[家系図づくり談] 詳細?編その1
◯序文
前回の記事では、「私の私による私のための家系図づくり」を、その制作の各段階を追って述べてきた。
今回以降の記事では、その中で述べられなかった歴史的な事柄や家系図づくりをしていく中での私の感想などに関していくつか述べていけたらと思う。
前回の記事をお読みでない方がいらっしゃれば、以下から読んでくださればと思う。ただし、家系図づくりに関してきちんと知りたい方であれば、私が書いた記事以外もしっかり読み込むことをお勧めする。
◯家系図づくりの面倒臭さ
前回、家系図づくりの楽しさに関してばかり述べてきた。しかし、実際のところ相当の時間をかけて制作をしたため、面倒臭さも感じることにもなった。ここではそのようなぶっちゃけをしてみたい。ただ、時折本当に楽しかったなぁ、と思ったところについては、面倒臭さを語るより、その楽しい気持ちが溢れ出した文が挿入されてしまっている箇所もあるので、どうかご容赦を。
<系図を取り寄せる面倒臭さ>
一般に、系図を取り寄せる場合、自分の居住地の役所に行けば取り寄せが可能である。
しかし私の場合、地元の役所にも関わらず、一部は取り寄せることができなかった。これは役所にもよるはずだが、最近は役所でも、いわゆる正職員でないパートさんが窓口対応をすることがあるので、そういうこともその一因にあったのだろう。ここで引き下がらず、取り寄せは可能なはずだから専門の職員さんを呼んでほしい、といっても良かったが、それも悪いなと思ったので、これ以上は言及しなかった。
ただこれをしたことで、取り寄せたい先祖の戸籍に関して、最低限わかっている居住地の情報から、該当する役場に自分で連絡を取らなければならなかったのが大変面倒だった。それも、明治19年式の戸籍までたどるには、それ以外の役所にも連絡する必要があったので、余計に大変だった。過去は直接その地の役場に赴かなければならなかったわけなので、それとの比較をすれば電話などだけで用事が済んだのだから多少は楽できた、といって良いだろうか。とはいえ、自分の居住地の役所から取り寄せられたらどれほど楽だっただろうかとは思わずにはいられない。
現に、祖母に委託して、祖母系・祖父系の戸籍を一括して取り寄せてもらったとき、祖母は自身の居住地の役所から、苦もなく全て取り寄せられたと聞いた。
その話を聞いて、なんともがっくりきてしまったのは忘れられない。
あとは戸籍の取り寄せが可能だからといっても、すぐには手に入らず、数週間は戸籍の到着を待たなければならないのも何気に面倒である。
役所の窓口が空いている時間を考えると、人に頼んで取り寄せてもらえるのが一番良いが、場合によっては有給を取るなど、わざわざ時間を作っていかなければいけない。それが、取り寄せの申込と受け取りの二回となれば二重に面倒なのである。受け取りは、郵送を選べればそちらでも良いが、個人情報の塊なので、なるべく郵便受けに入ったまま放置しないようにはしたいところである。
<戸籍を読む面倒臭さ>
戸籍に書かれた文字は、古文書の素人であっても読める形で書かれている。よって、私もサクサク戸籍を読んでいくことができたのだが、その中で全くストレスなくことを進めていくことができたわけではなかった。
大きな字や名前は、基本楽に読み進められるが、問題は、その人物に関しての備考欄に書かれた字や明治19年式の戸籍に書かれた戸主の父母の名前などである。
備考欄には、該当の人物が、
・いつどこで生まれたか
・誰が出生届出を出したか
・いつどこで亡くなって、戸籍を除籍になったか
・誰が死亡届を出したか
・分家届出や苗字の変更をいつしたか
・いつ隠居届出を出したか
・いつどこの誰と結婚し、戸籍を除籍になったか
といったことが書かれている。ただ系譜だけを書ければよい人にとっては名前さえわかれば良いだろうが、それだけでは家系図を書くのに情報が少なすぎる。
