【女子枠③】賛成派「実質的機会の平等」vs.反対派「能力主義への違反」
ほんごう小学校5ねん3くみのみんなと楽しく勉強しよう。あれあれ、怒ってる子がいるみたいだ。どうしたんだろう。
ゆうくん「女子枠は頭悪い!女子だけ優遇されるのは、おかしい!僕は、こんな理不尽な制度、許せない。点数順で上から順番に合格者を決める。それで良いじゃないか」
ゆうくんは、女子枠への怒りで顔を真っ赤にしています。
こんな風に、個人の能力・才能・努力・実績に基づいて地位が与えられるべきという考えを能力主義と言うんだ。入学試験では、最も成績が良いと判断された者から順番に、合格者としての地位を与えるべきということだね。女子枠反対の根拠として、能力主義が挙げられることは多い。
だけど、先生は、女子枠は必ずしも能力主義に反すしない、と思うんだ。コラっ。ゆうくん、授業中に先生を睨んじゃダメだよ。


女子枠は能力主義に反しない
女子枠入学者は能力で劣る、というゆうくんの意見、かなちゃんは反論ある?
かなちゃん「マジョリティである男性たちは、自分たちに有利なように評価基準を確立してきました。だから、今ある評価基準では正しく女性の能力を評価することができません。だから個別試験も必要なんです」
そうだね。基準を決めてるのは男性たちなんだからフェアな基準じゃないかもし、、、と話をまとめる暇もなく、かなちゃんが喋り続ける。
しまった……かなちゃんは女性の権利に敏感なお年頃だった……
かなちゃん「反対論者の皆さんが想定する能力って、要するにペーパー試験ですよね。体調が不安定になりやすい女性にとって、一発勝負で長時間のペーパー試験は不利になりやすいです。また、数学の比重の高さも女性には不利でしょう。女性は、体力がなかったり、数学が苦手だったりするだけで、他では優れた能力を有しているのかもしれません。
ペーパー試験は平等と思い込んでいますが、女性を不当に低く評価してしまうシステムなんです。
入学試験に限らず、選抜システムを作るのは既存の体制で有利にある側の人間です。当然、自分たちに有利なようにシステムを作り選抜を行うでしょう。既存の評価基準で不利な境遇の人々に機会を保障するのであれば、既存のシステムでは評価することはできません。
そこで、マイノリティに向けては、通常の選抜方法とは別で個別性の高い試験を設けるのです。そこではペーパー試験だけでなく、「総合的に」合否が決定されます。今までの基準では測れない基準で評価するだけであり、能力主義には反しないのです。ただ、モノサシが異なるだけです。はぁはぁ。」
一息で喋り切ったからか、息も絶え絶えのかなちゃん。熱心な男子生徒からの歓声が聞こえてきます。議論で、自分ばかり喋ろうとするのは良くないですが、女性の権利向上にかける情熱は、二重丸だね。
かなちゃん。ありがとう。以来と極端な意見もあったけど、言いたいのは次の2つだね。
・女子枠は、能力の違いではなく、評価方法の違いである。
・異なる評価方法を使うのは、今までの評価方法はマジョリティが作ってきて、マイノリティには不利だから(たとえば、入学試験では数学の配点が大きいけれど、数学が得意な男性に有利なシステムと言えるかもね)
ゆうくん「先生、でも数学の重要性が高いから、数学の配点が大きいんじゃないですか?何も差別ではないと思うんですけど」
かなちゃん「そういう無意識のバイアスが問題だと言ってんの!今、数学が重要だって判断してるのはマジョリティの判断でしょ!本当にそうなのか分からないじゃない」
ゆうくん「いや、数学が重要なのなんて、そうに決まってるだろ!!何言ってんだよ」
かなちゃん「たとえば就活の適性検査に置き換えてみるとどうかしら。適性検査の問題は中学受験の算数に酷似した問題が出されるわ。あれは、中学受験経験者が有利。そして企業の偉い人には有名中高一貫校出身者が多い。公正中立な試験だと思ってても、無意識のうちに自分たちに有利なようなバイアスがかかってるのよ」
試験を行う側は現行の評価システムで成功した側なので、自分たちに有利なように評価システムを作っちゃうんだ。だから、今までとは異なる基準で見る必要があるんだ。そうだ、ゆうくん、何か女子枠以外で、別枠で評価する具体例を思いつかないかな?
ゆうくん「帰国子女入試も、優遇ではなく、モノサシの違いで説明できます。日本とは異なるカリキュラムの授業を受けてきた生徒を、ペーパー試験で評価できないでしょう。だから、面接や作文によって、総合的にポテンシャルを評価することになります。これは、能力的に劣っている帰国子女を入学させるための制度ではありません。あくまで評価手法が異なるだけなのです。」
ゆうくんは、不満げな顔をしています。きっと彼の心の中では、能力主義には反しないと分かってしまったが、どうにも女子枠は許せないという気持ちがせめぎ合っているのでしょう。
評価方法が違うだけで、少なくとも建前上は能力主義には基づいている。だから、女子枠入学者が能力的に劣るとは言えない。実態はどうであれね。
あと、構造的差別の是正を目的としている以上、評価者にもマイノリティを増やそうとする試みを否定することも難しい。先生も、君が不満に感じるお気持ちは、よーくわかるんだけどね。
ゆうくん「じゃあ、先生は、男子高校生は泣き寝入りしろ、っていうんですか??やっぱり僕は許せません」
そんなことはない。次回からは、いよいよ反対派も主張を展開していくよ。次回の授業はここから!
読書案内:日米のアファーマティブアクションの違いを検討しつつ、日本における正当化の理論を示した本です。体系的にまとまっていて読みやすいよ。
