止まって見つかる景色もある
スーパーカブ(5)
高校卒業が目前となった1月、私は無事に大学進学後の住居も決まって、残りわずかな山梨での日々をカブと過ごしていました。将来への期待とささやかな不安を胸に抱えつつ、いつものようにスーパーカブで走っていたある日、突然Uターンしてきたタクシーと接触し、思いもよらぬもらい事故に遭ってしまいました。結果、大腿骨を骨折し、5週間という長い入院生活を余儀なくされることになったのです。
初めは絶望的な気分でしたが、病院で同室になった3人の女性患者たちの存在が、私の日常に新たな彩りをもたらしました。それぞれ年齢も立場も違う彼女たちは、個性豊かで、限られた空間の中で少しずつ打ち解け、深い話や人生観に触れることで、思いがけず自分の世界が広がっていくのを感じました。
窓越しに見える冬の山梨の風景や、カブで自由に駆けていた自分を思い出しながら、私はこれからの未来や自分自身をじっくり見つめ直すことになりました。カブが出会わせてくれた人との縁は、たとえバイクを降りても途切れることなく、新しい自分への一歩を踏み出す勇気を与えてくれる――そんなことを実感した、かけがえのない5週間でした。
スーパーカブ(5)
トネ・コーケン (著)
博 (著)
高校卒業も間近に迫った1月。大学生活の住居も無事確保した小熊は、カブでの走行中、突然もらい事故で入院することに。入院期間は5週間。病院の同室になった3人の女性たちは、いずれも個性的で……
トネ・コーケン (著)
博 (著)
Amazonより
✻登場人物✻
小熊(こぐま)主人公。山梨県北杜市の高校3年生。両親も友達も趣味もなく、スーパーカブを手に入れて以来、人生が大きく変わる。第5巻では突然の事故で入院し、出会う人々との交流を通じて成長していく。
礼子(れいこ)小熊の同級生で親友。スタイル抜群で美形、成績優秀、スポーツ万能。バイク中毒であり、様々な面で小熊を支える存在。
恵庭椎(えにわ しい)小熊や礼子の友人。明るく社交的で、家はカフェ経営。リトルカブを所有している。第5巻でも小熊への見舞いやサポートなどで登場。
病院の同室の3人の女性 小熊が事故入院で同室になった女性たち。年齢も背景も異なり、それぞれ個性的な人生観や考え方を持つ。入院生活の中で彼女たちと心を通わせることが、小熊の新たな気付きをもたらす。
バイク便会社の社長・浮谷 第4巻から登場の敏腕経営者だが子どもっぽい性格。小熊のバイト先の社長として登場し、直接的なバイクシーンは減るが、物語に関与する。
その他 椎の両親、学校の先生たち(担任・家庭科教師など)。直接の出番は多くないが、小熊のこれまでの日常や人間関係として背景に登場する
★読むポイント★
非日常の静謐な時間
これまでひたすら走り続けてきた私が、カブを離れた病室という“止まった時間”の中で自分自身と向き合うことになります。普段の自由な日常が当たり前ではなかったと、改めて気付かされた瞬間に胸がじんわりと温かくなりました。個性的な同室の女性たちとの出会い
年齢も背景も異なる3人の女性たちと同じ部屋になり、「人は誰でも、それぞれの悩みや人生を抱えている」と実感します。入院という状況だからこそ深く話せた人生観や気持ちの交流が、私の世界をまたひとつ広げてくれました。バイクと縁、人との縁
物理的にカブから離れても、カブを通じて知り合った人や築かれてきた関係は途切れることがありませんでした。この巻では、バイクが“自分を運ぶ乗り物”であるだけでなく、“人と人をつなげるきっかけ”だと気づかされます。
★心に残った一言★
「止まって見つかる景色もある。」
もし事故を経験しなかったら、気づけなかったであろう出会いや発見がたくさんありました。動けないからこそ得られる静かな時間と、入院生活だからこそ生まれる人間味あふれる会話が、今となってはかけがえのない宝物です。
まとめ
バイクで走る日々だけが青春ではないのだと強く感じました。思いがけない事故と入院生活は、一見ネガティブな出来事に思えるけれど、新しい人との出会いや人生を見つめ直す時間を与えてくれます。「止まって見つかる景色もある」という小熊の気付きは、忙しい毎日を過ごす私たちにも優しく響く言葉です。
日常の大切さや人との縁を改めて噛みしめたい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
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自己紹介
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