だからこそこの備考欄を読みたいのである。
その対処法は前回の記事にも少々書いたが、
・読みたい戸籍の前後の戸籍(該当戸籍に対して、前戸主を主とする戸籍と、次代の戸主を主とする戸籍)から、同じ人物の記載があればその部分を読み比べる
・崩し字辞典を参照する
・その時代、その人物のことを知る人に話を聞く
などするとよい。
ただこれだけのことを実際に行ってみると、とても面倒くさい。読めない字が多い戸籍があると、正直ストレスは溜まってしまう。
なんだかんだ、カウントはしていないが、私の場合は、こういう手間も含めて、戸籍を読み取り、理解する過程だけでも数十、場合によっては100時間弱程度の時間はかけたかもしれない。ただ、ここでの読み取りをしっかりすることで、後々さらに先祖の情報を集めていくときに役に立つことがあるので、これから読み取りを行う方も、戸籍に熱い視線を向け、うんうん唸りながらじっくり読み解いていくことを勧めたい。
最後に、明治19年式の戸籍に書かれた戸主の父母の名前、に関してはそのまんまの意味である。これについては、別にここまで知らなくていいやと思う人なら捨てても良い情報である。ただどうしても知りたい人は、先に述べたような方法で読めるように頑張って欲しい。どこ出身の人か、苗字は何か、程度がわかれば、場合によっては文献をあたったり、現地に赴いたりなどすれば詳しい情報がわかることもある。
<系図を書く面倒臭さ>
この部分には、個人的にあまり面倒臭さやストレスは感じなかった。読み取りの際、簡単でもいいのでメモ程度にさまざまメモをとっていたのが効いていたのだろう。この段階ともなると、余裕を持って戸籍と向き合うことができるようになり、戸籍を味わうというのがどのようなことか、なんとなくわかってくる。
私の場合、可能な限り生没年や婚姻時の年齢、パートナーと死別した際の年齢や再婚時の年齢などについても含めて系図を書いたので、一般の系図よりは手間はかかったと言えるだろう。
そのほか婿入り・嫁入りの場合はその人の元の本籍や転籍先も簡単に付記したが、この場合は簡単に◯◯市や□□町のようにだけ書いておいた。これは、親戚といっても遠縁の方もいらっしゃるので、一応のプライバシー確保的な目的である。詳しく調べたければ、戸籍を見ればわかることであるから、少なくとも書いた当人である私は困らないし、大抵の場合は系図を大雑把にみて満足する人が大半だからその程度の記述で満足だろう、という想定である。
系図の書き方に関しては前回の記事の通り、エクセルでも手書きでも、なんでも構わない。普段慣れている方法でまとめるのが一番であろう。
系図の間違いを正しやすく、pdf等での送信がしやすいのはエクセルなどの、電子機器で編集する手段であると私は思う。
手書きは、なんの機器がなくともいつでも書き始められるので楽であるし、個人情報を取り扱う観点からすればあながちこちらも悪い手段とは言えないとも思う。
各々の信念や家系図をどう扱っていきたいのか、といったことを念頭に、どのようにまとめるのか考えるのがよいだろう。
<エクストラステージⅠ-歴史の中に先祖を位置付けて捉えていく面倒さ>
ここは一般的な家系図づくりとは異なる、完全なオプションである。
「歴史が好きだ!」
「郷土史に興味がある」
「ロマンを追い求めたい」
そんな人におすすめの工程がこのエクストラステージである。面倒くさいのは当たり前。時間がかかるのは当たり前の工程である。
面倒くさいを超越した楽しみや喜びを感じられる工程ではあるが、面倒は面倒である。
正直私も、「時間ないし、今日はここまででいいや」とか「なんだこいつは!!!意味わからん挙動とりやがって!!!」と思った瞬間は何度もあったので安心して欲しい。
ここは、系図書きからわかったことを元にさらに先祖のことを詳しくみていく工程である。
例によって前回の記事にも少し書いたが、具体的には、
