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人材マネジメントポリシーとは何か?【時をかける戦略×人事】(5話)

〜前回までのあらすじ〜

(ナレーション)
意義を定め、アウトプットを描き、アウトプットに必要な機能を洗い出し、
その機能を支える人員を逆算することで、組織図はようやく“描けるもの”になった。第4話で見えてきたのは、組織設計の順番だった。

だが、そこで議論は終わらない。むしろここから、もう一つ厄介な問いが立ち上がる。
その役割を、いったいどんな人に担ってもらうのか。
そして、その人を会社としてどう評価するのか……。

組織図の次に問われる「人材への期待」

ここまでの話で、組織図をどう描くかはかなり腹落ちした。
意義を起点にして、そこからアウトプットを定めて、
必要な機能と資源を洗い出して、人員構成を逆算していく。
少なくとも“今いる人を前提にした帳尻合わせの組織図”からは
抜け出せそうだ、という感覚はある。

ふむふむ。

でもな、そこまで来ると今度は別のところで手が止まるんだよ。
その役割を担う人に、会社として何を求めるのか?
逆に、会社として何を返すのか?
そこが曖昧なままだと、採用も評価も育成も、
結局またバラバラになるんじゃないか
って思うんだ。

うん……ぼくも、そこがすごく引っかかっていました。
組織図は描けるようになったのに、
「じゃあそのポジションには、どんな人がいてほしいの?」
って聞かれると、急に答えづらくなるんですよね。

なんとなく“主体性がある人”とか“成長意欲がある人”って
言いたくなるんだけど、たぶんそれだけじゃ弱いし、
会社によって全然違う気もする。

そうなんだよ。
MVVを作り、評価制度を設計して、等級や報酬まで整えたとしても、
現場で「結局、どんな人が評価される会社なのか」が曖昧なら、
文化なんて簡単には変わらない。

むしろ言葉だけ立派で、運用がブレたら、
そっちのほうが社員は冷める気がしてる。

(イマトニー、少し考えてから、髪もないのに頭を掻きながら)
……その感覚は、かなり自然だと思う。

「人材マネジメントポリシー」という言葉だけを見ると、制度の説明とか、人事部門の文書整備のように見えるかもしれない。
でも実際には、もう少し経営に近い話として捉えたほうが、整理しやすいことが多いんだ。

人材マネジメントポリシーは、制度ではなく「選択」

そのなかで私は人材マネジメントポリシーを、 制度そのものではなく、「この会社は、どんな人を価値ある存在として報いるのか」を決める行為なんだと捉えているよ。

ここで誤解しやすいのは、「正しい人材マネジメントポリシーがどこかにあって、それを見つければいい」という見方です。でも、実際にはそう単純ではありません。
たとえば、育成を重視するのか、即戦力を重視するのか。結果を強く問うのか、プロセスも含めて見るのか。個人の強さを評価するのか、チームでの協働を重視するのか……。
このような問いについて、全部を同時に取りに行くことは難しいはず。

全部を満たすのは流石に難しいですね……。

弊社New Field Partnersの営業資料でも、Netflix / Google / Amazon / Recruit / Toyota を並べて比較しているけど、 見てもらうとわかるとおり、 どの会社も“良い会社”ではある一方で、 人材に求めるものも、会社が提供するものも、かなり違うんだ

企業の人材マネジメントポリシーに唯一解はない。

各社はそれぞれ異なる前提で、「何を求め、何を提供するか」を選び取っている。

Netflix は Freedom & Responsibility を前面に出し、
Google は心理的安全性と学習・データドリブンを重視し、
Amazon は Customer Obsession と原則・メカニズムで大規模組織を動かし、
Recruit は自律・チーム・進化を軸に、個の成長と事業創造を同期させている。

つまり、どれが正しいかではなく、自社がどの戦い方を選ぶのかが先にある、ということなんだ。

ポリシーとは「何を選び、何を選ばないか」の宣言である

要するに、「いい会社っぽい言葉」を並べることじゃなくて、
どこで線を引くかを決める話ってことか。

そう捉えると、かなり整理しやすいと思うよ。
人材マネジメントポリシーって、「正しい答え」を示すものというより、 自社は何を選び、何を選ばないのかを明確にする行為に近いからね。

言い換えると、「判断に迷ったときの“戻る場所”を決める」ということなんだ。
採用の場面で迷ったとき、 昇進で迷ったとき、育成投資の優先順位で迷ったとき、「うちは何を価値とする会社なんだっけ」と立ち戻れるようにするねらいがあるよ。

