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#49 試験当日に神頼みをしないための 冷徹で楽観的なシステム

対象: 試験を控えてざわざわしている人
概要: 準備段階の執念と、本番での図太さ
    結果を左右するのはそれだけという話

試験の前日というのは、どうしたって落ち着かないものだ。「あれもやってない、これも不安だ」と、終わってもいないのに、脳内で勝手な先行反省会が始まる。

だが、そこでただ不安に震えて過ごすのと、戦略的に動くのとでは結果がまるで違ってくる。

試験に限らずだが、私が長年、数々の修羅場を乗り越えるために実践している様式がある。それは、「前日までは徹底的な悲観主義で準備し、当日は脳天気なほどの楽観主義に切り替える」という、二重人格のような態度のスイッチングだ。

​必要なのは勉強量でぶん殴る根性ではなく、成功の確率を高めるシステムだ。

​1. 前日まで:「冷徹なリスクアセスメント」

​前日までは知識のインストールだけでなく、「何が起きれば不合格になるか」をリストアップして、シラミ潰しにすることに注力する。これをプロジェクトマネジメントと全く同じテンションで行う。

​例えば、「遅延リスク」

電車が止まるかもしれない。首都圏なら日常茶飯事だ。だから、遅延しても間に合う時間に家を出る。あるいは、別ルートを検索しておく。もし何事もなく早く着きすぎたら? その時はカフェで優雅にコーヒーでも飲んでいればいい。

他にも、「追加の物品が必要になるリスク」

時計の電池が切れるかもしれない。シャーペンが壊れるかもしれない。ならば予備を持つ。腹痛が起きるかもしれない。ならば常備薬をポケットに入れる。これらを「恐怖」としてではなく、「処理すべきリスク」として淡々と潰していく。

​あとは、そもそも自身の能力不足の「性能リスク」

一番恐ろしいのは見たことのない問題が出て頭が真っ白になることだ。これに対する施策は「危機管理マニュアル」の準備に尽きる。

「問題文を読んで30秒考えて方針が立たなければ、その問は捨てて後に廻す」と、事前に行動を決めておくのだ。

​現場で迷うからパニックになる。「分からない問題が出たら飛ばす」という意思決定を前日までに済ませておけば、当日は「はい、想定通りの捨て問が来ました。予定通り、スルーします」と、ロボットのように事務的に処理できる。

※18歳で、これができなくて人生が変わった。変わった人生に悔いはない。

​2. 最強のお守り「骨子ノート」

​いくら「落ち着け」と自分に言い聞かせても、魔物はふとした瞬間に顔を出す。「あの定義、なんだっけ?」と、不安が微弱電流のようにピリピリすることは、誰しも経験したことがあるだろう。

​そのピリピリを即座に黙らせるために、私は会場に一冊のノートを持ち込む。これは単なる復習用ではない。精神を安定させるための「最強のお守り」だ。

​このノートには、試験範囲の内容を「骨子法」でまとめてある。

テキストの丸写しなんて意味がない。重要なキーワードを骨組み(骨子)の中に配置し、知識を「リスト」ではなく「構造」として組み上げたものだ。

必要な知識を圧縮して短いラベルをつける。分類し、階層化し、樹形図を意識してアウトラインで並べる。漏れなくダブりなくだ。

​自分で汗をかいて構造化したからこそ、そのページを開けば、情報の階層も、論理の流れも、一瞬で脳に蘇る。「ああ、大丈夫。この構造は私の頭の中に入っている」と確認できる。

市販の参考書ではダメなのだ。自分自身の思考プロセスで組み上げた、いわば「俺の骨子」だからこそ、見返すだけで知識の輪郭がクッキリと浮かび上がり、ざわつく心を物理的に叩き潰せる。

具体的な骨子ノートの作り方はまた、別の機会に披露することにしよう。

​3. 会場は「在庫確認」の場所

​そして当日。会場に向かう私は、もう昨日の私ではない。試験開始のベルが鳴った瞬間、私は自分にこう言い聞かせる。

​「知っている問題しか解けない」と。

​これは諦めではない。「私たちはそれ程、大そうなものではない」という、鬼滅の刃の最強剣士、継国縁壱も指摘する事実の確認だ。

試験会場というのは、その場で新しい閃きを得たり、急にIQが上がって難問が解けたりする場所ではない。単に、昨日までに自分の頭の中に積み上げた「在庫」を、淡々と棚卸しするだけの作業場だ。

​ただし、ここで言う「知っている」とは、単なる単語の暗記量のことではない。「構造(骨子)や型を持っているか」ということだ。

​未知の事例が出題されたとしても、自分が過去に習得した「解決へのプロセス(型)」に当てはめられるなら、それは「在庫」にある。逆に、自分の手持ちのどの「型」にも当てはまらない問題であれば、即座に「知らない」と判定する。

​この選別において重要なのは、「わかりません」と(心の中で)認める誠実さだ。

自分の「型」が通用しないと悟った瞬間、潔く問題を捨てる。ここで「なんか書けば点になるかも」と色気を出して、構造のない文章をダラダラ書くのが一番の悪手だ。そんな時間は不要だ。

​4. 仕事も試験も同じ

​この「リスクアセスメントと楽観のスイッチング」は、実は試験勉強だけのものではない。社会人になってから幾度となく経験した、失敗できないプレゼンや、厳しいコンペの場でもそのまま通用している。

​準備段階では、資料の不備や想定されるツッコミに対して、徹底的に悲観的になりリスクを分析して対策を打つ。

しかし、ひとたび演台に立ち、マイクを握ったら、もう別人だ。「これだけ準備してダメなら、相性が悪かっただけだ」と腹を括る。準備した骨子は頭に入っている。あとは目の前の相手を見て、手持ちの在庫(型)を堂々と披露するだけだ。

​試験も仕事も、パフォーマンスを左右するのは結局のところ「準備の執念」と「本番の図太さ」だ。​だから当日の朝は、直前数分で点数につながる短期記憶の暗記モノだけを詰め込んで、あとはもう、「終わったらどの店で何を食うか」「帰ってどのゲームをするか」しか考えない。

​リスクは昨日置いてきた。さあ、楽しんでこよう。

​そうやって心のスイッチを完全に切り替えられた時、目の前の試験は恐ろしい「試練」から、単なる「通過点」へと姿を変える。

結果は、準備した在庫の量で決まる。それ以上でもそれ以下でもない。ならば、せめて本番の日は、積み上げた在庫を出し切るこのプロセスに、余計な感情を挟まず没頭すればいい。

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