチンプンカンプンな気分になったことはありませんでした。しかし今回は、CAさんが喋ってる英語が全然聞き取れない…!
たぶんなんだけど、喋るのめっちゃ早い!
いや元々、英語は話せないので聞き取れたからってどうにもならないんですが。
それでも、単語の端っこさえ拾えない英語で、こっちに向かって早口で話しかけられる恐怖といったら…!頼む、そっとしといてくれ…!話しかけないでくれ!と、思わず心で念じる。そんなところからオーストラリア旅行はスタートを切りました。
そんな私の言語問題について、出発時編を書いていきたいと思います。オーストラリアに2週間滞在して英語力はいったいどれほど変わったのか。はたまた変わらなかったのか。結局、英語は話せなくても海外旅行は問題なく行けるのか。
日本人の英語への苦手意識は根深いといいます。みなさんも一緒に、ノーイングリッシュジャパニーズの追体験を楽しんでいただけたら嬉しいです!
行きの飛行機で覚醒したのは「日本人の特殊能力」
飛行機内で「話しかけないでくれ!」を表現するのは簡単です。とにかくフライト中ずっと寝たふりしてれば良いのです。しかし私にはそれができない理由がありました。
機内食を食べたいんである。
9時間を超えるエコノミークラスで、唯一の娯楽っていったら機内食と、新作映画を観ることくらい。新作映画は観たいものがなかった。なおのこと機内食を食べたいんである。
そのために羽田空港でもビールと軽いおつまみだけしかとらなかったんだから。意気込みが違うのである。

つまり英語がわからないという羞恥心や不安を、食い気の方が凌駕したんですね。
ここでひとつ言っておきたいのが、Google翻訳もAIも一切役に立たなかったということです。なぜなら電波がねえから。
私が利用したカンタス航空は、羽田〜シドニー間ではWi-Fiが使えませんでした。電波が無ければAIも無力です。
誰だ、AIがあれば英語なんて話せなくても平気って言ってたやつ(私です)。
そこで私がこの局面を切り抜けるために取った行動はなにか。それは「他の乗客とCAのやり取りを見て盗む」です。私の座席は後方だったため、機内サービスのワゴンは前方からジリジリとゆっくり近づいてきます。その間、食い入るようにCAと他の乗客のやり取りを観察しました。刑事の張り込みのごとく。
CAは乗客一人当たりにどんなやり取りをするのか。ブツ(弁当みたいなやつ)のやり取りには規則性がある。飲み物を聞くのはブツを渡した直後。みんなコーラの缶を受け取ってばかりだ。コーラしかないのか?
私はワインが飲みたい。ワインはあるのか?ある!あの客が受け取ったぞ!あれはワインだ!よし、ワイン欲しいって言っていいな。ワインは英語でもワインだ!!
こんなふうに、神経を研ぎ澄まして来たる自分の番に備えたのです。
その甲斐あって、私は無事に3種類のブツの中から食べたい「チキン!」を選ぶことができ、さらには「レッドワイン!」も言えたわけです。

ここで私が、自分の中に明確に感じた特殊能力があります。それは「空気を読む能力」です。
周囲を観察して、それに「倣う(ならう)」というスキルが異常に発達しているのを自覚しました。これって私だけではなく、もしかしたら日本人に備わっている民族的な特殊能力のような気もします。
学校でも会社でも、協調性と和を尊ぶ日本人にとって大事なのは周囲の人間がどう振る舞っているか。この場のスタンダードは何か。これを察知するレーダーがものすごく発達してると思うのです。
場の空気を読むという能力は、他人に迷惑をかけまい、和を乱すまいとする日本人の美徳でもあると思うんですよね。だからこそ自分ひとりだけ話が分からないことは恥だし、それにより相手を煩わせることも恥だと感じるんだと思います。そして、そうはなるまい。となった時の集中力ったら!