全部取りはできないから、 最初にちゃんと線を引いておく、
ってことなんですね。

そうだね。 そして、その線引きを経営の言葉として宣言することが重要。
社員に何を求めるのか? 会社は何を用意するのか?
この関係性が言葉になっていないと、評価や昇進や配置の場面で、「結局、何を大事にしている会社なのか」が揺れやすくなるんだ。

事例① リクルート

日本企業で言えば、リクルートは、この点を明確にしてきた会社なんだ。
リクルートは、「『一人ひとりが起点』。圧倒的な当事者意識と『自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ』を軸に、個の成長と事業創造を同期させる」というマネジメントポリシーで整理できる。

社員に求めるものとしては、起業家精神・当事者意識、自ら考え動き切る力、圧倒的な成長意欲が置かれている。
会社が提供するものとしては、若手からの大きな裁量、挑戦や越境機会、新規事業などが挙げられている。
つまり、これは“正解”というより、リクルートが選んだスタンスなんだ。

なるほどな。育成寄りかつ挑戦寄り。
個の成長をかなり強く信じてる会社ってことだな。

そのとおり。逆に言えば、それに合わない人も一定数いるはず。
でも、それでいいんです。
人材マネジメントポリシーは、「みんなに好かれる言葉」を作る話ではなく、「誰に強く刺さる会社なのか」を決める話でもあるからね。

事例② グローバルパートナーズ

もう少し極端な事例を置くと、この話はさらにわかりやすくなるかもしれないね。

マイナビニュースで、東京・池袋のベンチャー企業 グローバルパートナーズ が取り上げられていたんだ。

記事では、

『ゾス!』の大きな掛け声と共に1日が始まり、
厳しい指導や競争、残業や飲み会もある、
かつて昭和の日本企業さながらの光景が今も残る会社

と紹介されている。その様子はSNSで「ブラック企業では?」と炎上する一方で、その社風に憧れて「自分もこの会社で働きたい」と入社してくる若者も後を絶たない、とも書かれているんだ。

外から見ると「厳しすぎる」ように見える環境でも、
それを求めてその会社に入りたいって思う人はいるわけか。

そのとおり。
もちろん、そこに良し悪しの議論はあるし、全ての会社がそうあるべきだ、という話ではないよ。
ただ、ここで注目したいのは、その会社が、どんな環境なら、どんな人に刺さるのかを非常に鮮明に示しているという点なんだ。

つまり、「誰にでも来てほしい」じゃなくて、
「こういう環境に魅力を感じる人に来てほしい」って、
かなりはっきりしてるんだね。

そうだね。言い方を変えると、人材マネジメントポリシーが強い会社ほど、万人受けはしにくくなるということでもある。でもその代わり、合う人には深く刺さるんだ。

採用の母集団をとにかく広げる、という発想よりも、自社のスタンスに共鳴する人と、きちんと出会うほうが大事な局面もあるはず。
そう考えると、人材マネジメントポリシーは、採用効率の話というより、採用の解像度を高める話でもあるのかもしれないね。

それは、かなり納得感あるな。
ポリシーって制度の裏側にあるものじゃなくて、
「どんな人に選ばれる会社か」を決める話でもあるってことか。

結論

このように見ていくと、人材マネジメントポリシーとは、正しい言葉を探すことではなく、自社は、どんな人に来てほしくて、どんな人とは合わないのかを、きちんと引き受けることだと言えるね。

なるほどな……。制度をどう作るかの前に、
どんな会社でありたいかを、人材の言葉で決める必要がある
ってことか。

じゃあ、 育成か即戦力か、個人かチームか、自由か規律か、
みたいな「選択」は、どうやって決めていけばいいんですかね。
どの順番で考えて、どこまで決まったら、
人材マネジメントポリシーは完成したって言えるんでしょうか?

(ナレーション)
物語は次回、「人材マネジメントポリシーを、どのように決めていくか」へ進んでいく。

今回のおさらい

  1. 人材マネジメントポリシーに唯一解はない
    会社ごとに、何を優先し、何を優先しないかは違う。

  2. ポリシーとは「何を選び、何を選ばないか」の宣言である
    判断に迷ったときに立ち戻る場所を、経営の言葉としてつくる。

  3. 強いポリシーほど、万人受けはしにくいが、合う人には深く刺さる
    リクルートのような洗練された例もあれば、グローバルパートナーズのように賛否が分かれるほど鮮明な例もある

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