味のしない煮込みうどん|風邪気味の娘|上条デイズ#10【連作ショートショート2】
娘が通う公立幼稚園では、
マイコプラズマ肺炎が流行っていた。
幼稚園バスに乗ると、
咳をしている子供がいる。
自家用車で送ったほうが良いのだろうか、
上条靖之は悩む。
娘が風邪気味な時は、
野菜煮込みうどんを作る。
上条の数少ないレパートリーのひとつ。
薄味のスープ、たっぷりの野菜。
くたくたに煮込んだ豚肉と玉うどん。
味もしないし、きっと舌もおかしいのに、
「おいしいね」と娘が言ってくれる。
娘は、このうどんが好きらしい。
そんな一言に上条が寝込みそうになる。
ひとりっこの娘。
娘と二人、昼間から寝る。
上条にとって、これ以上ない時間だった。
小さな寝息が、隣で規則正しく続いている。
→ #11アンパンマン|風邪気味の娘 に続く