・国立国会図書館のデジタルアーカイブで、先祖の名前やゆかりのある地名などで検索をかけて閲覧する
・図書館(できれば該当する先祖の居住していた場所の自治体が運営するところが好ましい)で郷土資料や郷土研究の書籍を閲覧する
・先祖の情報につながる書籍を購入して閲覧する
・先祖が住んでいた地を実際に訪れる
・親戚から情報を聞く
といったことを行う。
上記をみてわかるように、面倒でないはずがない。
簡単に上記を分類すると、
①書籍分析
②聞き込み
③現地調査
といった感じだろうか。
①以外は自分以外の人間も巻き込むことが前提の作業である。それゆえ、①の調査でどれだけの情報を詰め込んでおくかが重要である。
聞き込みにせよ、現地調査にせよ、あらかじめ詳しい知識がなければせっかく②③をしても実を結ばない。①でどれだけ情報を得られるかが、その後の②③のクオリティや調査時の楽しさを左右してくるので、精神的にも合理的にも非常に重要である。
----①のケース----
私のケースで、①にかかった時間はどれくらいだったか具体的にはわからない。ただ、系図が出来上がったあとで、まとまった時間を適宜確保しながら行ったので数ヶ月は絶対かかっている。なんならある程度家系図づくりができた現在でも書籍漁りは続けているため、歴史が好きな方が行うと数年単位での作業にもなりうるだろう。
いくつかの図書館を巡り、書籍を探して読んでいくだけでも相当な手間だが、家でずっと国立国会図書館のデジタルアーカイブを当たっているだけでは気が滅入ってしまうので、図書館で作業した方がストレスは少ないかもしれない。なんならデジタルアーカイブも出先での閲覧は可能なので、喫茶店に行ってみるのもアリだと思う。
----②のケース----
②について、私は直接知っている親戚からしか話は聞かなかったが、それでもある程度の情報は得られた。適当な菓子折りを持って行って、「昔のこと聞かせて!」と言うと貴重なお話をたくさん聞けたので私としては大変ありがたかった。
また、祖母宅を訪れた際に、戦地で亡くなった曽祖父が送ってきた軍事郵便が手に入り、曽祖父の軍隊での所属等がわかったのも大きな収穫であった。戦死の場合、国より勲章がもらえるのでその勲章なども見せていただいたが、人の命と引き換えがこれか、と思うと、その勲章の重みを感じるとともに、やるせない気持ちにもなった。
そのほか、戦争から生きて戻った曽祖父が残した、大戦の部隊の人々の生き残りで戦後に結成した組織、に関わる資料なども手に入れることができたのも収穫だった。歴史の目撃者たちによる貴重な一次資料ということで、非常に興味深く読ませていただいたし、曽祖父がその組織設立に深く関わったことも知ることができてよかったと感じた。
一応②にかかった時間的なことにも言及すると、話を聞き、資料を漁るなどすることまで含めて結局年単位でかかってはいるかと思う。面識のある親戚に会うとは言えども、まとまった時間をとって会いに行ったり、資料漁りなどをしようと思うとなかなか大変なのである。現実的なスケジューリングを考えた際の面倒臭さが大きな作業なのは間違いない。ちなみに③もその類の面倒臭さがある。
----③のケース----
現地調査は私は簡単なものしかしていない。先祖が眠る寺へ赴き、掃除も兼ねながらお墓参りをしたり、お寺の寄進の名簿的なものが見られれば見たりといった感じである。また、同様に神社もみてきた。③は移動するのに時間がかかった時間が大半で、現地調査自体は観光も兼ねてあげれば然程のストレスもなくできたと言える。
さらに、②の親戚がいる場所が該当する調べたい地域だった際は、親戚の案内の元、色々と案内してもらえたり、親戚はもちろん現地の他の方のお話までお聞きすることができた。そう考えると、全く知らない・知っている人もいない現地を訪れた経験は数回しかない。観光を兼ねてさまざまできるのは楽しいが、まとまった時間が必要な上、お金がそこそこかかってくる作業ではあったので、そこを楽しむ諸々のゆとりがあるかどうかが重要な工程かもしれない。
