DXに失敗する会社は、最初にツールを選んでいる
「このシステムを入れれば、仕事が楽になるはずだった」
ところが導入から数か月後、社員は新しいシステムとExcelの両方に入力し、以前より忙しくなっている。会議では「現場が使ってくれない」という話が出て、現場からは「経営者が勝手に決めた」という不満が聞こえてくる。
DXに取り組んだはずなのに、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
DXに取り組む会社は増えたけれど
IPAの「DX動向2025」によると、日本企業の約8割がDXに取り組んでいます。しかし、コスト削減や効率化では成果が見られる一方、売上や利益の増加といった企業成長への成果は相対的に弱いという結果が示されています。
ここから見えてくるのは、「デジタル化は進んだが、会社の変革までは進んでいない」という現実です。
紙をPDFにする。会議をオンラインにする。生成AIで文章を作る。
これらは便利な取り組みですが、それだけで会社の仕事の仕組みが変わるとは限りません。
多くの会社が見落としている本質
DXに失敗する会社は、最初にツールを選びます。
「どのシステムが人気なのか」
「AIで何ができるのか」
「補助金が使えるサービスはどれか」
しかし、本来最初に話し合うべきなのは、別のことです。
なぜ仕事が遅いのか。
なぜミスが起きるのか。
なぜ社長に判断が集中しているのか。
なぜ顧客の声が商品改善につながらないのか。
この問題を整理しないままシステムを入れると、無駄な仕事までデジタル化されます。複雑な承認手続きも、意味の薄い報告書も、そのまま画面の中へ移るだけです。
現場が抵抗しているのではない
DXが進まないとき、「社員の意識が低い」「現場が変化を嫌がっている」と説明されることがあります。
けれど、本当にそうでしょうか。
目的を聞かされず、操作方法だけを覚えるように言われ、仕事が減るどころか入力項目が増えたら、誰でも疑問を持ちます。
現場の抵抗に見えるものは、経営側の説明不足や業務設計の不足に対する、自然な反応かもしれません。
経済産業省も、DX推進には経営層の意識改革、事業部門との連携、システムの可視化、社内人材の育成が重要だとしています。
私がDX支援で最初に聞くこと
私は企業のDXやAI導入を支援するとき、最初に「どのツールを導入しますか」とは聞きません。
「この会社を、どのような状態にしたいですか」と聞きます。
社員が顧客対応に集中できる会社なのか。
数字を見ながら素早く判断できる会社なのか。
社長が現場作業から離れ、未来を考えられる会社なのか。
目指す姿が決まれば、なくす仕事、変える流れ、残す判断が見えてきます。その後で初めて、必要な技術を選べます。
DXは会社の価値観を映す
DXを進めると、これまで曖昧だったものが表面に出てきます。
誰が決めるのか。
何を成果とするのか。
社員を信頼して権限を渡せるのか。
過去のやり方を手放せるのか。
だからDXは、単なる技術導入ではありません。会社が自分たちの働き方と向き合う機会です。
あなたの会社では、新しいツールを導入する前に、「何を変えたいのか」が社員と共有されているでしょうか。
DXに失敗しないための第一歩は、最新のシステムを探すことではありません。
今の仕事を当たり前だと思わず、なぜこの仕事をしているのかを、経営者と社員が一緒に問い直すことなのだと思います。
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