【合同練習note】見えないボタン、押していいの?
わたしの推しnote書きさんである
『くいたろう』さんが、合同練習をやられていたので、またまた勝手に参加してみます。
今回は
「毎朝見えないボタンを押す人」
というお題。
くいたろうさんの素晴らしい物語はコチラ
それでは、どうぞ
😎
「人は毎日、何気なくボタンを押して生きているのかもしれません。
エレベーターのボタン、
リモコンのボタン、
そして、誰にも見えない心のボタン──
でも、その中には、
押してはならないボタンも、
押し忘れてはいけないボタンもあるようです。
今朝、あなたが押したその“ひとつ”は、
果たして……どちらだったのでしょうか?」
見えないボタン
駅前の広場に、
毎朝決まって現れる男がいる。
年齢は五十代半ば。
グレーのスーツに、
いつも同じ黒いトレンチコート。
足元は少し擦り切れた革靴。
彼は何も持たず、
何も言わず、
広場の中央に立ち、
しばらく空を見上げてから、ゆっくりと右手を伸ばす。
そして、空中の何もない一点を、
指先で「カチッ」と押すような仕草をする。
それを見ていた学生が
「またあの人だよ、ほら“ボタンおじさん”」
と囁く。
OLたちは
「何のボタンなんだろうね」と笑う。
子どもは怖がって泣き出すこともある。
でも、彼は何も気にしない。
ただ、毎朝、
決まった時間に現れて、
見えないボタンを一度だけ押して、
また去っていく。
◆
ある朝、
広場のベンチに座っていた私は、思いきって声をかけてみた。
「そのボタン、何をしてるんですか?」
男は少し驚いた顔をしたが、すぐに小さく笑った。
「リセットボタンさ」
「何の?」
「この世界の“終わり”を、一日延ばすボタン。押し忘れると、終わっちゃうからね」
冗談とも本気ともつかない顔で、
彼はまた空中に手を伸ばし、「カチッ」と押した。
その瞬間、広場の時計台が、
いつもより一秒だけ遅れて動き出した気がした。
◆
翌朝、私は広場にいた。
いつもの時間。
だが、男は現れなかった。
その一秒後、時計が止まる。
「え……」
その日の空は、
ほんのわずかに赤く濁っていた。
😎
「彼が押していたのは、
世界の終わりを一日だけ遠ざける、
小さな祈りだったのでしょう。
明日という一日がまた訪れるのは、
誰かが、それを願ったからです。
次にそのボタンが押すのは、
…あなたの番かもしれません。
それでは、また……
奇妙な世界で、お会いしましょう。」
(──ピアノの旋律とともに、闇に消える)
なんのはなしですか?
これは、
どことなく奇妙な物語のはなし
──とっぴんぱらりのぷぅ
