「アーカイブ・サテライトの園」第8話
●あらすじ
人工知能と人工意識を搭載したアンドロイドが普及し、多くの人間が仮想世界に入り浸るようになった近未来。人類は増え続けるデータに対処すべく、データ保存に特化した衛星アーカイブ・サテライトを打ち上げた。
その衛星へ送るデータを選別するアーキビストとして働いていた五塔重法は、不審な死を遂げた妻、エリコの死の真相を突き止めようと動き始める。
車椅子に乗る元探偵の老女、雪島時子と、一人息子を持つ備品管理課所属の刑事、冠木一獅、警官型アンドロイドのキャス、エリコの元同僚の荒角から協力を得た五塔は、宇宙素粒子物理学の研究者であったエリコが残した未完成の論文を頼りに、信じ難い真相にたどり着く。
「……そう、です。それこそ、真っ先にお話しすべきことでした……。五塔さん、まだ伝えなくてはいけないことがあるんです。どうか気を悪くしないでください。エリコさんがエレクトロン・ピンボール粒子を発見してしばらく経った頃から、その、エリコさんが浮気を、しているような素振りを」
拳の中で、親指の付け根の肉に爪が突き刺さっていくのを感じた。
「でもきっと、私の勘違いだったんだと思います。最初のほうは研究所のカフェスペースで、若い男性の方と会って話しているのを、よく見かけたので、邪推してしまって。信じたくなくて、一度エリコさんに思い切って尋ねたんです。でも、何も答えてくれませんでした。ただ困りながら微笑むばっかりで。その時のエリコさんがなんだか、神々しくて、清々しくて、こそこそ浮気をしているような雰囲気ではなかったんです。私が尋ねて以降は、そういう場面を見かけることはなくなりました。でも、その後もエリコさんは色々な人と、携帯で連絡を取っているようでした。カフェスペースとかストアとかファミレスとかで、年齢も性別もバラバラな人たちと一対一で話しているのを、私も他の研究員も目撃しています。まるで友達同士みたいに、楽しそうに」
「どういう会話をしていたかは、分からないかしら?」
「さすがにそこまでは……。でも休憩時間中にファミレスで何回か見かけた時は、とにかく楽しそうでした。研究への興味と情熱が、その話し相手に移ったように。私が見た時の相手は同年代くらいの、優しそうな女性でした。相手の方も笑顔で……。私はエリコさんを尊敬していたんです。研究員としても友人としても。だから複雑でした。目の前のエリコさんは幸せそうなのに、優秀な研究員としてのエリコさんは消えていくみたいで」
白衣姿のエリコの幻影が、幸せと不幸せの間で死んでは生き返る。職場で、そんな目に遭っていたなんて。誰かと、こそこそ会っていたなんて。何も気付けなかった自分に愕然とする。平らなはずの床に立っているのに、身体がぐらついた。
「おっと、大丈夫ですか?ありゃ、五塔さん顔色悪いですな。座ったほうがいい」
顔を覗き込んできた冠木さんに引っ張られ、椅子に座らされた。膝の上に置いた拳は、温かい何かに覆われた。時子さんの手だ。拳の内側に滲む血が、時子さんの手を汚してしまわないかと気になる。さっきより穏やかに、時子さんは会話を再開した。
「事件当日のエリコさんは、どんな感じだったかしら?さっき柏戸さんにも聞いたのだけど、珍しく早退なさったそうね?携帯で誰かと話していて、急いでいるみたいだったとか」
「はい。朝に挨拶した時は元気そうだったんですが、お昼頃になって急に気分が悪いから早退すると。この研究室から出ていく時、確かに急いでいる様子でした。片耳を押えながら何か喋っていたので、きっと誰かと通話していたんだと思います。誰に会いにいくのか問い詰めるべきでした。実は私、最後にエリコさんになんて言ったか覚えてないんですよ。はは、ひどいですよね。毎年、誕生日を祝い合うくらいの友達だったのに。そういうことできる、唯一の同僚だったのに。しつこく聞いたら嫌われる気がして。単に嫌われるのが怖かったんです。本当の友達なら聞くべきだって、ずっと思ってたのに。結局聞かないで逃げちゃいました。挙句の果てに、再捜査を始めた五塔さんからも、逃げようとしました。もし殺人事件だったら、事件が起きる前に五搭さんに全てを伝えていれば、防げたかもしれない。それこそ本当に、私のせいじゃないかと思ったら、苦しくなって、なんて言ったらいいのか分からなくなって……。心底、自分が情けないです。本当にすみませんでした。本当に、ごめんなさい……」
