利上げしても円安が止まらない日本市場の今
日銀が政策金利を1.0%に引き上げた翌日、円は逆に売られた。利上げで通貨高になるはずの教科書的な動きが、今の日本では起きていない。
> 利上げしても円が売られる。これが今の日本の構造的な問題だ。
この記事のポイント
・日銀の利上げが円高に働かない逆説が起きている
・ウクライナ型の地政学リスクが市場の変化を加速させた
・AI銘柄と円相場が真逆の動きをする時代に入った
何が起きたか
2025年、日銀は政策金利を0.75%から1.0%に引き上げた。1995年以来、実に31年ぶりの高水準だ。同時期、ウクライナ情勢に連動する形で中東の和平協議が続くなか、市場の地政学リスクへの見方は急速に変化した。株式市場ではAI・半導体関連銘柄が買われ、日経平均は一時
7万2000円超え
を記録。一方で円は利上げ後も売られ、一時
1ドル=160円90銭台
という2024年7月以来、約1年11か月ぶりの円安水準まで下落した。
なぜ利上げしても円は安くなり続けるのか
日銀内部には「過去に焦って失敗した」というトラウマがある。ある幹部は「遅いと批判されてもゆっくりと金融正常化を進める」と明言している。この姿勢が、結果的に市場に「日銀の利上げは緩慢すぎる」というシグナルを送り続けている。
実際に影響を受けているのは、輸入コストが上がり続ける日本の一般消費者と企業だ。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年同月比は2%超が続き、企業間取引での価格転嫁が「やや速いスピード」で消費者段階に波及していると、日銀の内田真一副総裁自身が認めている。
欧米の中央銀行はウクライナ侵略後の物価上昇に対応した利上げと利下げの局面をすでに終え、今度は中東情勢悪化による原油高に対応した再利上げ局面に入っている。日銀はその動きに「周回遅れ」の状態にある。金利差が縮まらないから、円売り圧力は構造的に続く。東短リサーチの加藤出社長は「利上げの遅れが円の信認や日本経済に対する信頼に影響する」と警鐘を鳴らしているが、これは単なる警告ではなく、すでにオンラインの外為市場で数字として現れている現実だ。
AI銘柄が急騰する一方で円が売られるという今の市場の変化は、実は同じ一つの力学から来ている可能性がある。世界の投資マネーは「成長が見込める場所」に集中し、「政策が後手に回っている通貨」から逃げる。日経平均の上昇は、日本企業への信頼ではなく、円安で割安になった日本株への外国人買いという側面も否定できない。
私がこのニュースから動いたこと
私がコンサル時代に痛感したのは、「遅れた判断は、判断しないより質が悪い」という現実だ。クライアントの製造業で、コスト上昇への対応を「様子見」した結果、半年後に取引先への価格転嫁交渉が完全に遅れた案件があった。日銀の今の動きは、あの時の経営陣の判断と重なって見える。
私は今回の市場の変化を見て、円建て資産の比率を再点検した。日銀が1.0%まで上げても円安が進むということは、市場は「これで終わり」とは見ていないということだ。FRBが再利上げ方向に動けば、日米金利差はまたオンラインの外為市場で即座に円売りの引き金になる。ウクライナ情勢や中東の地政学リスクが落ち着いても、この構造問題は残ると私は見ている。
AI関連銘柄の急騰については、冷静に見る必要があると判断した。トランプ大統領が数億ドル規模でエヌビディアやマイクロソフトなどのAI株を取得し、政府によるAI株保有構想まで打ち出している。相場の維持を狙った動きとされている。SOX指数が
6日連続で最高値更新
しているような局面は、FOMOが支配している状態だ。私はこういう時ほど、エントリーより「どこで手を引くか」を先に決めることにしている。
利上げが効かない円と、AI相場のFOMOが同時進行する今は、「どちらかに乗る」より「構造を読む」ことが先になる局面だ。
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