戦略と組織のギャップを埋める組織開発の進め方①|書評『急成長を導くマネージャーの型』
ゴールデンウィークが明けて約1週間。仕事に戻り、ぼちぼち感覚を取り戻してきた頃合いでしょうか。気温が30度近くなる日も増えているので皆さん熱中症に気をつけましょうね。
さて、今回の書評は、長村禎庸さんの『急成長を導くマネージャーの型』です。
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新田がこの本を手に取ったきっかけ
YouTubeで偶然「PIVOT」に出演していた長村さんを見かけ、一気に惹かれました。
特に印象に残ったのは、以下の2点です。
組織フェーズを感覚論ではなく、構造的に整理して語っていたこと
メンバーへの関与の仕方を、再現可能な「型」として言語化していたこと
私はこれまで、人事・組織開発の立場で組織サーベイやマネージャー支援に関わるなかで、事業サイドと人事が対立構造になってしまう場面を何度も見てきました。
多くの場合、どちらが悪いわけでもなく、 「見ている前提」や「置かれている組織フェーズ」がズレているだけです。
長村さんの話を聞いたとき、このズレを埋めるための共通言語になりそうだと直感しました。 そのままの流れで、本書を手に取りました。
本の要約
本書は、急成長フェーズの組織において、マネージャーに何を期待すべきかを「フェーズ前提」で整理した一冊です。
主に扱われている論点は以下です。
大企業とベンチャーにおけるマネジメントのゴールの違い
組織フェーズによって、マネージャーの役割は変わるという前提
上長と部下の間で「イーブン」に働くための関与の考え方
ジョハリの窓をベースにした Will / Must / Can の対話設計
特に印象的だったのは、「組織は未完成であることを前提にする」というスタンスです。マネージャーがすべてを抱え込むのではなく、「今、何が足りていないのか」を上長と共有しながら、その時点での最適解を探していくあり方が、急成長組織の現実に、かなり正直なマネジメント観だと感じました。
読んでいて強く感じたこと
読んでいて何度も膝を打ちましたが、特に印象に残った点を挙げます。
(1)フェーズが違えば、マネジメントの「正解」も違う
多くのスタートアップがつまずく理由の一つは、成熟企業のマネジメント像を、そのまま当てはめてしまうことです。
一方で本書は、以下の点をかなり明確に言語化しています。
今どの「組織フェーズ」にいるのか
今は「何を捨て、何に集中すべき」か
「やるべきことを増やす」より「やらないことを決める」ことの難しさに向き合っている点が非常に実務的だと感じました。
(2)上長・経営とのフェーズ認識のすり合わせの重要性
急成長環境では、 経営は「もっと引き上げたい」と考え、 マネージャーは「これ以上は厳しい」と感じる場面が必ず生まれます。
このとき問題になるのは、能力不足というより、前提にしている組織フェーズが揃っていないことです。本書は、このズレを感情論ではなく、構造の問題として扱うための視点を与えてくれます。
(3)「Will・Must・Can」×「ジョハリの窓」の実用性
「Will・Must・Can」の対話自体は広く浸透しているので説明は割愛します。
「ジョハリの窓」とは、「自分が知っている自分」と「他人が知っている自分」を4つに分けて、自己理解やコミュニケーションを深めるための考え方です。
この「Will・Must・Can」と「ジョハリの窓」を組み合わせることで、
何が開示されているのか
何が盲点になっているのか
どこに成長余地があるのか
を整理して扱えるようにしています。
1on1や評価面談が、「感覚」や「相性」に寄りすぎないための補助線として、非常に使いやすいと感じました。
組織開発・HRBPの文脈でも役立つ
本書を読みながら強く感じたのは、マネージャー個人のための本に留まらない、という点です。
組織開発やHRBPの立場で見ると、
経営が見ている期待
現場マネージャーが置かれている現実
この間にあるズレを、「フェーズ」という共通言語で翻訳するための材料が詰まっています。
HRBPや人事がこの本を使うとすれば、
今の組織フェーズはどこか?
このフェーズで、マネージャーに何を期待し、何を期待しないのか?
足りないものは、個人の問題か、構造の問題か?
こうした問いを、経営・現場と一緒に整理する場をつくることができます。
制度や研修をいきなり設計する前に、前提を揃えるための一冊として、とても相性が良いと感じました。
まとめ:実務に「じわじわ効く」一冊
本書は、派手な成功事例を語る本ではありません。
フェーズが高速で変わる組織
経営と現場の認識がズレやすい環境
マネージャー育成が属人化している会社
こうした現場で、共通言語をつくり、対話の質を上げるための実務書です。
マネージャー本人はもちろん、組織開発やHRBPの立場で関わる人にとっても、長く使える一冊だと感じました。
