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ブラックボックスの中の善意

前回、DX化の仕組みがブラックボックスだという話を書いた。

その謎に迫るべく、探偵は動き出した。

……というのは半分冗談であるが、
ちょうど夫がICT支援員さんと話す機会があり、その話がなかなか興味深かった。



ある日の職場で

先日、ICT支援員さんと作業することがあり、色々とわかったことがあった。
彼はとてもいい人で、実は前任校でも関わりがあったため、共通の話題もあり、話は自然と弾んだ。

まずは技術的なことをいくつか質問する。
トラブルが起きた時のリカバリーの方法、設定を直すための操作。それから、あるキーを同時に押すとできるような裏技まで、親切に教えてくれた。

その人は、ファイルをきれいに整理し、デスクトップに何をどう置くかまできちんと決めている、丁寧に仕事をする人だ。

聞けば、その仕事ぶりは、かつての師匠の影響らしい。
物を大切に扱う教えが、今の仕事にも生きているのだという。

ハードディスクに負担をかけないように、パソコンやタブレットが少しでも長持ちするように。
そういう細かな配慮をしているのが伝わってきた。

それぞれ流儀がある

ただ、そういうやり方ばかりが重視されるとは限らないようだ。
会社によっては、とにかくスピード優先で、少し空き容量ができたなら「もう使えますよ」と返して終わることもあるという。

丁寧に整えて長くもたせるやり方。とにかく今動けばいいというやり方。
流儀がずいぶん違うみたいだ。


そこで業務の形態を聞くと、また面白いことがわかった。
この地域のICT支援員は、ひとつの組織にいるのではなく、いくつかの会社に所属していて、そこからさらに複数の学校へ派遣されているとのこと。
会社によって方針が違う。人によってやり方も違う。
派遣先の学校では、はじめましての別会社の支援員さんと一緒に作業することも多いそうだ。

「私たちは薬剤師みたいなものです」

「結局は、直ればいいんです。症状が出たら、それに合った対処法を出す」

なるほど、と思った。
同じ「直す」という作業でもやり方は幾通りもある。そこに、会社や人による違いが出るのかもしれない。


と、私があまりに興味津々で聞くので、支援員さんもそろそろ驚いたようだ。

「こんなに熱心に聞いてくれる先生は珍しいですよ。たいていは丸投げされることが多いです。ひどいときには、『お金を払ってやってもらっているんだから当然』という態度をされることもあります」

「だから先生、もっと頼っていいんですよ」

おっと、そうだった。
私は頼る練習をしていたところである。

ところが話には続きがあった。


善意が仕事になるとき

ある学校では、前回の記事でも書いた欠席連絡ツールの更新作業まで、任されているようなのだ。
学校独自のシステムまでは把握していないから、今度は支援員さんの側が苦労しているという。

ここまで聞くと、少し「言ったもの勝ち」の気配がしてくる。
支援員の仕事にも、どこまでやるのかという線引きがはっきりないという。
頼まれれば、断りにくい。前の担当者が気を利かせてやっていたことが、いつの間にかやってもらえて当たり前になっていく。

善意だったものが、いつの間にか誰かの首を締めている。

これは学校現場でも、よく見る現象だ。
お互いにそこには違和感があった。しかし自分も頼まれたらやってしまう側になりかねない。


それでも最後に支援員さんはこう言って笑ってくれた。
「もうここまで詳しくなったら、この仕事できますね」

こうしてまた一つ、スキルを手に入れてしまった。




前回の記事では、DX化の裏側にある、見えない仕組みへの違和感を書きました。あわせて読むと、今回の話が少しつながって見えるかもしれません。



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