見出し画像

【エッセイ】隣町の旧市街地『佐竹健のYoutube奮闘記(143)』

 隣の区には山があった。

「山」といってもそれほど大層なものではなくて、どちらかというと、丘陵の延長線にある小高い山といった感じだったか。初夏には色鮮やかな新緑が、秋には紅葉がきれいな、そんな山だった。

 入り口には神社があった。祀られていたのは、秋葉権現だったか。

(なぜ山岳信仰の神様がここに祀られてるんだろう?)

 これについては不思議に思った。特に険しいわけでもない丘陵の延長線の山、しかも平野部もかなり近い山なのに。

 神社には社務所は無かったが、そこそこ立派な神社だった。手水舎には青銅でできた龍があって、その口からとくとくと水が出ていた。

 私はこの神社が好きだった。空気がきれいで居心地のいい場所だったから。あと、平野育ちの私には、自転車を漕げば行ける山の神社が珍しかったのもある。

 神社の近くは公園になっていた。

 公園には平和を祈念した仏塔(パコダ)のようなものがあった覚えがある。インドからお釈迦様の骨を取り寄せ、納めた塔がここにあったのである。この仏塔について、私は、

「もっとマシな場所無かったの?」

 と思った。少し大きめのお寺とか、もう少し相応しい場所があったのではなかろうか? 

 同時に「区の公園という場所にあるのも、何か意味があるのではないか?」とも思った。姉妹都市の交流何周年記念みたいに。

「ふーん」で流したいけども流せない違和感とは、こういうのを言うのかもしれない。

 仏塔と同じ場所に小さな展望台があった。

 ここからは山の向こう側の街が見えた。

 山の向こう側の街は、別世界だった。

 私の住んでいる街には、住宅街が広がっていて、田園を介してはいるが、都会のビル群が遠くからかすかに見える。対して展望台の向こう側には、今いる山よりもさらに高い山があって、その麓に小さな町がある。

 ここに私は、世界の断絶を感じた。この山を越えたらどこまでも続く田舎、そして反対側にも田園はあるが、広がっているのは目の前の小さな町と向こう側に林立するビル群。まるで世界を隔てる壁である。

 この向こう側へ、私は行こうとしたことがある。何かがありそうな気がしたから。でも、山道がきつすぎて、通学に使っている自転車では越えるのは無理と悟って引き返したのは、今となってはいい思い出である。

 余談だが、今思い出したら、向こう側の町は、東北のそれに近い気がした。


 帰り道はアニメみたいな風景だった。山へと続く一本道の坂に沿って住宅が軒を連ねていて、向こう側に見えるのは、平野部の街並み。構図が完全に青春アニメとかに出てきそうな感じである。近くには高校もあるから、制服姿の高校生が、自転車を押しながら友達と帰っているだけでも絵になる。

 この道をまっすぐ進んだ先には、この地域一帯の古い町並みが広がっている。他の路線に乗り換えられる大きな駅があって、人口も多いためなのか、私の住んでいる地域とは対照的に江戸時代とか明治の建物は少ない。あるとしたらイオンではない大型スーパーとか、カラオケといった感じか。あ、あと、老朽化した昔のショッピングモールもあった。こちらもイオンではない。

 老朽化した昔のショッピングモールは、一瞥すると、煤けた壁のビルである。いつ取り壊されてもおかしくないくらいにはボロい。

 何があるか気になったから、私はその老朽化した昔のショッピングモールの中へと入ったことが、一度だけある。

 中は意外にも地元の系列のスーパーだったり、喫茶店だったりが入っていた。意外にも店は入っていた。ただ、予想通り中は薄暗くて、ボロい。そして、空いている場所も目立つ。けれども、味がある。昔はここにも人やテナントが入っていて、賑わっていたんだろうなと考えると、何とも言えない感情になるのだ。一言で表すなら「栄枯盛衰」という四字熟語が近いかもしれない。

 ここに立ち寄った私は、喫茶店へと入り、アイスを頼んだ。

 頼んだアイスの味は、バニラだったかな。チョコだった気もしなくはないけど。


 隣町の旧市街地の感じはこんな感じか。今思い出すと、本当に懐かしい。

 隣町といえば、私はブックオフの話や高校の通学路沿いの話をしているけど、思い返せば詳しく語ったことはなかった。でも、こうして書いてみると、やっぱり隣町の旧市街地にもいろいろあって、私もそこを生活圏にしていたのだなと感じた。

 故郷みたいな土地があるとすれば、東京、戸田、和光、川越、鎌倉と続いて、ここも入るだろう。

 最後に言っておくが、調べてみたところ、公園と神社は現役であった。だが、私がアイスを食べた廃ビルにも似たスーパーはわからない。城めぐりのときに地元にも立ち寄ったけれども、この辺りには寄ってないから。というより、もう10年近く経っているから、取り壊されているかもしれない。

(おわり)


【前の話】


【チャンネル】


【関連動画】

いいなと思ったら応援しよう!

佐竹健 書いた記事が面白いと思った方は、サポートお願いします!