英語がわからなくても、小学校から培ってきた、前にならえの精神で私はこの局面を切り抜けることができたのです。
余談ですが、私の座席の並びの向こう側には他にも日本人の乗客がいました。その方は自分の順番まですっかり寝ていたようで、起き抜けに機内食について聞かれ「??」となる中で、何度も何度も大きな声の早口英語で同じ
質問をされていました。
「こ、こえ〜!私も一歩間違えばああなるとこだった〜!」
と思うと同時に、「寝ているからだ!あなたにも十分に助かる道はあった!」と、ちょっとしたカイジの生き残りみたいな気分でした。
だからこその弱点
空気を読む能力に優れ、周囲に迷惑をかけたくないというのは日本人の美徳だと書きました。でも今回、その裏返しで弱点でもあると感じたんです。
というのも、空気を読むってことは周囲をよく見て聞いて理解し、“正しい振る舞いをする”ってことでもありますよね。
というか、正しい振る舞いをするのが好きすぎて、間違った振る舞いや言動が嫌いすぎる!
私自身、図太くなった40代の今の方が若い頃よりいい意味で適当におおらかに英語でコミュニケーションできるんじゃないかと思っていました。だからこそ、こんなに機内食サービスに身構えてる自分に内心びっくりしました。
だけど今回オーストラリアに行って分かったことがあります。
逆にオーストラリアの人たちはこちらが日本人だとわかると、知ってる日本語をすぐに披露してくれるということ。
どこから来たの?と聞かれて日本だと答えると、ものすごく嬉しそうに堂々と「コンニチハ!ワタシノナマエハ、クリスティンデス!」と伝えてくれます。「ニホン、スキ!」なんて言ってくれるんですね。
これを言われて「ふ〜ん、でもその発音ちょっと違うね。あとさ、日本“が”好きです、ね。」とか言いますか?(言ったらけっこうなサイコパスだよ!)
私は日本語で一生懸命に伝えてくれる気持ちがシンプルに嬉しかったですし、なんだか自分が相手に受け入れられたような気持ちにもなりました。
つまりは、逆も然りだと思うんです。
我々がしようとしてるのは英語の試験ではなく、コミュニケーション。拙い英語でも、感じよく一生懸命伝えれば保安検査の係員以外は大体親切にしてくれます。
(ちなみに検査場では、英語わからんやつは全員ゴミ虫扱いです。ここでこそ、空気読み全集中の呼吸で生き抜いてください。)
コミュニケーションは完璧であること以上に、拙くとも相手に一生懸命伝えることが大前提。間違ったっていいじゃん!というマインドの解放がまずは必須だと感じます。
下手でも相手側の言語で伝えることの意味
今回の旅の中でも忘れられないエピソードがあります。シドニー行きの機内でのことです。
海外へ行くと、飛行機内では「入国カード」なるものが配られます。そこに住所氏名、パスポート番号、滞在先の住所などを記入します。さらに、持ち込む荷物に禁止物が含まれていないかなどの申告もしなくてはいけません。
で、これが当たり前ですが全項目英語なんですね。
私は、その配られたカードを見つめたままフリーズしていました。かろうじて住所氏名とかを書く欄はわかるけど、持ち込み荷物のチェック項目の内容がいまいちわからなかったんです。

とはいえ、これは到着して飛行機を降りてから記入しても大丈夫。入国審査を通る前に書けばいいので飛行機を降りてからAIを駆使してゆっくり書けばいいんです。
と、そこで私の隣の男性がスッとスマホの画面を見せてきました。おそらく、オーストラリア人の男性で年齢は20代くらいかな。
「ん?」と思って差し出されたスマホの画面を見ると、そこにはこう表示されていました。
Can I help you?
お手伝いできますよ。
英語と、その下には日本語の訳。そう、彼は入国カードを見つめたままフリーズしている私をそれはもう的確に「ノーイングリッシュジャパニーズ」として認識し、親切にも手伝ってくれようとしたのです!
それに対して私は、日本人が使う英語第1位であろう「せんきゅー!」を2、3回繰り出したあと、胸の前で手を合わせてペコペコする。何から何までノーイングリッシュジャパニーズの基本の型をお見舞いし、彼に感謝を伝えました。
すぐに「じゃ手伝ってもらおか!」と言う勇気もないので「その話は一旦保留で」みたいな曖昧な空気でやり過ごし、機内食を食べネックピローくっつけて数時間眠りました。まぁ、降りてから自分で調べて書けばいいよねと思ったし。
けれど時間が経つほどに、こう思えてきたのです。ここで彼の親切に甘えず自力でなんとかしようとするのは、まさにあれじゃないのか。
若い人から席を譲ってもらった年寄りが「大丈夫大丈夫」って言って頑として座らず、譲ろうとした若い人がなんだかシュンとしちゃうやつじゃないか!?
