【番外編 vol.5】京都・滋賀の洋菓子店巡り帖 |京都の夏越の祓(なごしのはらえ)。三角形の和菓子「水無月」に宿る伝統と、新しい苺の形
📅 一年の折り返し、京都の空気を整える
6月30日。京都の街を歩いていると、いつもとは違う「リズム」を感じます。
至る所に設置された大きな茅の輪(ちのわ)。それを静かにくぐり、心身の澱(おり)を払い落とす人々の列。一年のちょうど半分にあたる今日、京都では「夏越の祓(なごしのはらえ)」という伝統行事が行われます。
半年間で無意識のうちに溜め込んだ「負のデータ」をクリアして、残りの半年をクリーンな状態で始めるための、街全体で行うシステムリセットのような一日。
この日、京都の街角で必ず出会うのが、三角形の和菓子「水無月(みなづき)」です。

氷室(ひむろ)の氷を模したという涼やかな三角形。厄除けの小豆が添えられた、シンプルで潔いフォルム。古くから受け継がれてきたその形には、京都という街が大切にしてきた「余白」を整えるための知恵が詰まっているように感じます。
そんな伝統的な「水無月」の美しさに触れつつ、今年は少し新しい試みにも目を向けてみました。老舗が守る伝統の味と、苺の専門店が描くモダンな解釈。
今日は、そんな季節の変わり目をデザインの視点で切り取りながら、【番外編】心ときめく、京都・滋賀の洋菓子店巡り帖として、私のライブラリに新しい一ページを加えたいと思います。
⛩️ 夏越の祓(なごしのはらえ)と茅の輪くぐり
6月30日は、一年の後半に向けて心身をリセットする大切な日。京都の各神社では「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。
https://precious.jp/articles/-/19762
境内に現れる大きな「茅の輪(ちのわ)」。茅(ちがや)を束ねて作られたこの輪を「左・右・左」と8の字を描くように3回くぐることで、半年間の罪や穢れを払い、無病息災を祈ります。

この儀式で面白いのは、神社という空間に突如として現れる「円」の図形。古くからの反復による儀式ですが、その視覚的な「円」のフォルムは、街の静寂の中に不思議なリズムを生み出しています。
🧊 水無月(みなづき)という知恵
この時期に欠かせないのが、三角形の和菓子「水無月」です。
なぜ三角形?: かつて宮中で使われていた「氷室の氷」を形にしたもの。暑い夏を乗り切るための氷に見立てられています。
なぜ小豆?: 上に乗せられた小豆は、邪気を払う厄除けの意味を持っています。
氷を模した「三角形」と、厄を払う「小豆」。これらが組み合わさった水無月は、機能美と願いが両立した、完成されたデザインの和菓子と言えるでしょう。
🍓 伝統と進化を味わう:水無月コレクション
今回は、伝統を守る王道の味から、現代的な感性でアレンジされた味まで、それぞれの「個性」をデザイン的な視点も交えてご紹介します。
小松屋(寺町通) バイオリンのレッスンの前、寺町専門店街を歩いているときに出会った一品です。小松やさんの水無月は、まさに「王道の美学」。どっしりとした小豆の粒感と、外郎生地の弾力。伝統的な「整列」の美しさを体現したような、食べていて安心する味わいです。

仙太郎 言わずと知れた和菓子の名店。仙太郎の水無月は、とにかく小豆の存在感が圧倒的です。外郎生地が小豆の風味を支えつつ、一つひとつの素材が力強く主張し合っています。ミニマルな三角形の中に、職人の技とこだわりがぎゅっと凝縮された、質実剛健なデザインを感じさせる一品です。


メゾン・ド・フルージュ(苺専門店) 伝統の形はそのままに、驚きのアイデアが光る逸品です。苺専門店「メゾン・ド・フルージュ」が手掛けるこの水無月は、従来の和菓子の枠を超えた新しい挑戦。特筆すべきは、ミルク味の外郎(ういろう)生地です。通常の小豆生地とは異なり、ミルクの優しい甘さと苺のフレッシュな酸味が口の中で重なり合い、まるで洗練された洋菓子のような表情を見せてくれます。 (苺の水無月について、詳しくはこちらの記事へ)





✨ 結び:一年の折り返しをデザインする
こうして並べてみると、伝統的な「水無月」という共通のフォーマットがあるからこそ、作り手のこだわりや、時代ごとの新しい解釈が際立つことがよくわかります。
今日という6月30日は、過ぎ去った半年を整理し、これから迎える季節を見据えるための「余白」のような一日。
京都の街で茅の輪をくぐり、自分に合ったお気に入りの水無月を選んでみる。そんなささやかな行為が、滞っていた気持ちをリセットし、明日からの半年をより鮮やかに彩ってくれる気がします。
皆さんもぜひ、自分好みの水無月を見つけて、心身を整える素敵な時間を過ごしてみてください。
🍓 苺専門店との新しい出会い
実は、このメゾン・ド・フルージュの「苺の水無月」を知ったのは今年が初めてのことでした。お店自体の存在は以前から知っていたのですが、なかなか入る機会が作れずにいた場所。
今回、水無月をきっかけに訪れてみて、店内には他にも苺をふんだんに使った美味しそうな洋菓子がたくさん並んでいることに気づきました。
「水無月」だけでなく、他の季節のスイーツもぜひ味わいに、また近いうちにゆっくりと足を運んでみたいと思います。こうした新しい発見があるのも、街を歩き、季節の行事を楽しむ楽しみの一つですね。
来年の6月30日には、またどんな水無月に出会えるでしょうか。そんな季節の楽しみを胸に、今日という節目を大切にしていきたいと思います。