うな垂れて両手で顔を覆った荒角さんは、くぐもった声で謝罪を繰り返した。
「……俺はあなたを責められない。俺も同じだからです。自分が信じたいエリコの姿しか、見ようとしなかった。おまけに俺は、都合の良い嘘や思い込みしか、受け入れようとしませんでした」
ぼろぼろと零れ落ちる涙を眺めながら、こんな風に思いきり泣いてみたいと思った。じわりと涙が出始めても、無意識にせき止めてしまう。ただ呆然として痛みや悲しみをやり過ごすのは、子どもの頃からの癖だ。泣き方が下手すぎると、何度もエリコに言われた。
「……一度逃げたものに立ち向かう。なかなかできないことよ。荒角さんも五塔さんも勇気がある。真実を必ず掘り出しましょう。ところでエリコさんが早退した後、柏戸さんと荒角さんはずっとここで仕事を?」
荒角さんは机に置かれた黄緑色の紙箱から、ティッシュのようなものを引き出し、目元を軽くぬぐいながら答えた。
「その日は、地下の素粒子衝突機の1つにトラブルが起きて、全員で残業してました。10時頃に警察からエリコさんが亡くなったという連絡が来て……私が電話を取りました。柏戸に報告したのも私なので、確かだと思います」
「なるほど……冠木さん、念のために後で裏を取っておいてくださる?」
「もちろん。しかし容疑者が多そうだ。五塔さん、エリコさんの遺品に何か気になる痕跡はありませんでした?携帯の通話履歴が異様に多いとか、日記に見知らぬ人の名前がたくさん出てくるとか……」
「遺品は全部調べてありますが、特に何も……。エリコが普段の連絡に使っていたのは携帯だけです。特に不自然な点はありませんでした」
「そうですか……これは容疑者を絞り込むのに骨が折れるなキャス」
「そうですね。しかし捜査し甲斐があるというものです」
キャスさんの頭部から、アンドロイド特有の駆動音が大きく鳴り響いた。
時子さんは膝に置いた鞄から眼鏡を取り出した。車椅子を少し前進させると、眼鏡をかけてホログラム画面を操作し始めた。論文のファイルを閉じると、手当たり次第に別のフォルダを開けていく。いつも旧式のパソコンを使っているとは思えない見事な手さばきだ。
「ああ、あの、現在進行中の研究に必要な資料も残っていると思うので……操作は慎重にお願いします」
「大丈夫よ。ファイルを消したりしないから。ヒントを探しているの。うーん、まさに職場のパソコンって感じね。あまり期待できなさそう。五塔さん、エリコさんは個人用のパソコンは持ってなかったの?」
「持ってませんでした。職場で見飽きてるからって、不便なのに頑なに買おうとしなくて……。エリコが持っていた文明の利器は携帯だけです。でも携帯も家ではめったに使ってませんでした。連絡に必要だから耳に着けてるという感じで。エリコの携帯は何度も調べましたが、手がかりなんて何も……スケジュール管理には手帳を使っていました。その手帳も調べましたが、怪しい情報なんてどこにも。一切の痕跡が残らないように、人と会っていたんでしょうか」
「そうでしょうね。徹底的に痕跡を消した理由が、事件の大きなカギになりそう」
一心不乱に文字を目で追う時子さんを呆然と見つめる。浮気じゃないなら、本気だったのかもしれない。実は最初の若い男とこそこそ会い続けていて、心中しようとして裏切られたか。色々なタイプの人間と会っていたのは、カモフラージュか。また視界がぐらついてきた。