<エクストラステージⅡ-記録をまとめる面倒くささ>
この作業はまとめの作業だが、当たり前に面倒臭い。なぜなら今まで拾ってきた情報をうまく繋ぎ合わせなければならないからである。
この過程で、「なんだこれ」と思う瞬間もあって、それが楽しくもあるのだが、改めて人に話を聞かなければならなくなったり、追加の文献が必要となったりする場合にはそこそこ面倒くさい。
また参照した文献がなんだったか忘れてしまうと、その文献をまた探し始めなくてはならない、というのも面倒である。
ただ、一番重要なのは、諸々の調査などを通じて、書こうとしている情報が本当に正確なのかどうか、その妥当性や正確性を検討することである。重要なのは理解しているが、正直これが一番面倒である。
どの証言や本の記載が信頼に値しているのか、信頼できそうな筋の情報ではあるが、それはこの本の記載と矛盾していないか、など考えることは山ほどある。
結局、参照した文献だけで複数のページが丸々埋まってしまうくらいには多くの文献を用いただろうか。楽しくはあるが、自身の鋭さや歴史観の正確さを問われる作業ではあった。
この作業に関しては、すごく面倒ではあったが、毎晩コツコツ書き溜めて行った結果、数ヶ月でなんとかひとまずの完成まで持って行けた。今はその修正版を鋭意作成中なのだが、沼に入り込むと何度でも詳しく調べて書いてを繰り返していくことが趣味にもなるので、それはそれでアリだと私は思う。
<おまけ-もし業者(行政書士など)に任せると...>
ここまで、“私の”家系図づくりについて述べてきたが、ここまでガッツリ調査した家系図を業者(行政書士さんがおすすめ)に頼むといくらくらいかかるか述べてみる。
そもそもこのレベルで時間と手間をかけてくれる業者があるかは知らないが、少なくともオプションをつければ、デジタルアーカイブで情報を探るなどのことはしてくれる。一般的な系図書きまでなら一桁万円で済むが、このレベルともなると、百何万円というケースもあるらしい。行政書士というプロが作成する書類にはなるので。専門性なども含めてかなり良いものが出来上がるのは間違いないだろう。
「自分は家系図を作ることそのものでなく、あくまでその結果だけ知りたい」
という人でかつ懐が温かい人ならそこまでお任せするのも一つの手ではある。
◯今回の結び
前回は家系図づくりの楽しさしか述べてこなかったので、今回は逆に面倒な面に関しても述べてきた。
これを読んで行政書士さんに任せようと決心された方がいたならそれはそれで私は悪くはないと考えている。なぜなら、歴史がよほど好きでなければ苦痛を感じる作業も多いからである。お金に余裕があって、家系図など先祖には興味があるけれど、自分で書くのは時間的にも精神的にも無理そうだという方は行政書士さんお願いするのがベストなのは間違いない。
また、これを読んでみて、家系図づくりはインドアな作業中心かと思いきや、意外とフィールドに出てバリバリ調査をしていたところに意外性を感じられた方もいらしたかもしれない。ただよくよく考えていただくと、刑事が調査をするときも足で稼ぐ、とよく言われている。家系図づくりが警察の捜査と同じとは言わないが、現地に赴き現地を直接聞いて、情報を持つ人をあたってお話を聞くという点ではおよそ一致しているのである。そう思うとなんだかテンションが上がり、牛乳とあんパンを持って出かけたくはならないだろうか。
マイナス面を強調した文ではあったが、本記事を読み、自分も家系図制作ライフを楽しみたい、と思われる方が少しでもいらっしゃれば幸いである。
また次回以降は家系図制作とは直接関係ない部分も含み、家系図作成の過程から見えてきた社会の闇的な部分に関しても触れてみようと思う。興味がおありの方は次回以降も読んでいただければ嬉しい。
