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事業戦略のストーリーを人事戦略と繋げるには?|書評『ストーリーとしての競争戦略』

4月に入り、いよいよ新学期のスタートですね。長男は高校生になり、身長も私と同じくらいになりとても頼もしく感じています。とはいえ子供が4人いると一息つくにはまだ早いので、引き続き頑張っていきます!!

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新田がこの本を読もうと思った理由

今回紹介するのは、楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』です。

この本を手に取った直接のきっかけは、アイリスオーヤマ代表取締役会長・大山健太郎さんの『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』を読んだことでした。

同書で語られているアイリスオーヤマの経営は、外部環境や流行に左右されることなく、「なぜ自分たちは勝てるのか」「なぜ利益を出し続けられるのか」という因果が一貫しており、極めて強固なロジックを持っていると感じました。読み進めるうちに、これはまさに楠木さんの言う「ストーリーとしての競争戦略」のベストケースなのではないかという認識に至りました。

一方で、大山さんの書籍は実践知として非常に具体的であるがゆえに、そのままでは他社に横展開しづらい側面もあります。そこで、アイリスオーヤマの成功を単なる成功事例として消費するのではなく、抽象化し、再利用可能な「知恵」として自分の中に取り込みたいと考えるようになりました。

そのために必要なのが、競争優位を「物語」として構造化する視点であり、その理論的な背骨を与えてくれるのが『ストーリーとしての競争戦略』だと考え、本書を読むことにしました。

戦略は「一貫した意思決定を可能にするストーリー」

『ストーリーとしての競争戦略』は、競争戦略の本質を「論理的整合性を持ったストーリー」として捉え直すことを提唱しています。

楠木さんは、優れた戦略とは単なる目標設定や施策の集合ではなく、「なぜその企業は儲かり続けるのか」を説明できる因果の物語であるとおっしゃっています。つまり、競争優位とは「一貫した因果関係の連鎖」を意味します。

どのような価値を顧客に提供し、なぜそれが他社には真似できず、その結果としてなぜ利益が生まれ続けるのか? この問いに対して、矛盾なく説明できる構造を持っているかどうかが、戦略の有無を分けます。

楠木さんは、戦略を「選択の体系」として捉えています。すべてをやろうとするのではなく、「やらないこと」を含めたトレードオフを引き受けることで、戦略のストーリーは立ち上がります。重要なのは、個々の施策の正しさではなく、それらが相互に補完し合い、全体としてフィットしているかどうかです。

また、本書では時間軸の重要性が繰り返し強調されています。短期的な効率や流行ではなく、長期にわたって積み上がる因果の連鎖こそが競争優位を生みます。だからこそ、戦略は後講釈ではなく、未来に向けて語られる「ストーリー」でなければなりません。

そういった意味で、本書では戦略を「分析技術」ではなく「一貫した意思決定を可能にするストーリー」として再定義しています。

新田が思ったこと

分析だけでは「なぜこれからも勝てるのか」を語るには不十分だった

戦略人事の立場に立つと、まず最初にやるべきことは、戦略を細かく分解することではなく「大きくつかむ」ことなのだと改めて感じました。

これまで私自身、MBA的な分析フレームワークを使って、過去の成功事例を説明することはできていたと思います。「なぜあの会社は勝ったのか?」という問いに対して、後講釈としての説明は成立していました。

しかし本書を読んで痛感したのは、それらの分析は「なぜ勝ったか」は語れても、「なぜこれからも勝てるのか」を語るには決定的に不十分だった、という点です。

未来に向けた競争優位を判断する際、最後に拠りどころになるのは、分析の精緻さやフレームワークの数ではなく、意思決定を貫く一貫したストーリーがあるかどうかでした。

施策同士が矛盾していないか、トレードオフを引き受けているか、そして「それをやり続けた結果、なぜ利益が出続けるのか」が説明できるか。この基準こそが、戦略の有無を分けるのだと再認識しました。

事業戦略のストーリーを人事戦略と繋げるには?

この意思決定を貫く一貫したストーリーが必要であるという視点は、人事にもそのまま当てはまります。人事施策が戦略的であるかどうかは、制度の新しさや完成度ではなく、事業戦略というストーリーを補完するものになっているかで決まります。評価、報酬、採用、育成といった個別施策が、同じ物語の中に位置づけられているかどうかが問われているのだと思います。

人事が部分最適に陥ると、制度は整っているのに、なぜか組織が前に進まない状態が生まれます。それは、人事が「戦略=ストーリー」という前提を共有できていないからなのだと感じました。

本書は、戦略人事に携わる者に対して、「まずそのストーリーを語れていますか?」と、静かに、しかし鋭く問いかけてくる一冊でした。

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