そこで私は、朝になって朝食サービスが終わった頃に意を決して彼に向かってこう言いました。「ソーリー」(日本人が使う英語第2位)。
そして入国カードの解読できない項目を指でさしながら「これどういう意味ですか?」を、思いついた英単語「ホワットミーン…」で伝えました。
すると彼は、静かにこくりと頷きスマホの画面で丁寧に意味を教えてくれました。
そのおかげで無事にカードの全項目を書くことができ、再びの「せんきゅー&ペコペコ」で彼の親切に感謝を伝えました。それ以外で特に会話があったわけでもないのですが、飛行機がシドニー上空まで来た時です。
彼が私の肩をトントンと叩いてきて、窓の外を指差しながら「Opera house」と教えてくれたのです。
そう、シドニーのシンボル的存在でもあり、旅のラストにミュージカルを観る予定のあのオペラハウスです。通路側の席で景色を見ることができない私にわざわざ見せようとしてくれたのです。なんて優しいんだ…!とても嬉しくて彼の優しさに最大限の感謝を伝えたい。
しかし出てくるワードは日本人が使う英語第1位のみ!
「おー!!せんきゅー!!!」と言いながら、いいね!と親指を立てて拳を揺らすのが精一杯でした。もちろんそれ以降、会話が広がって盛り上がることはなく(そらそうだ)、いいね!の拳をゆっくり下ろして前を見る私。そしてこの時に、強く強く思ったのです。
「英語、話せるようになりて〜!!」と。
別にペラペラにならなくていいから、コミュニケーションを取りたい。人に親切にしてもらった時にせんきゅー以外の何かを言えるようになりたい。オペラハウスを見せてもらったら「私、あそこ行くんだよ!」くらいは言いたかった。そんな悔しい気持ちを抱えた私を乗せ、飛行機はオーストラリアの地に降り立ちました。
最後に隣の彼にあらためて感謝をこめて挨拶しよう。でもまた「せんきゅー&ぺこり」では何だか味気ないな、と感じた私。すぐさまスマホの機内モードをオフにし、Google翻訳に日本語を打ち込みました。そして降りる準備をする彼にスマホ画面を見せたのです。
親切にしてくれてありがとう!
Thank you for your kindness!
それを見た彼は笑顔で「You're welcome.」と言った後に、ちょっと上を見て考える仕草をしてからこう言ってくれました。
「ドウイタシマシテ」
AIがあれば英語なんて喋れなくて良いって言ってたやつ誰だ
この出来事があって、私はこれまでの「英語は喋れなくてもAIあれば海外行けるっしょ」という認識を改めました。
言語はただの情報ではなく、コミュニケーションツールなんだ。それを教えられた出来事でした。そして、相手の言語で伝える努力をしてみることの尊さをオーストラリアの人たちから教えられたのです。それがどれだけ人と人との距離を縮めることなのかも。
私は日本へ帰国して以来、毎日朝30分ほど英会話の勉強を始めています。
完璧じゃなくてもいいから、旅先で出会った人たちと会話ができるようになりたいと思っています。そして次の旅行で、長時間フライトの機内で隣り合った窓側席の人にはこう言えるようになりたいです。
どうぞ、トイレに行きたいときは遠慮なく起こしてくださいね。
If you need to use the restroom, please feel free to wake me up.
日本人的な周囲への気遣いを、英語で伝えられるようになったら最高だと思っています。
すっかり長くなってしまいました。
ここからオーストラリアに滞在して、英語への意識が変化して行ったのですが、それはまた今度続きを書けたらと思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
オーストラリア滞在記シリーズはもう少し続きます。
かなり私的になる部分など、一部は有料にしますがほとんどを無料で読んでいただけるようにするつもりです。
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