【新聞の感想・8月6日】概算金が9,300円下がりました。待っていても、良くならない在庫がある。
本日の熊本日日新聞に、お米の記事が載っていました。
JA熊本経済連が、2026年産の県産早期米のJA概算金を、コシヒカリ1等60キロあたり2万700円に決めたという内容です。
前年産より、9,300円下回ります。
昨年は3万円で、過去最高でした。
そこから、およそ3割の下落です。
この記事を読んで、複雑な気持ちになりました。
私たちが運営する物産館きよらカァサには、昨年の高い相場のときのお米が、まだたくさん残っているからです。
まず、「概算金」とは何か?
JA概算金とは、経済連が、出荷契約を結んだJAからお米を集める際の価格です。
そしてこの金額は、JAが農家さんに代金の一部を前払いする「仮渡し金」を決めるときの目安になります。
つまり、農家さんの手取りに直結する数字です。
さらに、お米の店頭価格は、この概算金をもとに、流通段階の経費や手数料が上乗せされて決まっていきます。
なので、概算金が3割下がるということは、いずれ店頭価格も下がっていくということです。
記事によれば、大幅に増産された25年産米の在庫が積み上がり、市場価格が下がっていることが背景にあるそうです。
「下がった」のではなく、「戻った」のかもしれない
今回の2万700円は、業界団体が示した4月時点の生産コスト、60キロあたり2万535円を上回っている、との記載もありました。
農家さんが経営を続けられる水準は、かろうじて確保されているということです。
そう考えると、9,300円下がったという事実より、昨年の3万円が高かったという見方もあるのかもしれません。
令和の米騒動と呼ばれた、あの高騰。
以前、エルニーニョについて書いたとき、前回のスーパーエルニーニョによる高温障害がコメの品質低下を招き、それが流通量の減少と価格高騰の一因になったと書きました。
天候と、在庫と、市場の思惑。
いくつもの要因が重なって、価格は跳ね上がりました。
そして今年、増産によって在庫が積み上がり、価格は落ちてきています。
上がりすぎたものは、下がる。
当たり前のことですが、その振れ幅の中に、生産者も小売も置かれています。
そして、うちには去年のお米があります
ここからが、私たちの話です。
高かった時期に入ってきたお米が、いま在庫として残っています。
これは、なかなかに難しい状況です。
理由は二つあります。
一つは、価格の問題です。
新米の相場が下がれば、当然、お客様は「安くなった新米」を選びます。
高い値札のついたお米は、動きにくくなります。
もう一つは、時間の問題です。
お米は、日が経つほど価値が下がります。
新米が出れば、それまでのお米は古米になります。
品質が落ちるわけではなくても、市場での評価は変わります。
つまり、待っていても状況は良くならない在庫なのです。
以前、宿泊業について「売り逃した客室は二度と売れない」と書きました。
在庫として繰り越せないのが、宿の厳しさです。
一方、お米は繰り越せます。
でも、繰り越すほどに価値が目減りしていく。
形の残る在庫にも、別の厳しさがあるのだと痛感しています。
頭では分かっているのだが
こういうとき、経営の教科書が教えることは明快です。
過去にいくら払ったかは、判断材料にしてはいけない。
いわゆるサンクコスト、埋没費用の考え方です。
高く仕入れた事実は、もう取り返せません。
だとすれば、いまの市場価格で、売れる形にして早く動かすほうが合理的です。
頭では、そう分かっています。
でも、実際には簡単ではありません。
物産館に並ぶお米には、作った農家さんの顔があります。
その方が、汗をかいて、天候に一喜一憂しながら育てたお米です。
ウチが値札を下げるという行為は、単なる数字の操作ではなく、生産者の方の米をの金額を下げてしまう行為でもあります。
そして、物産館は単なる小売店ではないのです。
地域の農家さんが作ったものを、地域の中で換金できる場所。
その役割を担っているからこそ、簡単に割り切れない部分があります。
難しいです。
それでも、できることを考える
とはいえ、悩んでいるだけでは在庫は減りません。
いくつか、考えていることがあります。
一つは、食べ方の提案です。
少し時間が経ったお米は、炊き方を工夫すればおいしくいただけます。チャーハンや、丼ものには、むしろ向いていることもあります。
「古い」ではなく「こういう食べ方に合う」という提案に変えられないか。
もう一つは、加工です。
そのまま売るのではなく、別の形にできないか。
そして、観光との組み合わせです。
私たちの町には、年間140万人のお客様がいらっしゃいます。
お土産として、あるいは旅先での食事として、お米を届ける場面はまだあるはずです。
先日、インバウンドの記事で「一人あたり10円で4億円」という話を書きました。
一人ひとりに、もう一つ手に取っていただく工夫。
その積み重ねしかないのだと思います。
価格が乱高下して、得をする人はいない
今回のような大きな価格変動で、本当に得をする人はいるのでしょうか。
農家さんは、来年の作付けを決められません。
高いと思って作れば、翌年に下がる。
小売は、在庫リスクに振り回されます。
消費者は、去年は高くて買えず、今年は安くなるのを待つ。
誰にとっても、良い状態ではありません。
食べ物の価格は、安ければいいというものではないと、あらためて思います。
作る人が続けられて、売る人が回せて、買う人が納得できる。
その水準に落ち着いていることが、いちばんの価値なのだと思います。
記事の中で、担当者の方が「市場環境は厳しい状態が続くが、取引先にしっかり説明し、販売を進めたい」と語られていました。
説明して、売る。
結局のところ、私たちにできることも同じです。
うちのお米が、どこの誰が作った、どういうお米なのか。
それを伝えて、手に取っていただく。
難しい状況ですが、できることから一つずつ進めていくしかないと思わされました。
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