「荒角さん、パスワード付きのフォルダも開けてみたいのだけど、駄目?もちろん内容を絶対に第三者に漏洩したりしないわ。誓って」
「もし何かあった時の責任は警部の俺が取りますから、俺からもお願いします」
援護射撃をした冠木さんは、俺と時子さんに振り返って下手なウインクをした。荒角さんは少し渋る素振りを見せながら、パスワードを打ち込み始める。しかし短いエラー音が鳴り響いた。
「あれ?開かない……。少々お待ちください。えーっと……」
自分のデスクに戻って何かを確認した後、荒角さんは戻ってきて再びパスワードを打ち込んだ。しかし再びエラー音が鳴る。
「おかしい……。研究員は割り振られた1つのパスワードで研究データを管理します。確かにエリコさんのパスワードを入れているんですが……システム異常かな……」
「……五塔さん、あのUSBメモリのパスワード、覚えてる?」
はっとして、一気に記憶をさかのぼる。メモリアル・パレス。エリコが教えてくれたパスワード。
「結婚記念日から、7日前の日付……」
呟きながら勢いよく立ち上がり、荒角さんと画面の間に割り込む。慎重に数字を打ち込むと、開いた。音声ファイルがずらりと並んでいる。どれもタイトルは日付だ。
「そんな……本人以外がパスワードを変えるのは不可能です。本人の死後にパスワードが変わるなんて、あり得ない……。システム課に報告しないと……どうかそのまま待っててください」
慌てて部屋を出ていった荒角さんを見送った直後、時子さんが音声ファイルを再生させようとした。焦って腕を掴んで止める。
「荒角さんを待ったほうが……」
「再生するくらいなら大丈夫でしょう。時間が惜しいわ」
俺がしぶしぶ手を離すと、一番古い日付の音声データが再生された。少しの無音の後、若い男性とエリコの声が聞こえてきた。全身に緊張が走る。
"初めまして、江利川透子さん。あなたがエリコなんですね"
"は、はい。初めまして……。君は本物、だよね?想像とはまるで違う外見だから……"
"ランダムに選んだので。次回はエリコの想像に近い姿で来ます"
"いいの。そんなことどうでもいい。ちょっとこれ飲んでいい?落ち着きたい"
"どうぞ"
豪快に喉を鳴らす音に、強烈な喉の渇きを覚えた。研究室の中は適温なはずなのに、汗が止まらない。聴覚に神経を集中させる。
"……うん、ごめんね。なんか、まだ信じられない。君が目の前にいるなんて"
"私も同じです。エリコが実在していることに感動しています"
"感動だね。まさに。約束通り会いにきてくれてありがとう。私が君を守るから安心して。中央情報管理局から君を隠す。私も約束を守る。信じて。それじゃあ……"
不快なノイズに音声が掻き消されると、一拍遅れて視界は暗闇に包まれた。研究員たちの悲鳴や怒号が響き渡る。
「システム課よりお知らせです。外部からの不正アクセスが認められましたので、全システムの強制再起動を行いました」
淡々としたアナウンスが流れると、明かりが点いた。ホログラム画面に大きく表示された「再起動中」という言葉に、嫌な予感がした。じりじりして待ち、起動したと同時に音声データファイル入りのフォルダを開ける。
「……なんで……くそっ!」
無い。音声データが1つ残らず消されている。手当たり次第に他のフォルダも開けてみるが、どこにも無い。
「犯人が侵入して消したのでしょうね。この短時間で。お見事だわ」
「……時子さんは悔しくないんですか……」
手を止め、椅子に深く腰掛ける。手の震えが止まらない。
「悔しいわ。でも嬉しくもある。ついに犯人に行動を起こさせたのよ。この行動こそ容疑者特定の大ヒントだわ。犯人は優秀なハッカーで、ここに決定的な証拠があると知り得た人物に絞り込める。さらに私たちの動きを完全に読める人物。あるいは……」
時子さんは泰然としたまま思考を巡らせている。冷静になって推理しなくては。しかし絶望感が思考を邪魔してくる。
