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誰かのために描いたものは|上条デイズ#16【連作ショートショート8】

上条靖之は、いつものようにスマートフォンを見ていた。
特に目的があるわけでもなく、なんとなく指を動かす。

娘が言っていた名前を思い出す。
じまにゃんさん。
上条は、そのページを少しだけのぞいてみる。
熱量のある文章が並んでいた。
上条には、少し眩しすぎるくらいだった。

そのあと、なんとなく別のページへ。
見知らぬ誰かの、短い文章。
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
ネコが転がる。
火がついて、火が消える。

上条は、少しだけ指を止めた。
どこかで見たような気がする。
そんなはずはないのに、少しだけ引っかかる。

続きを読む。

誰かのために描いたものは、
きっと、いつか誰かのものになる。

そんなことが書いてあった。

上条は、画面を少し離した。
なんだか、うまく言えない気分になる。

娘の部屋から、キーボードの音が聞こえてくる。
一定のリズムで、続いている。
何を書いているのか、上条には分からない。
けれど、その音は、少し心地よかった。

もう一度、画面を見る。
さっきの文章に、いいねがついている。

誰が書いたのか、上条は知らない。
ただ、なんとなく思った。
いい文章だな。

スマートフォンを閉じて、目も閉じる。
上条はしばらくしてから、ゆっくりと立ち上がる。
娘の部屋の前から明かりがもれている。
ドアを開けたまま、寝てしまったらしい。

『おやすみなさい』
ドアを閉めようと思い、娘の寝顔をみると、
その横にはネコの絵本が開いてあった。

リビングに戻りながら、上条は思う。
さっきの文章、どこかで見た気がするな。
でも、それ以上は考えなかった。
それでいい気がした。

フィクションと上条デイズシリーズ

#短編小説 #創作 #上条デイズ #ネコの絵本 #じまにゃんさん

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