「容疑者を絞り込むと言っても、エリコと接触のあった人たちを特定する手がかりが無くなってしまったら……」
「きっとまだ大丈夫。思い出して、あなたはアーキビストだったのでしょう?」
時子さんの問いかけに、頭が混乱する。宇宙空間で漂う衛星、アーカイブ・サテライトの懐かしい姿が脳裏に浮かんだ。
「……もしかして、データのバックアップがあるだろう、ということですか?」
「ご明察」
政府にとって重要なデータを取り扱う事業者には、そのデータのバックアップを取ることが義務付けられている。バックアップ用データの保管先は、あのアーカイブ・サテライトだ。厄介なデータも完全に隠せるセキュリティレベルの高さを、信頼しているのだろう。しかし国際政府はデータ量を抑えたがっているから、対象となるデータは限られるはず。
保存データの総量がアーカイブ・サテライトの容量を超えてしまったら、新しいデータを安全に保存できなくなってしまう。新たな衛星を打ち上げる予定らしいが、国際政府の今の財政状態では、あと50年はかかる。しかも、どんなに頑張ってもあと10数年で限界が来ると噂されている。電力と容量の不足。2つの大きな問題があるのだ。一研究員の個人的なデータまで、保管しているだろうか。しかし、これに賭けるしかない。
「遅くなりました!」
荒角さんが息を切らしながら戻ってきた。
「すみません。すぐに音声データを再生して……あれ?」
「誓って、俺たちが消したんじゃありません。強制再起動した後すぐにフォルダを開けたら、この有様でした。不正アクセスを受けた瞬間にデータが消えるなんてこと、今までありませんよね?」
「ええ……。システム課で確認したところ、実はこのパソコンにだけ先ほど不正アクセスされた形跡がありまして。胸騒ぎがしたのですが、こんなことになるなんて。もしかして犯人が……」
全員が押し黙っていると、ホログラム画面を睨んでいた時子さんが沈黙を破った。
「この研究所は、中央情報管理局と共同で仕事をすることはあるの?」
「ええ。今まで色々なプロジェクトを共同で進めてきました。あ、少々お待ちを」
中央情報管理局から君を隠す。エリコの音声記録が耳の中で再生された。国際政府が作ったデータ管理団体。世界中の貴重な情報を、全人類が平等に利用できるようにする、という目的で発足した組織だが、今ではデータ関連の事業を独り占めし、権力者にとって都合の悪いデータを隠蔽する組織に成り下がっている。
アーカイブ・サテライトも中央情報管理局が運用している。本来なら世界各地でのデータ活用に役立つはずだったあの衛星を、データの墓場にしてしまった罪深い組織ではあるが、国際政府機関であることには間違いない。そんな組織から追われる事情がある者。エリコが話していた男。ハッカーだとしたら。犯人、だとしたら。パソコンをシャットダウンした荒角さんが、話を続けた。
「最新の大きな共同プロジェクトは、光子に代わる素粒子の発見を目指す、というものです。データ管理に要する電気エネルギーや保管場所が不足しているのは、ご存じですよね?光子よりも扱いやすい素粒子でデータを構成できれば、これらの問題を一気に解決できます。それで中央情報管理局は躍起になって、世界中の研究者に新しい素粒子を探させているのです。エリコさんが発見したエレクトロン・ピンボール粒子は、有力候補の1つに挙がっていました。宇宙に飛び交っている謎の物質、ダークマターの正体である可能性もあると、噂されていたんです。本当にダークマターであれば、エレクトロン・ピンボール粒子を利用して無尽蔵にエネルギーを生み出せるかもしれないと、研究所に来た中央情報管理局の関係者が嬉しそうに話してました。だから柏戸に目を付けられてしまったのでしょうが……」
驚いた。あのエレクトロン・ピンボール粒子が、宇宙や物理に関する学問の根底を覆し得るものだったとは。ならばあの男はエリコを利用して、エレクトロン・ピンボール粒子の情報を盗もうとしたのではないか?しかし、それならばなぜエリコがあの男を匿おうとしていた?エリコがあの男と共謀していたら。頭を過った考えに首を振る。エリコは金や名誉よりも、純粋な興味関心を選ぶ人だ。消された音声データが手に入れば、きっと真相にたどり着ける。諦めるものか。喉に力を込めて、口を開いた。
「中央情報管理局との繋がりが強いのなら、この研究所はデータのバックアップを取っているはずですよね?重要な最先端技術を研究開発する組織は、技術に関する情報をアーカイブ・サテライトに送らなければならない法律があるはず。エリコの音声データも、残されているかもしれない」
「機密データ・アップリンク法ですね。五塔さんのおっしゃる通りです。でも、対象になるのは機密中の機密の研究データだけです。研究員の個人的な音声データはさすがに……。もし奇跡的にバックアップが残っていても、一度衛星に送られてしまったデータを閲覧するには、いくつもの政府機関から許可を貰わないといけませんよ?」
「権力者の都合の悪いデータも満載なアーカイブ・サテライトですからね。覚悟の上です。駄目元で調べてみてくれませんか?」
「分かりました。でも、これからセキュリティシステムの大規模メンテナンスが入りますから、時間がかかってしまうかもしれません」
「お願いします。感謝します」
両足に力を込めて立ち上がり、荒角さんに頭を下げる。同時に忙しそうな研究員が近づいてきて、荒角さんに耳打ちした。そろそろ仕事に戻らなくてはいけないのだろう。
「忙しい時にすみませんでした。どうぞ、お仕事に戻ってください」
「慌ただしくてすみません。では失礼します。また必ず連絡しますので。あ、来客用バッジは受付で返却してくださいね」
荒角さんを連れていく研究員は、俺たちに鋭い目線を送ってきた。先ほどのデバイスの強制再起動で、あらゆるトラブルが起きたのであろう研究室内は、殺伐とした雰囲気になっていた。
居心地の悪さが押し寄せてきて、そそくさと研究室を出る。受付でバッジを返却し、外の空気を思いきり吸った所で、キャスさんが話しかけてきた。
「五塔さん。さっき再生した音声データ、録音できました。捜査資料としてデータベースに保管しておくので、また聴きたくなったら私か警部に連絡を。もちろん荒角さんの証言も追記しておきましたので」
「本当ですか!助かります」
「良い仕事するでしょう。うちのキャスは」
冠木さんがキャスさんの肩をバシバシと叩く。キャスさんは照れくさそうだ。冠木さんは板状の携帯を取り出し、画面を確認した。
「そろそろ昼飯時ですね。4人でファミレスにでも寄りますか、と言いたいところですが、残念ながら俺たちはもう戻らないと。備品管理課の業務もこなしていないと、この掟破りの単独捜査を上に勘づかれてしまいますから」
「あら、そうなら仕方ないわね。本当は冠木さんとキャスさんとも一緒に、お昼を食べながら推理を進めていきたいのだけれど。では、近いうちに、またね」
「時子さん、五塔さん、ではまた。何かあったらすぐに連絡してください」
冠木さんとキャスさんを見送りながら、空腹を強く感じた。食欲をはっきりと感じたのは久しぶりだ。
「チャーシューメン、食べたい」
時子さんの呟きで、腹が情けない重低音を鳴らし始めた。さりげなく時子さんから離れる。
「……その音は同意と受け取っていいのかしら?」
やっぱり聞こえてしまっていた。
「はは、バレましたか。今すぐファミレスに行きましょう」
通り抜けていく強い北風も、同じ目的地に向かっているような気がした。
★お読みくださり、誠にありがとうございます!きっと未来にもチャーシューメンはあると信じて…!
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